※日経エンタテインメント! 2022年3月号の記事を再構成
25歳以下のZ世代は、どんなエンタテインメント作品に影響を受けたのか。この特集では活躍中の人たちに話を聞いていく。今回、登場するのは、22年度後期のNHK朝ドラ『舞いあがれ!』でヒロインを演じる福原遥。上昇気流に乗るなか、「演じるという仕事のときめきを忘れないために」、大好きな作品は何度も見るという。その思い入れのある大切な作品への思いを語った。
――2022年度後期のNHK朝ドラ『舞いあがれ!』のほかにも、『今どきの若いモンは』(WOWOW)、『正直不動産』(NHK)といったドラマへの出演が決定しており、まさに登り調子にある福原遥。7歳の時に子役事務所に所属、09年スタートの『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!』の主人公“まいんちゃん”として、大人気となった。そんな彼女を女優の道へと導いたのも、1本のドラマだったという。
子役事務所に入って、しばらくは芸能界のこともよく分からないまま、いろいろなお仕事をさせてもらっていて。でも中学1年生の時に、『おひさま』(11年)を見て、「女優になりたい!」と思ったんです。
小さい頃からドラマを見るのは大好きで、井上真央さんのことも大好きだったんですけど、『おひさま』を見たのは、ちょうど学校のことやお仕事のことでいろいろと悩んでいた時期で…。井上さん演じる陽子にめちゃめちゃパワーをもらって、私も頑張ろうって思えました。どんなにつらいときも笑顔でいる、その力強さに心を動かされて。お芝居ってすごいな、作品を作るってすごいなって感じました。
そもそも井上さんを好きになったきっかけは『花より男子』(05年、07年)。人生で1番ハマったドラマかもしれません。特に好きなのは、第9話の飛行場でのつくしと道明寺のシーン。メイキングも見たんですけど、夕日がちょうど重なるタイミングを狙って、撮影したらしくて! いろんな奇跡が重なってあの芸術的な場面が生まれたんだと思うと感慨深いですし、よりキュンとしますよね。…でも、私は花沢類派です(笑)。
私は好きな作品を何度も見るタイプなんです。『花より男子』も、元気がないときや、作品と向き合っているときに、気合いを入れるために見ます。お仕事をするなかで、キラキラした思いを忘れちゃいそうになったり、何のためにやっているのかっていうのを見失いそうになるときがあるんですね。そういうときに「女優になりたい、私もこういう作品を作りたい」って思うきっかけになった作品を見ると、当時の新鮮な気持ちを思い出せるんです。
初めての主演作は宝物
自分の出演作で繰り返し見るのは『グッドモーニング・コール』(16年)。女優になりたいっていう思いを持ち始めてから、初めての主演作品なんです。まだお芝居のこともよく分からず、カメラ位置や立ち位置も全然分からないまま、たくさんの方にサポートしていただいて演じた作品。「ドラマを作るってこんなに楽しいんだ」「お芝居で役に入るってこんなに楽しいんだ」ってことを教えてもらいました。
ドラマで衝撃を受けた作品は『14才の母』(06年)。私は当時小学2年生で、子どもが母親になるなんて考えてもみなかったことだし、あり得ないことだと思ってましたから。でも、志田未来さんに、本当に「14才で子どもを産む」っていうリアルさがあって。産むということの責任感に、子どもながらハッとしました。
最近も見たんですけど、生瀬勝久さん演じるお父さんに報告するシーンがもう…いつ見ても泣いちゃって。生瀬さんと『アンラッキーガール!』でご一緒させていただいたときにその話をしたら、当時のお芝居のことを教えてくださって。自分が小さい頃にドラマで見ていた方と今、一緒にお仕事してるんだっていう喜びを、改めて感じさせていただけた出会いでした。
