今回は、2022年12月(22年12月1~31日)における中国スタートアップ資金調達額トップ10の中から選出した3社と、同期間で373件に達した投資対象企業の中から選んだ、注目したい中国スタートアップ2社を紹介する。
12月の資金調達額から注目すべき中国スタートアップ5社
(1) 水素エネルギーの技術開発企業「国氫科技(SPIC HYDROGEN ENERGY)」
国氫科技(SPIC HYDROGEN ENERGY)は22年12月の資金調達額ランキングで第1位に立つ。17年5月に設立された、中国国営系5大発電系企業の1つである国家電投(SPIC)傘下の水素エネルギー技術開発企業であり、水素エネルギー産業におけるコア技術の技術開発を行っている。同社は22年12月8日にシリーズBで45億元(約859億5000万円)の資金調達に成功した。今回の投資では、中国国務院が批准し、設立した国家レベルのPE(プライベートエクイティ)ファンド「国家混改基金(CCT)」や国家財政部、生態環境部、そして上海市が共同で設立した環境系国家ファンド「国家緑色発展基金(NGDF)」などが参加している。
今回の資金調達は、中国国内の水素エネルギー産業における1回の資金調達額として、過去最大を記録している。その他、国家電投集団が育成した1社目のユニコーン企業であると同時に、水素エネルギー業界において企業価値が最大(130億元)のユニコーン企業となっている。国氫科技は、今回の資金調達を受け、IPO(新規株式公開)に向け準備を始め、水素エネルギー業界の超級ユニコーン企業となるという目標に向けて、まい進していく予定だ。
国氫科技は17年の設立以来、コア技術の深掘りと製品開発の革新に持続的に取り組んでいる。コア技術においては、水素燃料電池とPEM(固体高分子膜)製の「水素産業においてすべて自主開発した技術群」を構築。この技術力を利用し、水素製造と水素利用の2つの重要部分にフォーカス。製品開発においては、多元化、そしてシリーズ化された燃料電池とPEM製の水素製品を全面的に打ち出しており、自主性の高い、高性能な、量産可能かつ低コストな水素エネルギー技術の産業化実装の強みを有する。さらに、実用化の段階として、北京、武漢、佛山などの国内都市に、水素エネルギーの研究開発部門と製造部門を一体化した産業基地の建設を加速。これにより、水素産業の研究開発から製造、実装に至る「チェーン」の革新的な融合と、産業としての潜在的な能力の向上を推し進めている。
注目したいのは、水素エネルギー関連の国家重点研究開発計画プロジェクトを獲得し、けん引し始めていることだ。国氫科技は、直近で、2つの目玉プロジェクトの主責任企業となっている。1つは、兆ワット級の高効率・長寿命発電燃料電池堆を対象とする製造プロセス化における重要技術の研究開発だ。これは、発電堆のキーとなる技術研究を展開するもので、今後の水素燃料電池の大規模な商業化応用のための基礎を築くものとなっている。もう1つは、乗用車用の高出力密度の燃料電池における電堆およびエンジン技術だ。このプロジェクトの成果は、燃料電池乗用車に搭載されるものとなっており、これも今後の水素エネルギーの規模を拡大する推進役となっている。
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