2022年3月4日発売の「日経トレンディ2022年4月号」では、「ずるい!エクセル【学び直し】」を特集。勢いが止まらないワークマンの快進撃を支えるのが、エクセルを活用した「データ経営」だ。全社員がエクセル分析できるようになった結果、提案に対する加盟店の納得度が増し、実際、売れ行きも伸びている。そんなワークマン式エクセルの使い方を初公開する。

快進撃を続けるワークマン専務の土屋哲雄氏
快進撃を続けるワークマン専務の土屋哲雄氏
ワークマン専務
土屋哲雄氏

1952年生まれ、東京大学経済学部卒。30年以上の商社勤務を経て、2012年ワークマンに入社。データ経営で社内を改革し、新業態店をヒットさせている

 ワークマンの勢いが止まらない。2018年に一般向けカジュアルウエアを扱った「ワークマンプラス」、女性に訴求した20年誕生の「#ワークマン女子」、21年末にオープンし、若手職人の取り込みを狙った「ワークマンプロ」と新業態が次々にヒット。これらを含むチェーン全店の売り上げは、直近9年で2.4倍になった。22年2月にはキャンプギアに本格進出。22年3月期は過去最高の売り上げを見込む。

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 快進撃を支えるのが、エクセルを活用したワークマンの「データ経営」だ。加盟店の品ぞろえをこまめに最適化する、有望な事業で新たなブルーオーシャンに打って出る。こうした意思決定にはデータ分析が不可欠で、そこに同社はエクセルを使っている。

 データ経営にエクセルを取り入れた理由を、専務の土屋哲雄氏はこう説明する。「目指しているのは、凡人が集まって100年の競争優位を築くこと。そのためには普通の社員が現場を改善し、その知見を標準化するサイクルが重要。エクセルは格好のツールだった」

加盟店が納得する提案を

 土屋氏がワークマンに入社した12年に、同社ではデータ活用のための研修が始まった。理系・文系、部署に関係なく社員全員が受ける。社歴2年目で商品分析システムの扱い方を学び、3年目でエクセルの主要分析機能を習得。4年目は商品分析システムでデータ加工の演習などを身に付けられるカリキュラムになっている。手を動かしながらの実践式研修で、教える講師は社員が務める。

 全社員がエクセル分析できるようになった結果、何が起きたか。まず挙げられるのが、加盟店を回って品ぞろえや陳列についてアドバイスする本部スーパーバイザーの提案力向上だ。同社の全国935店の約96パーセントに当たる894店が加盟店で(21年12月末時点)、本部から仕入れる商品はすべて買い取りだ。在庫リスクは加盟店が負うため、本部スーパーバイザーには加盟店が納得できる提案が求められる。エクセル分析によって明確な数字を臨機応変に提示できれば、加盟店の納得度は高まるし、売れ行きも伸びる。

 例えば、売れ行きが鈍い商品について他商品と組み合わせたコーディネート展示での販売を提案。販売数の変化や併売率などの結果から分かったノウハウを他の商品の売り方にも応用したり、担当する他店に展開したりして、売り上げ増につなげる。「売り上げや在庫など様々なデータはどの会社でも使っているが、当社はそれらの活用を非常に大事にしている」(土屋氏)。エクセル経営を推し進めるに当たっては、ワークマンがデータを活用しやすい土壌だったことが功を奏した。ワークマンは値引きをしない定価販売で、どの店舗も約100坪と標準化されたFCチェーンだ。そのため、得られるデータはノイズ(例外)が少なく、検証した結果を全店に展開しやすいのだ。

 エクセルは経営のあり方も変えた。部署別に行われる分析発表会には、経営幹部も全員参加。「現場がどんな問題意識を持っているかを横断的に把握でき、自身が担当する部署を運営する際の参考になる」(土屋氏)

 ワークマンは品ぞろえに対する売り上げという結果をエクセルで分析・検証して改善につなげてきた。もちろん、データを分析すれば、ニーズが高まっている商品が分かる。ワークマンプラスや#ワークマン女子など、新規事業への進出を検討する際も、このエクセル経営は生きた。こうした分析を多くの企業は外部に委託するが、「ワークマンはすべて自前で完結させる。社員の能力の限界=会社の成長の限界で構わない」と土屋氏。結果として、外注すれば年間数億円はかかるコストを削減できているという。

 そしてエクセル経営は企業文化も変えた。「以前はカリスマ経営者によるトップダウンの会社だったが、データを基にして対等に議論する文化が生まれた」と土屋氏は手応えを語る。

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