
脱炭素の潮流の中で、電気自動車(EV)が脚光を浴びている。2022年は人気の多目的スポーツ車(SUV)タイプのEVラッシュだ。国内勢では、日産自動車やトヨタ自動車、SUBARU(スバル)が相次いで発売。25年にはホンダとソニーグループが設立する新会社も参戦し、米アップルの参入も予想される。異業種を交えたEV大混戦を控え、新たなマーケティング手法を模索する動きが広がっている。見えてきた新しいクルマの売り方「3つの変化」とは。
2022年2月、韓国の現代自動車は、約12年ぶりに日本の乗用車市場へ再参入することを発表した。日本法人のヒョンデ・モビリティ・ジャパン(横浜市)が22年5月から受注を開始するのは、電気自動車(EV)「アイオニック5」と燃料電池車(FCV)「ネッソ」の2車種だ。急速に盛り上がりつつある脱炭素の社会・消費者ニーズに焦点を当て、海外ではラインアップしているガソリン車はあえて販売しない。
再参入に当たってヒョンデは、オンラインサイトによるメーカー直販に専念する。全国にディーラー網を構える既存の自動車メーカーとは一線を画す戦略だ。しかし、これだけなら今では世界最大手のEVメーカーとなった米テスラの成功モデルを踏襲したにすぎない。ヒョンデは、さらに一歩進んだ工夫を凝らしている。
同社が挑戦する新しいクルマのマーケティング手法のキーワードは、「オンライン販売」に、「リース・サブスクリプション(定額利用)」「シェアリング連係」を加えた3つだ。その鍵を握るのは、DeNAとSOMPOホールディングスの合弁会社、DeNA SOMPO Mobility(東京・渋谷)との提携である。
DeNA SOMPO Mobilityは、個人間カーシェアリングサービスの「Anyca(エニカ)」を運営しており、会員数50万人以上、累計登録台数2万台以上を誇る。このプラットフォームを活用して、両社は「仮想ディーラー網」と「仮想営業パーソン」の仕組みをつくろうとしているのだ。一体どういうことか。
仮想ディーラー、仮想営業パーソンとは?
まず、DeNA SOMPO Mobilityはヒョンデからアイオニック5を22年中に100台、ネッソを20台を目標に購入し、東京や神奈川で同社が契約する駐車場に配備する。これをAnycaユーザー向けに1時間単位で使えるレンタカー型カーシェアとして貸し出す。
EVはまだ乗り慣れていない人が大半なため、ディーラーで数十分の試乗をしたところで、その真価は理解されにくい。そもそも、予約した時間にディーラーへ出向くのも面倒に感じる人が多いのも事実だ。こうしたペイン(顧客が抱える障害)を取り除く一手が、ユーザーが自由に長時間乗れるカーシェアの提供というわけだ。
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