続・メタバースで変わるビジネス 第6回

米メタをはじめ、海外勢のニュースが多いメタバース市場。そんな中、急ピッチで事業化を進めるのが、通信大手のNTTドコモだ。多様な技術・サービス開発をするのに加え、ベンチャー企業のHIKKY(東京・渋谷)に大型出資を行い連携するなど、本腰を入れる。“ポストスマホ”だけでなく、“次世代の通信基盤”とまで語るドコモの戦略を追った。

NTTドコモは日本最大級のVRイベント「バーチャルマーケット」を運営するHIKKYと資本・業務提携を実施。XR領域の開拓を急ぐ。ドコモが描くメタバースな世界とは。画像は「バーチャルマーケット2021」でドコモが実施したメディアジャックの様子
NTTドコモは日本最大級のVRイベント「バーチャルマーケット」を運営するHIKKYと資本・業務提携を実施。XR領域の開拓を急ぐ。ドコモが描くメタバースな世界とは。画像は「バーチャルマーケット2021」でドコモが実施したメディアジャックの様子

 世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット」を展開するHIKKY(東京・渋谷)と資本・業務提携に合意し、65億円を出資――。

 2021年11月15日、NTTドコモから発せられた報道発表に、業界関係者は驚いた。ドコモは以前からXR(VR〈仮想現実〉、AR〈拡張現実〉、MR〈複合現実〉などの総称)領域の研究開発を続けてきたが、VR、メタバース世界の構築に挑むベンチャー企業と組み、ブーストをかけた形だ。その本気度は、同社の組織変更にも表れている。

 報道発表から遡ること1カ月ほど前、21年10月1日にドコモ内で発足したのが「XR推進室」だ。今までもXRをビジネス面・技術面で推進する担当は置かれていたものの、ドコモのみならずNTTグループ全体のXR事業をけん引していくという役割で、一挙に“格上げ”された。

 「もともとXRに関しては、将来を見据えて取り組んできていた。だが、米メタ(旧フェイスブック)の社名変更を含め、ここ1年で環境は激変。時代が一気に進み、ブーストをかけないといけない状態にある」と、ドコモのXR推進室 室長の岩村幹生氏は話す。

 XRコンテンツは従来の2Dに比べてデータ量が多く、アバターなどを活用してインタラクティブな交流も重要になる。そのため、高速通信規格の5Gと親和性が高く、ドコモも5G戦略の一つの目玉として長期視点で取り組む予定だった。だが、岩村氏が述べたように時代は加速。5Gの普及を待たずに、XR領域の推進も急ぐ狙いだ。

アイデンティティーである「アバター」に着目

 ドコモはXR系のヘッドセットの提供やXRサービスの展開など、多様な実証実験を繰り返している。そんな中、注目したいのが「アバター」を軸にした取り組みだ。

 「アバターはサイバー空間・デジタル空間とリアル空間をつなぐユーザーのアイデンティティーとして極めて重要」と岩村氏は指摘する。「仮想空間でもリアルと同じく、TPOに応じてキャラクターや見た目を使い分けたいと考えるのが自然。将来的には1人当たり数十体のアバターを使い分けるような世界になることも想定される」(岩村氏)。

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