2022年3月4日発売の「日経トレンディ2022年4月号」では、「ずるい!エクセル【学び直し】」を特集。エクセルの解説動画で人気を博すのが、PCスキル解説YouTuberの金子晃之氏。徹底的な分かりやすさにこだわり、再生回数が約600万回の動画もある。エクセルを効率よく学ぶコツや神テク4選を金子氏に聞いた。

※日経トレンディ2022年4月号より。詳しくは本誌参照

PCスキル解説YouTuber 金子晃之氏
専門学校卒業後、プログラマーを経てパソコン教室を開業。YouTubeに上げていた復習動画が人気となり、2019年から本格的に活動。チャンネル登録者数は108万人

前回(第1回)はこちら

——金子さんがYouTubeチャンネルで公開しているエクセルの解説動画は視聴者に人気で、再生回数が約600万回のものもあるほどです。人気の理由は?

金子 私が作る動画は1つが1時間を超えるものもありますが、どれも70〜80代の高齢者でも理解できる内容になっているからだと思います。順を追って、人によっては過剰に思うほど丁寧に解説することが重要。表現にも気を使っていて、分かりにくいと感じたら撮り直して言い換えます。また「罫線」と「テーブル」の違いなど、見た目では理解しにくい点や機能をはしょらずに説明することを心掛けています。

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 こうした前提知識や基本機能を学ぶだけで、作業スピードは一気に上がります。動画で取り上げると再生回数は増えるので、やはり効果はあるのだと思います。例えば、印刷ミスを減らす方法やマウスを使わずに操作するショートカットキーは、日常業務ですぐに役立つ。難しいと世間で思われている関数も、仕組みを理解して基礎的なものを押さえるだけで、それらを組み合わせてできる範囲が相当広がります。

——しかし、エクセルを独学で身に付ける方法が分からないビジネスパーソンは多いのが実情です。

金子 エクセルの使い方について解説する動画と、書籍などのテキストを使い分けることを勧めています。分かりやすい動画で一通りを学び、理解できなかった部分をテキストで確認すると効率的。集中してある程度の時間をかけて順序よく進めれば、数日間で一気にレベルが上がります。また、手を動かしながら学ぶことも重要です。お勧めは、実際に家計簿や資産管理表など生活で使うものを作ってみること。身近に感じられるので、やる気が出やすい(笑)。

——初級レベルを卒業したといえるのは、何ができるようになってからでしょう?

金子 個人的に覚えてほしいのは、「テーブル」「ピボットテーブル」、そして「関数」です。これらを押さえると中級レベルのスキルが身に付いたと言ってよく、少ない労力で多くのリターンが得られます。

 テーブルは表を作るときに計算範囲の指定漏れなどを防ぎ、罫線などの体裁を整える手間が減る。一方、ピボットテーブルは関数を使わずに複雑な計算ができる。入力したデータを「店舗や月ごとに分類して合計する」といった計算を、クリックで完結できます。ピボットテーブルでできないものは、簡単な関数を組み立てて補うといいでしょう。

——さらに上を目指そうとすると、どんな機能を学ぶことになりますか。

金子 世間では「VBA」(Visual Basic for Applicationsの略。Microsoft Officeのソフトを動かすプログラミング言語)を推す声をよく聞きますが、私のお薦めはパワーピボットやパワークエリ。例えばパワーピボットを使えば複雑なデータをまとめて表示したり、表やグラフを一気に作成したりすることができて重宝します。

——エクセル2021でも様々な新機能が使えるようになりましたね。

金子 これまでのバージョンアップでは新しい関数が登場しても使用頻度は少なかった印象ですが、今回は使い勝手のいい関数が登場しています。「XLOOKUP」「FILTER」「SORT」「UNIQUE」「XMATCH」の5つは、仕事の現場で重宝すると思います。条件に当てはまるデータを取り出すXLOOKUPは、「VLOOKUP」よりも初心者が使いやすい。VLOOKUPは検索列が左端に限定されますが、XLOOKUPでは検索範囲を自由に指定できるようになりました。使い方を知っておいて損はないと思います。

