※日経エンタテインメント! 2022年3月号の記事を再構成

25歳以下のZ世代は、どんなエンタテインメント作品に影響を受けたのか。この特集では活躍中の人たちに話を聞いていく。今回、登場するのは、『最愛』など話題作に起用されて、俳優歴3年ながら注目度が日に日に増している高橋文哉。これまで親しんできたエンタテインメントについて、純粋に楽しんでいたテレビ番組から、俳優として気付きがあった作品までじっくりと語った。

高橋文哉(たかはし・ふみや)
2001年3月12日生まれ、埼玉県出身。19年に『仮面ライダーゼロワン』に主演。20年10月期の『先生を消す方程式。』以降、21年の『夢中さ、きみに。』『着飾る恋には理由があって』『うきわ -友達以上、不倫未満-』『最愛』、現在放送中の『ドクターホワイト』と、連ドラ6作品に連続で出演中

2021年10月期の連ドラ『最愛』で、吉高由里子ふんする主人公・真田梨央の弟・優役を印象的に演じた高橋文哉。19年の『仮面ライダーゼロワン』主演を機に俳優活動を本格化し、『先生を消す方程式。』(20年)では、優等生のふりをしながら歪んだ感情を持つ裏のリーダーを、『夢中さ、きみに。』(21年)では、主演の大西流星と並んでメインキャストを務めるなど、芸歴わずか2年程で頭角を現した若手俳優のホープだ。

 これまで親しんできたエンタテインメントについて聞くと、数年前まで普通の高校生だった等身大の言葉で語り始めた。

 身近なところでは、まずアニメ『ハイキュー!!』(14年)です。バレーボールを小学5年生までと、中学の3年間部活でやっていて、中2くらいでアニメが始まったんです。「ちょっとあの技やってみようぜ」とか、目をつぶってスパイクを打ってみたり。顧問の先生がいないときにひたすら“変人速攻”をマネしていて、すごく感化されてました(笑)。

 僕は調理師を目指して高校に入ったんですが、そのときに出合ったのがアニメの『食戟(しょくげき)のソーマ』(15年)です。主人公の創真が料理学校に入学するところから始まっているから、一緒のスタートにいる気分になれたんですね。『ソーマ』を見ながら、自分も成績上位に入れるように努力したり、それで結果が出て達成感を味わえたり。料理している側からすると、「ここでこの調味料を使うんだ」とか、試してみたいことも満載で、単純に面白いっていうのも大きかったです。

 『ハイキュー!!』も『ソーマ』も、原作マンガは読んでいなくて。でも、9個上と7個上の兄貴はマンガ好きで、家には何百冊もあったんです。それで、僕が唯一読み切ったのが『クローズ』(1990年~98年)。小栗旬さんが主演した映画『クローズZERO』(07年)、『クローズZERO II』(09年)も見ました。僕、よく「ヤンキー役をやりたい」って言ってるんですけど、そのきっかけになった作品です。映画を見た後、「オレもいけるんじゃね?」みたいにケンカが強くなったような気になって、家でぬいぐるみにパンチしたり(笑)。いつか自分が携わった作品を見て、そんなふうに良い影響を受ける子がいたらうれしいな、とも思います。

 僕は「憧れの俳優は?」と聞かれたときに、いつも「窪田正孝さん」と答えているんです。ファンというか、窪田さんのお顔が好きで写真集を持ってるくらいで。印象に残っている作品の1つがドラマ『デスノート』(15年)です。主人公の夜神月(やがみライト)って、もともとは普通の人。なのに、あそこまで洗脳されていく。その様がキレイに描かれていて、見ていて無理矢理感がない。きっとそれはお芝居でしか伝えられないことなんだろうなと思って、ハマって見てました。

 もう1つ、窪田さんのすごさを実感した大好きな作品が、『僕たちがやりました』(17年)です。窪田さんがその役として現実にいるようにしか見えなかった。お芝居の繊細さとか、感情の持っていき方のストロークの強弱が「うわ、すごい」って思って。当時は高校生で、部活もバイトもやっていたんですけど、リアルタイムで追いかけてました。自分のなかで、無意識のうちに俳優を目指すきっかけになったのかなとも思っています。

