今回は、22年10月(22年10月1~31日)における中国スタートアップ資金調達額トップ10の中から選出した3社と、同期間で307件に達した投資対象企業の中から選んだ、注目したい中国スタートアップ2社を紹介する。

広汽埃安の純電動スーパーカー「Hyper SSR」(画像は広汽埃安のニュースリリースから)
広汽埃安のフル電動スーパーカー「Hyper SSR」(画像は広汽埃安のニュースリリースから)
中国スタートアップ資金調達額トップ10(2022年10月)
2022年10月(22年10月1~31日)における中国企業による資金調達件数は計307件で、推定総額約524億元(約1兆270億4000万円)の資金調達が行われた。資金調達額の多い順にランキングした。(出所/匠新)
2022年10月(22年10月1~31日)における中国企業による資金調達件数は計307件で、推定総額約524億元(約1兆270億4000万円)の資金調達が行われた。資金調達額の多い順にランキングした。(出所/匠新)

10月の資金調達実績から注目すべき中国スタートアップ3社

(1)スマート電気自動車研究開発企業「広汽埃安(AION)」

 広汽埃安(AION)は22年10月の資金調達額ランキングで第1位に立つ。17年7月設立の中国スタートアップ企業で、中国国営自動車大手「広州汽車集団(GAC)」傘下のブランドだ。同社は22年10月20日にシリーズAで182億9400万元(約3585億6200万円)の資金調達に成功した。今回の投資では、中国保険大手「中国人民保険集団(PICC)」の投資会社「人保資本(PICCIM)」や中国の国有送電会社「中国南方電網」傘下のファンド「南網能創」、そして著名エクイティ(PE)ファンド「深セン市創新投資集団(SCGC)」など合計53の投資家が参加している。

 広汽埃安は、「産業+資本」の2輪駆動による経営を強化し、総合的な競争力の増強を目指す。公開情報によれば、今回の投資は、自動車業界における2つの記録を更新している。1つは、182億9400万元という、国内新エネルギー自動車OEM(相手先ブランドによる生産)企業にとって、最大の単一資金調達額。もう1つは、1032億3900万元(約2兆234億8400万円)という、中国国内の未上場新エネルギー自動車関連企業としての最高評価価値だ。

 22年は、新型コロナウイルス感染症の局地的拡散が頻発する中で、サプライチェーン(供給網)が打撃を受け、コストが上昇するなどの影響が出た。その背景の下でも、広汽埃安は高い成長を維持し続け、年平均成長率は120%以上、1カ月当たりの販売台数は3万台を突破している。

 また、現在中国の自動車産業では、電動化、コネクテッド化、スマート化、シェアリング化の「新四化」の変革に直面。重要部品であるモーターは、新エネルギー自動車の動力基幹部として、そのトレンドの中で自動車コア技術の1つとなっている。そこで、広汽埃安は傘下にモーター企業を構え、自社独自のモーターシステムの構築を進めていく予定だ。

現在最も人気のある広汽埃安の最新モデル「AION S」(左)と「AION Y」(右)(画像は広汽埃安のニュースリリースから)
現在最も人気のある広汽埃安の最新モデル「AION S」(左)と「AION Y」(右)(画像は広汽埃安のニュースリリースから)

 注目したいのは、そのモーター領域において見せている飛躍的な技術力と実装力の向上だ。広汽埃安は18年、モーター、電力制御システム、電力差分調整の3つを1つに統合したモーターの開発に成功。これにより、従来のモーターと比較して、重量で20%、体積で15%の減少を達成したと同時に、電力効率は14%、トルクは20%の向上を実現。続く20年には、世界初の高性能2ギアデュアルモーター開発のためのモーター技術を発表した。これにより、わずか2秒で時速0キロメートルから100キロメートルへ加速する能力を獲得している。

 直近の22年9月15日には、最新のフル電動スーパーカー「Hyper SSR」を発表。こちらは、1.9秒で時速100キロメートルに加速する能力を有しているほか、その動力システムは既に中国自動車技術研究センターの検証試験をクリアしており、将来的には1秒間で時速100キロメートルに到達し得る。

広汽埃安のフル電動スーパーカー「Hyper SSR」(画像は広汽埃安のニュースリリースから)
広汽埃安のフル電動スーパーカー「Hyper SSR」(画像は広汽埃安のニュースリリースから)

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