
ソニーグループと新会社を設立して2025年に電気自動車(EV)を発売するホンダ。クルマ離れが進む若い世代にアピールしそうだが、そのホンダは若年層を開拓すべく新車のオンラインストア「Honda ON」を2021年10月に開設している。月額固定のサブスクリプション型で、人気の5車種を取り扱う。会員登録の中心層は、狙い通り30代以下の若者層。今後、売り切り型の販売も視野に入れる。

ソニーグループとホンダが提携して開発した電気自動車(EV)を2025年に発売するという先般の発表は、クルマ好きならずとも久々に驚きと期待感にあふれたニュースだった。25年はEVが今現在よりも浸透し、環境問題やSDGs(持続可能な開発目標)に関心を持って育ったZ世代、ミレニアル世代が初購入車にEVを選ぶケースが一般化するはずだ。ソニー・ホンダのEVはその有力候補になるだろう。
両社の若手社員がモビリティーの未来についてワークショップ形式で議論を重ねたことで立ち上がった両雄のタッグ。会見では、「モビリティーの進化をリードしていく」(ソニー吉田憲一郎会長兼社長)、「クルマの範囲を超えた新たな価値を世に問う」(ホンダ三部敏宏社長)との発言があった。ホンダの開発力に、ソニーのイメージング・センシング、通信、エンターテインメント技術が加わるとどのようなクルマが完成するのか、興味は尽きない。
両社が新会社を設立してつくるEVの仕様や販売方法はまだ分からない。一方で、ホンダがつい最近、Z世代を明確に意識して始めたサービスがある。21年10月に開設した四輪新車のオンラインストア「Honda ON(ホンダオン)」がそれだ。専用サイト上で、クルマ情報の閲覧から商談、見積もり、査定、契約まで、一連の購入手続きができるオンライン販売方法で、国内自動車メーカーとしては初の取り組みとなる。
Honda ONを運営するのは、21年4月に設立したホンダ傘下の子会社、ホンダセールスオペレーションジャパン(埼玉県和光市)。同社営業部オンライン販売課主任の井上喜章氏は、「もちろん少子高齢化の波はあるが、人口比以上に若い方がクルマから遠ざかっている状況がある。若年層が慣れ親しんでいるスマートフォンを通じてホンダを身近に感じ、接点をつくっていきたい。そんな思いから開設に至った」と説明する。
Honda ONが若者に訴求するポイントはいくつかある。
まず月額固定料金のサブスクリプション型限定でスタートしたこと。軽自動車「N-BOX」は月額3万1310円から(5年契約、ボーナス払いなし、以下同)、コンパクトカー「フィット」は同4万2550円から、SUV「ヴェゼル」は同4万8460円から、小型ミニバン「フリード」は同4万8850円から利用できる。月額利用料には、カーナビなどの基本的なオプション費用、自動車税、点検・車検などのメンテナンス費用が含まれる(自動車保険は含まず、別途オンラインで見積もり)。途中解約も可能で、契約満了時は追加代金を払ってクルマを購入する選択肢もある。
さまざまなサービスで月払いに慣れた若者にとってサブスク型は、数百万円の車両価格を提示されるよりハードルが低い。また若者ならずとも、値引き交渉などリアルの商談に苦手意識があったり、多忙でディーラーに出向く時間をなかなか確保しづらかったりする人にとっても、ネットでクルマの情報を収集がてら申し込みに入っていけるオンライン販売は、使い勝手がいい。
Honda ONにアクセス後も、離脱を防ぐ工夫が凝らされている。ファミリープランにはフリード、アクティブプランにはヴェゼル、スタンダードプランにはフィット、カジュアルプランにはN-BOXと人気の1車種を用意(カジュアルタイプには22年1月から「N-WGN」が加わった)。タイプも例えばフィットなら「HOME」と「CROSSTAR」の2択、契約期間は3年または5年の2択、月額もボーナス払いありとなしの2択と、選択肢を絞って提示している。5種類以上から選ぶのはボディーカラーぐらいだ。選択肢が多いことは良いことのように思えるが、選択に迷って調べているうちに離脱する要因になってしまう。それを防ぐ狙いがある。
利用中に不明点が生じた際は、Honda ONコンタクトセンターのオペレーターに、ストア内のチャットで相談できる安心感もある(有人対応は午前11時から午後8時、年中無休)。
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