 僕は基本、バラエティで育ってきたんですよ。子どものときは、兄弟3人で『志村けんのバカ殿様』(1986年~2020年)を見ていて、母によく「『バカ殿』始まるから早くお風呂入ってきなさい!」って言われてました(笑)。『爆笑レッドカーペット』(08年~10年)みたいなネタ番組もよく見てましたね。あとは、『しゃべくり007』(08年~)が大好き。僕がこの仕事を始めてから、真ん中のお兄ちゃんに「『しゃべくり』に出られたら、オマエが芸能人だって認めてやるよ」って言われたんですよ。いつかあのセットと空気感のなかで、7人のみなさんに揉まれたい。それで、2番目の兄をテレビの前にくぎ付けにするのが1つの目標です(笑)。

 未知の世界で刺激を受けたのは、舞台の『刀剣乱舞』(15年~)です。すごく仲のいい友達に小西詠斗という俳優がいて、いつも「こういう作品に出たい」とか、目標を共有してるんです。それであるとき「『刀剣乱舞』が決まったよ!」って報告を受けて。2・5次元の舞台というものを初めて見たんですが、迫力と新しい景色に圧倒されました。まず殺陣の完成度の高さ。僕は剣が振れなかった経験があって、あれをあんなにキレイに振れるなんて。そこに芝居が入ってきて、2時間くらい走って戦って、どれだけのパフォーマンス見せてくれるんだって。カッコよかったですね。詠斗がどのくらい稽古してるかも知っていたし、負けてられないなって奮い立たせられました。

『ヤクザと家族』に衝撃

 最近では、約半年前に見に行った映画『ヤクザと家族 The Family』(21年)が衝撃的でした。主演の綾野剛さんが、金髪から始まって最後は白髪で終わるくらい、年代がどんどん変わるなか、説得力を持ってエッジの効いたお芝居をされている。見た日から2日間ぐらいずーっと頭から離れなくて、自分もいつかこういう作品に参加したいと思いました。

 『ヤクザと家族』で綾野さんのすごさを知って、3日後くらいには『ホムンクルス』(21年)を見に行ったんです。清水崇監督とは、その少し後に『牛首村』でご一緒して、「劇場に見に行きました」と報告しました。ファーストカットが印象的で、映画館で見て良かったなと思って。監督とそういうお話ができたのもうれしかったです。

2月18日には、その清水崇監督作品の『牛首村』が公開。高橋は、連ドラ『着飾る恋には理由があって』と『最愛』で、『MIU404』(20年)などの新井順子プロデューサー×塚原あゆ子監督、『うきわ』では『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(20年)の本間かなみプロデュサー×風間太樹監督と仕事をしており、ヒットメーカーの作品に次々と起用されている。順調に経験を積むなか、現在は連ドラ『ドクターホワイト』(カンテレ・フジ系)に出演中だ。

 『最愛』は今後も、要所で思い出すことになりそうです。吉高由里子さん、松下洸平さん、井浦新さんと共演させていただいて、失礼のないお芝居をしたかったですし、そのぶん、台本を読んだり考える時間も長くて、それまでと役との向き合い方が違ったんですね。終わったときにいろんなものがフラッシュバックして、「まだここにいたい」って思いがあふれてきて。特別な作品になりました。

 『ドクターホワイト』の現場は和やかです。先日は高橋努さんが、「“CDT”メンバーもチームになってきたね」って話し掛けてくれました。僕は研修医の役なんですけど、元気、ポジティブ、素直を心掛けて、みんなに愛されるキャラクターを目指して演じています。

 『牛首村』はホラー作品ですが、清水監督がこちらに寄り添ってくれて、相談しながらスタッフさんと一丸となって作り上げていく感じが本当に楽しかったです。主演のKōki,ちゃんや、萩原利久君からも学ばせていただきました。

 自分の作品で唯一何回も見ているのが、『仮面ライダーゼロワン』の第1話です。納得がいかないところはたくさんありましたけど、何もないところからご指導を受けて、成長をさせてもらってるので。実家でも2回見せられて、母と兄貴にダメ出しされたんですよ。だからこそ、今『うきわ』とか『最愛』で「うまくなったな」って褒められるとめちゃくちゃうれしい(笑)。

 今は仕事がとにかく楽しいです。台本を読んで、お芝居を考えて、現場でお芝居を作り上げて、みなさんに届いて…っていう過程が好き。だから、5年先も10年先も、作品をやっていたいです。

(写真/橋本勝美、スタイリスト/Shinya Tokita、ヘアメイク/大木利保(CONTINUE))

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