今回は、2022年8月(22年8月1~31日)における中国スタートアップ資金調達額トップ10の中から選出した3社と、同期間で423件に達した投資対象企業の中から選んだ、注目したい中国スタートアップ2社を紹介する。
8月の資金調達実績から注目すべき注目中国スタートアップ5社
(1)オンライン配車サービスプラットフォーム企業「享道出行(シャンダオチューシン)」
享道出行(シャンダオチューシン)は2022年8月の資金調達額ランキングで同額で第3位に立つ。18年4月設立の中国スタートアップ企業で、オンライン配車サービスプラットフォームを運営している。同社は22年8月15日にシリーズBで10億元(約205億円)の資金調達に成功した。今回の投資には、中国国有自動車大手の上汽集団(SAIC)と自動運転システム開発の初速度科技(Momenta)などが参加している。
享道出行は今回の調達を受けて、自社が提供するモビリティーサービス事業について、法に違反することなく、持続的かつ急速に成長を推し進める。同社は合法性と高い市場占有率の両立を企業の発展目標として掲げている。同時に、タイミングを図りながらIPO(新規株式公開)の計画を始動させ、モビリティーサービスプラットフォーム企業として初めての上場を目指す。
享道出行は、SAICのモビリティーブランドとして、SAICが掲げる目標である「電動化、スマートコネクション化、シェアリング化、国際化」を実現するための重要な役割を負っている。同社は創業から3年にわたって、中国のモビリティーサービス市場で実践を重ね、大量のデータを蓄積している。それらのデータに基づき、主にモビリティーサービスという川下産業側から、SAICのバリューチェーンを川上から川下までより密接に連携させる役割を担っている。
21年12月には、当時としては国内で初めてとなる、既存の自動車企業による自動運転「レベル4」(特定条件下での完全自動運転が可能)の自動運転オペレーションプラットフォームとして、「享道自動運転タクシー(ロボタクシー)」プロジェクトを始動させた。現在は、上海市と江蘇省蘇州市で、ロボタクシーを使ったサービスを既に実用化している。
このプロジェクトは、SAICのAI(人工知能)実験室と、自動運転システムを開発するMomenta、享道出行などがそれぞれ持っていた、SAICのエコシステムとバリューチェーンの上にある貴重なリソースを統合することで、成熟したモビリティーオペレーションについての経験と最先端の自動運転技術を有機的に結合する試みを進めている。これにより、「スマート製造+AI+オペレーション」の三位一体モデルを新しく確立し、レベル4の自動運転技術を都市部でのモビリティーシーンに導入・運用するほか、この自動運転技術を用いた新しい取り組みも探索する。
注目したいのは、モビリティーサービス業界における法令順守の動きを、享道出行がけん引していることだ。中国交通運輸部のモニタリングデータによれば、21年以来、同社の運転手および自動車の法令順守率は、7カ月連続で業界トップ。上海市交通委員会などによるサンプリング調査でも、同社の全面的に法令を順守する安全なオペレーション管理モデルは、高い評価を獲得している。
また、22年には、南京市、杭州市、寧波市などの都市で21年度のネット予約タクシーサービスの品質ランキングトップにも躍り出ている。同社の独自調査でも、ユーザーの満足率は98%に到達。8割のユーザーが同社の乗車サービスを2回以上体験しているという。このように同社は、上海および長江デルタ地域のネット予約タクシー業界で、法令を順守しながら成長する代表的な企業として、頭角を現している。
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