今回は、2022年11月(2022年11月1日~30日)における中国スタートアップ資金調達額トップ10の中から選出した3社と、同期間で341件に達した投資対象企業の中から選んだ、注目したい中国スタートアップ2社を紹介する。

嵐図汽車の人気モデル「嵐図夢想家」(左)「嵐図FREE」(右)(画像は嵐図汽車のニュースリリースから)
嵐図汽車の人気モデル「嵐図夢想家」(左)「嵐図FREE」(右)(画像は嵐図汽車のニュースリリースから)
中国スタートアップ資金調達額トップ10(2022年11月)
2022年11月(22年11月1~30日)における中国企業による資金調達件数は計341件で、推定総額約475億元(約9262億5000万円)の資金調達が行われた。資金調達額の多い順にランキングした(出所/匠新)
2022年11月(22年11月1~30日)における中国企業による資金調達件数は計341件で、推定総額約475億元(約9262億5000万円)の資金調達が行われた。資金調達額の多い順にランキングした(出所/匠新)

11月の資金調達額から注目すべき中国スタートアップ5社

(1) ハイエンド新エネルギー自動車ブランド「嵐図汽車(VOYAH)」

 嵐図汽車(VOYAH)は2022年11月の資金調達額ランキングで第1位に立つ。21年6月設立の中国スタートアップ企業で、中国国営自動車大手「東風汽車(DFM)」傘下の自動車ブランドだ。同社は22年11月18日にシリーズAで45億5000万元(約887億2500万円)の資金調達に成功した。今回の投資では、東風汽車をはじめ、中国のリチウム大手「江西贛鋒鋰業(ガンフォンリチウム)」や中国のバッテリーメーカー「欣旺達(SUNWODA)」などが参加している。同社は、今回の資金調達を受けて、技術の研究開発やマーケティングの構築、企業のデジタル化の推進と製品の生産能力の強化を進めていく。

嵐図汽車の主要モデル「嵐図FREE」(画像は嵐図汽車のニュースリリースから)
嵐図汽車の主要モデル「嵐図FREE」(画像は嵐図汽車のニュースリリースから)

 注目したいのは、ESSA(Electric Smart Secure Architectureの略で、嵐図が独自で開発したスマート電動車の内部設計構造のことを指す)とSOA(Service Oriented Architectureの略で、中央集中制御式の電子部品をはじめとしたハードウエアの設計構造のことを指す)を組み合わせたアーキテクチャーを、中国で初めて採用していることだ。嵐図汽車は、このアーキテクチャーにおいて、独立した知的財産権や強力な電動性能、スマート運転の制御能力、そして極めて高い安全性の4つの優位性を持ち合わせている。

 特にSOAは、中国国内で最先端のSDV(Software Defined Vehiclesの略で、ソフトウエアが自動車を定義することを指す)のアーキテクチャーとなっており、71項目の特許の取得に成功した。同社は、ESSAとSOAの2つのアーキテクチャーに基づき、先見性を以て、固体電池や水素燃料電池、そして「レベル4」(特定条件下での完全自動運転が可能)以上の自動運転技術などの実装を試みている。

嵐図汽車のESSA(Electric Smart Secure Architecture)とSOA(Service Oriented Architecture)の組み合わせは、同社が取り扱う6つの車型(左上から右下に向かっての順で、セダン、ハッチバック、SUV、ステーションワゴン、ミニバン、クーペ)に対応している(画像は嵐図汽車のニュースリリースから)
嵐図汽車のESSA(Electric Smart Secure Architecture)とSOA(Service Oriented Architecture)の組み合わせは、同社が取り扱う6つの車型(左上から右下に向かっての順で、セダン、ハッチバック、SUV、ステーションワゴン、ミニバン、クーペ)に対応している(画像は嵐図汽車のニュースリリースから)

 同時に、嵐図汽車は、東風汽車がグローバル市場に保有しているリソースを頼りに、業界内で最も早く中国本土からのグローバル展開を実現したハイエンド新エネルギー自動車ブランドでもある。同社は、22年2月、欧州市場への進出を発表し、ノルウェーをその最初の進出先とした。同年9月には、同社の主要モデルである「嵐図FREE」を正式にノルウェーに輸出し、同年11月から顧客へ納車し始めている。次のステップとして、23年からもう一つの人気モデルである「嵐図夢想家」を欧州市場で展開するのに加えて、スウェーデンやオランダ、デンマーク、そしてイスラエルの4カ国における販売を予定している。

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