今回は、2022年9月(22年9月1~30日)における中国スタートアップ資金調達額トップ10の中から選出した3社と、同期間で330件に達した投資対象企業の中から選んだ、注目したい中国スタートアップ2社を紹介する。
9月の資金調達実績から注目すべき中国スタートアップ5社
(1)純結晶シリコンを主要とする半導体材料加工技術の研究開発企業「麗豪半導体(LIHAO SEMICONDUCTOR)」
麗豪半導体は22年9月の資金調達額ランキングで第1位に立つ。21年4月設立の中国スタートアップ企業で、主に純結晶シリコンなど半導体材料の加工技術の研究開発を手掛ける。同社は22年9月27日にシリーズBで22億元(約452億5400万円)の資金調達に成功した。今回の投資では、中国とベルギー両国の政府による共同直接株式投資ファンドや中国と米国の政府および民間企業が共同で設立したグリーンファンドなどが参加している。同社は今回の調達資金を20万トンの高純結晶シリコン製造第2期プロジェクトの建設と技術研究開発に充てる。
麗豪半導体は、高純結晶シリコンなどの半導体材料の技術研究開発を主に、その生産や販売も行う。21年4月、同社は、中国国内の太陽光パネル業界の長期的な好景気、シリコン材料生産能力のミスマッチ、そしてシリコン材料業界の長期的なハードルの高さおよびその供給体制の弱点などに対応するため、中国青海省西寧市で創立された。創立から1年半をたたずして、ユニコーン企業にまで成長している。同社の第1期プロジェクトは、21年8月に正式に建設を開始。冬季の中国北部に特徴的な厳しい条件下での施工や国家エネルギーインフラプロジェクトである天然ガスパイプライン建設の路線変更などの外部要因による不利な影響を受けたものの、22年7月30日に竣工。施工は予定よりも2カ月早く完了。22年8月22日には、1つ目の規格品シリコン材料の製造を開始しており、業界内でも最速のスピード感で臨んでいる。
注目したいのは、今後の太陽光パネル実装総規模の大幅な増加が見込まれる中で、その原材料となる高純結晶シリコンの生産能力の補完を行おうとしていることだ。需要サイドから見た場合、中国国内のカーボンニュートラル実現に向けた政策である「双炭(ダブルカーボン:30年までにカーボンピークアウト、60年までにカーボンニュートラル実現)」に基づくと、30年までの中国太陽光パネル実装総規模は、1200ギガワット以上に到達するという予測だ。供給サイドから見た場合、高純結晶シリコンは、太陽光パネルの上流領域として、製造プロセスでは資金投入量が大きく、建設周期がその他の領域と比較しても長い傾向がある。
加えて、製造拠点の建設地の選択において受ける要求が高いことや技術障壁の高さなど多くの要因が影響し、供給側内部の発展速度が太陽光パネルの需要側の成長速度よりも遅いという状況を招いている。こうして、需給間で生産能力のミスマッチが発生しており、業界の発展のボトルネックとなっている。麗豪半導体は、まさにこのボトルネックを規模とスピード感で一部解決していくと期待される。
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