第8回からは、四半期ごとに中国スタートアップ投資情報を整理・分析しつつ、資金調達額上位のスタートアップを毎月ランキングで示し、注目の数社を取り上げる形式で、中国における有望なスタートアップ企業を見いだす手がかりを提供する。今回は22年の第1四半期(22年1月1日~3月31日)における中国スタートアップへの投資情報を整理・分析する。
2022年の第1四半期(今回は22年1月1日~3月31日、以下第1Qとする)における中国企業による資金調達件数は計1421件で、推定総額約2442億元(約4兆8840億円)の資金調達が行われた。1件当たりの平均資金調達額は、1億7183万元(約34億3660万円)となっている。注目業界には、「企業向けサービス」「医療健康」「先進製造」「自動車交通」の4業界が挙げられる。また、第1Q終了時点における計36社のユニコーン企業のうち、新出のユニコーン企業は16社。その中でとりわけ多いのが、「自動車交通」の5社だ。
1件当たりの資金調達(投資)額が減少傾向に
22年第1Qにおける中国企業による資金調達件数は、前年同期に比べて107件減少、率にして7.0%少なかった。同時に資金調達額も607億8400万元(約1兆2156億8000万円、19.9%)低下していることから、投資1件当たりの平均資金調達(投資)額は2775万元(約5億5500万円)に減少、率にして13.9%も少なくなっている。
20年から21年にかけては、資金調達件数が620件増(68.3%増)と大幅な上昇を見せたものの、投資額は757億5000万元(約1兆5150億円、33.0%)の増加にとどまっている。このため、資金調達額の増加率が投資件数のそれに追いついておらず、1件当たりの平均資金調達額は5285万元(約10億5700万円、20.9%)も低下していた。20年から22年にかけての全体推移を見ると、1件当たりの平均資金調達額が8060万元(約16億1200万円、31.9%)も減少していることが分かる。
次に、直近3年間の第1Qにおける各業界の資金調達(投資)件数を見てみる。
「先進製造」分野の投資件数が大幅上昇
直近3年間の第1Qにおける各業界の資金調達(投資)件数の推移を見ると、22年第1Qでは、件数が多い順に「先進製造」「医療健康」「企業向けサービス」となっている。注目すべきは、20年からの2年間では3番目に多かった「先進製造」が、22年第1Qには最も多い件数に達しており、20年と比べると213件(163%)もの増加を記録していることだ。
一方で、「医療健康」は、22年第1Qで、20年同期から145件(97%)増加し、3年続けて第2位を維持している。また、20年には最も件数が多かった「企業向けサービス」は、増減を繰り返しながらも、22年には20年から36件(22%)の増加を記録し、依然として第3位に位置している。総じて、直近3年間の第1Qを見ると、上記3業界が上位3位に並ぶ傾向が依然として続いている。
上位3業界以外に目を向けると、「スマートハードウエア」「自動車交通」「伝統製造」が、20年から一貫して資金調達件数を増やし続けている。特に「自動車交通」は22年に20年対比で49件(132%)の上昇を記録。一方で、「金融」「教育」は、20年から継続して減少傾向にあり、とりわけ「教育」は22年に20年対比で45件(69%)もの大幅減少に陥っている。
最後に「メタバース」は特に着目したい業界だ。21年が「メタバース元年」と呼ばれ、同年から資金調達件数が増え、中国スタートアップの新しい業界として認知が広がっている。21年の第1Qで6件だった件数が、22年には19件と増えているように、今後も資金調達(投資)件数は急増していくと考えられる。
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