ずっと見ていた方という意味では、『教場II』で木村拓哉さんとお仕事できたことも大きかったです。『プライド』(04年)が大好きで、ラブストーリーというより、青春ストーリーとしてかっこいい。1つのことをがむしゃらに頑張る、そういう作品がすごく好きなんです。けっこう体育会系というか「目標に向かってみんなで頑張ろう!」みたいな熱い集団がすごく好きで(笑)。『プライド』で木村さんが演じたハルは、限界を決めない、自分の最大限以上の力を出そうとする魅力的なキャラクター。お芝居ではなく「生きてる人」っていうリアルな感じで、木村さん自身の生き方も本当にそのままなんだろうなって。
あんなにも素晴らしい方なのに、いつも全力で向き合っていて、愛情がある。だから私は、『教場II』の現場が大好きでした。みんな悩みながら、もがきながら頑張っていたし、私も、みんながいるから頑張れた。一緒に高め合う「チーム」でしたね。
『梨泰院クラス』(20年)もそうしたチーム感が好きな作品です。私、事務所のマネジャーさんやスタッフさんのことが本当に大好きなんです。皆さんがいるからお仕事をもっと頑張ろうと思える。チームで一緒に歩んで、もっと素敵な景色を見に行きたい。『梨泰院クラス』を見ていると、そういう思いが重なります。
ステイホーム期間中に出合って好きになったのが『ローマの休日』(1954年)。これからの人生が楽しくなるような、心がときめく作品でした。オードリー・ヘップバーンさんが大好きになって、もちろん他の作品も見ましたし、分厚い写真集を買ったり、部屋にポスターを飾ったりもしてます(笑)。
ディズニー作品もほとんど見ていますが、『アナと雪の女王』(14年)が1番好き。私はアナが好きなんですけど、好奇心旺盛で、いつも楽しんでいて、ウキウキする気持ちが伝わってくる。歌も全部、歌えるくらい何回も見ました。ちょうど『ピチレモン』という雑誌に出ていた頃で、モデル仲間とみんなで歌ったり、企画で仮装させてもらったりと、私にとっては青春ですね。歌もダンスも大好きなので、いつかミュージカルにも挑戦したい。目標の1つです。
音楽はもう、ずっと安室奈美恵さんが大好きです。母の影響で小さい頃から曲を聴いていたんですけど、小学6年生のときに初めてライブに行って、本当にかっこよくて。その足でファンクラブに入りました。ラストライブは1人で見に行って、隣の席の知らない方と一緒に大泣きしました(笑)。
好きな曲はたくさんありますけど、『Love Story』(11年)はミュージックビデオの雰囲気もすごく好き。切ないけど、かわいらしさもある素敵な曲ですよね。『Hero』(16年)も大好きで、紅白歌合戦でのパフォーマンスはすごく感動しました。歌やダンスが素晴らしいのはもちろん、かっこいいとかわいいをどっちも持っていて、本当に魅力的な方ですよね。
次回作を新たな代表作に
――22年後期は、女優の道を志すきっかけとなった連続テレビ小説にてヒロインを演じる。今も“まいんちゃん”と呼ばれることをうれしそうに話しながら、女優として今後は、「新たな代表作を作りあげたい」という目標もある。
「まいん」のように、今も覚えていただいてる作品があるってすごくうれしいことなんです。だからこそ、また新たに愛していただける代表作を作り上げたい。それが『舞いあがれ!』だったらいいなあって思っています。朝ドラのオーディションは4回目だったんですけど、ありのままで挑みました。私自身、朝ドラにすごくパワーをもらったので、その感謝と朝ドラ愛を持って、オーディションに行きましたね。
4月9日から放送される『今どきの若いモンは』(WOWOW)はタイトル通り、今どきの若い子にフォーカスを当てた作品なんですけど、そもそも今の働き方と昔の働き方は違う、というところが軸にあるんです。
作品に出てくる若い子は、頑張り方が分からなかったり、自分の意見に自信がないから踏み出せなかったり。そうして結局、1人で勝手に悩んで、落ち込んで…そういう心情をすごくリアルに表現した作品です。
そこに反町隆史さん演じる上司がすごく優しく、グッとくる言葉をかけてくれるんです。見たあとには少し、生きやすくなるんじゃないかなと思います。特に同世代の方にはぜひ、見ていただきたいです。
(写真/上野裕二、スタイリスト/伊里瑞稀、ヘアメイク/宮本陽子)