第15回は、2022年の第3四半期(22年7月1日~9月30日)における中国スタートアップへの投資情報を整理・分析する。

2022年第3四半期(第3Q)終了時点における中国のユニコーン企業をマップ形式で示した
2022年第3四半期(第3Q)終了時点における中国のユニコーン企業をマップ形式で示した

 2022年の第3四半期(今回は22年7月1日~9月30日、以下第3Qとする)における中国企業による資金調達件数は計1150件で、推定総額約1564億元(約3兆1640億円)の資金調達が行われた。1件当たりの資金調達額は、1億3604万元(約27億5209万円)となっている。第3Qは、第2Qと同様、「先進製造」「医療健康」「企業向けサービス」に加え、「自動車交通」「伝統製造」の5業界に注目したい。また、第3Q終了時点における計38社のユニコーン企業のうち、新出ユニコーン企業は13社。その中でとりわけ多いのが、「先進製造」の6社だ。

直近3年間の各年第3Qにおける資金調達(投資)件数および投資1件当たりの平均資金調達(投資)額の推移
直近3年間の各年第3Qにおける資金調達(投資)件数および投資1件当たりの平均資金調達(投資)額の推移
直近3年間の各年第3Qにおける資金調達(投資)件数および平均資金調達額を比較した。左縦軸目盛り(棒グラフ)が資金調達(投資)件数を、右縦軸目盛り(ひし形マーク)が投資1件当たりの平均資金調達額を示す(出所/匠新)

1件当たりの資金調達(投資)額は22年を通じて低調

 22年第3Qにおける中国企業による資金調達件数は、前年同期に比べて660件減少、率にして36.5%少なくなっている。資金調達額は1492億9231万元(約3兆201億8343万円、48.8%)減少し、同時に投資1件当たりの平均資金調達(投資)額も3287万元(約6億6496万円)減少、率にすると19.5%少なくなっている。

 20年から21年は、資金調達件数が606件(50.3%)と大幅な上昇を見せると同時に、投資額も912億7410万元(約1兆8464億7504万円、42.6%)の増加となっていた。1件当たりの投資額は921万元(約1億8632万円、5.2%)と若干の減少を記録したものの、投資全体のボリュームは大きな増加を見せていたことが分かる。20年から22年の全体推移では、1件当たりの平均資金調達額が4209万元(約8億5148万円、23.6%)の大幅な減少を記録していることが分かる。最後に、3年間の同期比で見ると、21年の投資件数および投資額ともに際立って短期的な急増を見せていたことが分かる。この傾向は、22年第1Qおよび第2Qでの比較でも相違ないことから、第4Qを除いた現時点での22年全体の投資件数およびその金額は、一貫して下降気味であることが分かる。

 次に、直近3年間の第3Qにおける各業界の資金調達(投資)件数を見てみる。

直近3年間の各年第3Qにおける各業界の資金調達(投資)件数
直近3年間の各年第3Qにおける各業界の資金調達(投資)件数
棒グラフは、直近3年間の第3Qにおける各業界の投資件数を示す。なお、「メタバース」は、21年からのデータのみ(出所/匠新)

「先進製造」「医療健康」「企業向けサービス」は22年の3大業界

 22年第3Qおよび直近3年間における各業界の資金調達(投資)件数の推移を見ると、22年第3Qでは、件数が多い順に、「先進製造」「医療健康」「企業向けサービス」となっており、22年第1Qから一貫して変わらない。個別に見ていくと、まず「先進製造」は、20年からの2年間で112件(64%)増加し、22年には第1位となっている。一方で「医療健康」は、21年に122件(47%)の増加を見たものの、22年には141件(37%)の減少を記録。しかし、依然として第2位の投資件数を誇っている。また、21年には69件(36%)の増加を見せ、第2位となっていた「企業向けサービス」は、22年には108件(41%)の減少を記録し、第3位に位置している。総じて、直近3年間の第3Qでは、上記3業界が上位3位に並ぶ傾向が依然として続いている。

 上位3業界以外に目を向けると、21年に大幅な増加を経たのち、22年には大幅な減少を見せ、20年の元の水準あるいはそれ以下の資金調達件数となっている分野が多くある。「電子商取引」は、21年に115件(144%)増加したものの、22年には114件(58%)減少。「スマートハードウエア」の場合、21年に47件(63%)増加したが、22年には53件(43%)少なくなっている。

 加えて、21年に若干の増加を見せたものの、「教育」「金融」「文化・娯楽・メディア」「ゲーム」のように、22年に急激な減少を見せた業界もある。とりわけ、「文化・娯楽・メディア」は、21年に7件(15%)増加、その後の22年には43件(78%)の減少を記録している。

 そのほか21年から含まれるようになった「メタバース」が唯一、21年から一貫して増加を続けている。一方で、「ライフスタイル」「ソーシャル・ネットワーク」「ツールアプリ」は、20年から継続して減少傾向にあり、とりわけ「ソーシャル・ネットワーク」は、20年の13件から22年では4件へと、9件(69%)減少している。

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