一番人気の「Excel仕事を10倍早く終わらせるテクニック20選」は再生回数597万回
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動画収録の様子。操作が分かりやすくなる、手元を写すカメラも設置する
動画収録の様子。操作が分かりやすくなる、手元を写すカメラも設置する

明日から使える神テク4選

【神テク1】 一覧表をラクに管理する「テーブル」

 表に行や列を追加した際、セルの書式設定や計算式も自動で引き継がれる。行や列を追加するたびに再設定する手間を省ける。

(1)データを一通り入力したらその範囲の任意のセルを選択し、「挿入」タブの「テーブル」をクリック。(2)「先頭行をテーブルの見出しとして使用する」にチェックを入れて、OKをクリック
(1)データを一通り入力したらその範囲の任意のセルを選択し、「挿入」タブの「テーブル」をクリック。(2)「先頭行をテーブルの見出しとして使用する」にチェックを入れて、OKをクリック
(3)行を追加すると、計算式や書式が引き継がれるので、再入力する必要がない
(3)行を追加すると、計算式や書式が引き継がれるので、再入力する必要がない

【神テク2】 「グループ化」で表示・非表示を簡単に

 任意の複数の行や列をまとめて非表示にできる。当該部分の場所が分かりやすく、ワンクリックで表示・非表示を切り替えられる。

(1)非表示にしたい行や列の範囲をドラッグで選択。(2)「データ」タブの「アウトライン」で、「グループ化」をクリック
(1)非表示にしたい行や列の範囲をドラッグで選択。(2)「データ」タブの「アウトライン」で、「グループ化」をクリック
(3)「-」ボタンをクリックすると「+」ボタンに切り替わり、非表示になる
(3)「-」ボタンをクリックすると「+」ボタンに切り替わり、非表示になる

【神テク3】 印刷範囲を1枚に収める「縮小印刷」

 ビジネスシーンでありがちな、表の一部が2枚目にまたがってしまう印刷ミスを解消。簡単な操作で、印刷範囲を1枚に収められる。

(1)「ページレイアウト」タブの「拡大縮小印刷」で、「横」「縦」を「1ページ」に設定
(1)「ページレイアウト」タブの「拡大縮小印刷」で、「横」「縦」を「1ページ」に設定
(2)印刷すると、横長の表でも右側の一部が2枚目にまたがらず、1枚に収まった
(2)印刷すると、横長の表でも右側の一部が2枚目にまたがらず、1枚に収まった

【神テク4】 便利な「オートフィル」で書式はそのまま

 セル内のデータを自動で連続コピーする「オートフィル」機能の利用時に、背景の色や罫線はコピーされないようにする。

(1)ポインターをコピーしたいセルの右隅にある「■」に重ね、「+」に変わったらドラッグする
(1)ポインターをコピーしたいセルの右隅にある「■」に重ね、「+」に変わったらドラッグする
(2)一番右下に表示される「オートフィルオプション」をクリックし、「書式なしコピー」を選択
(2)一番右下に表示される「オートフィルオプション」をクリックし、「書式なしコピー」を選択
(3)入力内容だけがコピーされ、背景の色や罫線といった書式はコピー前の状態に戻る
(3)入力内容だけがコピーされ、背景の色や罫線といった書式はコピー前の状態に戻る

学習最短ルートは「まずは動画で学び、本で補強」

 エクセル初級者は、動画で操作の手順などを確認しながら、実際に手を動かすことが習得の早道。基本的な機能や使い方がある程度身に付いたら、理解が不十分な部分を本や雑誌などで復習するといい。下図は金子さんがYouTubeチャンネルに上げている解説動画のお薦め視聴順(掲載は一部)。スキルを段階的に学べるので、参考にしてほしい。

詳しくはYouTubeチャンネルを確認
詳しくはYouTubeチャンネルを確認
注)チャンネル登録者の数や再生回数は2022年2月18日時点
【ずるい!エクセル「学び直し」】
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(写真/尾関祐治)

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