今回は、2022年5月(22年5月1~31日)における中国スタートアップ資金調達額トップ10の中から選出した3社と、同期間で345件に達した投資対象企業の中から選んだ、特に注目したい中国スタートアップ2社を紹介する。

「高雲半導体(GOWIN)」の主要製品の1つである回路を自由に書き換えられる集積回路「GoBridge」シリーズのイメージ(画像は高雲半導体のニュースリリースより)
「高雲半導体(GOWIN)」の主要製品の1つである回路を自由に書き換えられる集積回路「GoBridge」シリーズのイメージ(画像は高雲半導体のニュースリリースより)
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中国スタートアップ資金調達額トップ10(2022年5月)
中国スタートアップ資金調達額トップ10(2022年5月) 2022年5月(22年5月1~31日)における中国企業による資金調達件数は計345件で、推定総額約425億元(約8500億円)の資金調達が行われた。資金調達額の多い順にランキングした(出所/匠新)
2022年5月(22年5月1~31日)における中国企業による資金調達件数は計345件で、推定総額約425億元(約8500億円)の資金調達が行われた。資金調達額の多い順にランキングした(出所/匠新)
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ランキングから見る注目中国スタートアップ3社

(1)FPGA型ICチップの研究開発企業「高雲半導体(GOWIN)」

高雲半導体
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 高雲半導体(GOWIN)は22年5月の資金調達額ランキングで首位に立つ。14年1月設立の中国スタートアップ企業で、ユーザー側で論理を書き換えられるICチップ「FPGA」(Field Programmable Gate Array)の研究開発を手掛ける。同社は22年5月24日にシリーズB+で8億8000万元(約176億円)の資金調達に成功した。今回の投資では、広東省や上海市の半導体に特化した産業ファンドが出資し、大規模投資となっている点が特徴だ。

 高雲半導体は、FPGA型のICチップについて、中国政府が海外製品から国内製品への代替戦略を推進している点に着目し、主要製品として、「GoBridge」、「小蜜蜂(Little Bee)」、そして「晨熙(Arora)」を用途に分けて提供している。これまでに100種類以上のICチップをリリースしており、中国国内でも数十社に限られるFPGA型ICチップ企業の1つとなっている。同社は国内のFPGA型ICチップ企業の中で唯一、主流の自動車用認証を取得しており、現在グローバルで問題となっている自動車向けICチップ不足の穴埋めとして、今後自動車領域に注力し、より信頼性が高く効率的なFPGA型ICチップ製品を自動車業界に提供していく。

高雲半導体の回路を自由に書き換えられる集積回路「小蜜蜂(Little Bee)」は、最小1.8mm×1.8mmのサイズまで対応している(画像は高雲半導体のニュースリリースより)
高雲半導体の回路を自由に書き換えられる集積回路「小蜜蜂(Little Bee)」は、最小1.8mm×1.8mmのサイズまで対応している(画像は高雲半導体のニュースリリースより)
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 注目したいのは、開発プラットフォームを提供することで、FPGAの開発の敷居を下げていることだ。同社は、あらゆるモノがネットにつながるIoT向け半導体の開発で、誰でも使えるオープンソースの仕様規格「RISC―V(リスクファイブ)」の開発フローとFPGAハードウエアの開発フローを同一プラットフォーム上で行える。この開発プラットフォームは、FPGAのレイアウトや配線、RISCーVソフトウエアのコンパイル、接続、シミュレーション、デバッグを統合的にサポートしている。

高雲半導体が提供する回路を自由に書き換えられる集積回路「晨熙(Arora)」用の開発プラットフォームである「Combat」開発キット(画像は高雲半導体のニュースリリースより)
高雲半導体が提供する回路を自由に書き換えられる集積回路「晨熙(Arora)」用の開発プラットフォームである「Combat」開発キット(画像は高雲半導体のニュースリリースより)
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(2)細胞生物医学設備の生産販売企業「原能細胞(Origincell)」

原能細胞
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 22年5月の資金調達額ランキングで8位に入った原能細胞(Origincell)は、17年5月設立の中国スタートアップ企業で、主に自己免疫活性化細胞領域の自動化・スマート化技術や設備の研究開発から製造までを手掛けている。同社は22年5月30日にシリーズAで4億元(約80億円)の資金調達に成功した。今回の投資では、原能細胞のCEO(最高経営責任者)自らが出資している点が特徴的だ。

 原能細胞は、先進的な細胞生物自動低温保存装置の技術開発から製品設計、そして製造までを全面的にカバーしている。特に自動化・スマート化深層低温バイオサンプル保存装置を中核とし、最先端のバイオ医薬品業界の上流工程と下流工程におけるバイオサンプル凍結保存に伴う困難を解決するソリューションを提供。同時に、低温冷凍や細胞調製などの領域における高い技術力を生かし、バイオサンプルバンクや細胞バンクの企画から構築、管理、運用、そして保守の全プロセスをワンストップで提供している。

原能細胞の細胞生物自動低温保存装置製品群。右端のシリーズ「BSN」は、同社の代表製品となっている(画像は原能細胞のニュースリリースより)
原能細胞の細胞生物自動低温保存装置製品群。右端のシリーズ「BSN」は、同社の代表製品となっている(画像は原能細胞のニュースリリースより)
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 注目したいのは、バイオサンプル保管管理の高度な自動化・スマート化技術だ。同社は、合計360件以上の特許を出願し、260件以上の特許を取得。中でも、40件以上のソフトウエア著作権を取得し、米国、欧州、日本などの国際特許も取得している。その独自の技術力を生かし、ー196℃環境下での保存を可能にしたBSNセルラー式自動深層低温バイオサンプル保存装置を代表とする4つのシリーズ化した製品群を開発。業界トップクラスのスマート全自動バイオサンプル保存ソリューションを提供している。

原能細胞のプロダクトソリューションを導入する細胞保存基地で稼働中の5Gスマート自動化深層低温細胞液体窒素保存バンクの様子(画像は原能細胞のニュースリリースより)
原能細胞のプロダクトソリューションを導入する細胞保存基地で稼働中の5Gスマート自動化深層低温細胞液体窒素保存バンクの様子(画像は原能細胞のニュースリリースより)
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(3)商業用航空宇宙技術提供サービス企業「東方空間(ORIENSPACE)」

東方空間
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 東方空間(ORIENSPACE)は22年5月の資金調達額ランキングで10位に入った。20年6月設立の中国スタートアップ企業で、地理リモートセンサー情報サービスから、衛星のナビゲーション・通信サービス、宇宙用エンジン、そしてロケット発射設備の研究開発・製造まで、宇宙ビジネス領域を幅広く取り扱う。同社は22年5月20日にシリーズAで4億元(約80億円)の資金調達に成功した。今回の投資では、中国大陸史上初の民間資本による商業銀行「民生銀行(Mingsheng Bank)」や中国の大手ゲーム会社「米哈遊(miHoYo)」が直接投資に参加していることが特徴だ。

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