直近1週間(今回は2022年3月14~20日)の中国スタートアップ投資情報からは、「医療健康」分野に投資が集中していることが分かる。今週の特徴としては、「スマートハードウエア」分野の投資の増加が挙げられる。
投資件数および投資金額は少なめに
直近1週間(2022年3月14~20日)の中国企業による資金調達件数は計81件で、推定総額約119億8000万元(約2276億2000万円)の資金調達が行われた。直近1週間と週平均に換算した直近1年(21年3月21日~22年3月20日)のデータを比較すると、直近1週間の投資件数は40.8件減少し、率にして33.5%と大幅に減った。一方で投資1件当たりの投資額は4422万元(約8億4018万円)、率にして23%とやはり減少している。従って、直近1週間は直近1年間と比べ、先週と同様に投資件数および投資額ともに少なかったといえる。
直近1週間および直近1年間における各業界の投資件数を見ると、直近1週間で全体的に件数が多かった業界は、多い順に「医療健康」「先進製造」「企業向けサービス」で、それぞれ計17件、17件、15件となった。これら上位3位の業界の投資件数の合計は49件で、全体の60.5%と大きな割合を占めた。直近1年間と同様に、この3つは要注目の業界だといえる。
また、直近1年間の投資と比べ、直近1週間で唯一目立って投資件数が増えた業界が、「スマートハードウエア」だ。「スマートハードウエア」は直近1年間では5位であったところ直近1週間では4位となっており、8.3件から11件と2.7件(率にして32.5%)、投資件数が多かった。
「スマートハードウエア」の領域で資金を調達した企業をリストアップして、その中身を見てみる。
まず、スマートハードウエアの中のサブ業界を見てみると、特に「ロボット」が11件中4件と最も多く、その次に多かったのは「AR/VRデバイス」の2件だった。その他の分野は投資先が分散していることから、投資件数と投資額の両方から見ても、スマートハードウエアの中でロボットとAR/VRデバイスに投資が集中したといえる。次にステージを見てみると、シードステージおよびアーリーステージでの投資が11件中6件と半数以上を占め、初期の成長段階にある企業への投資が多かったこともうかがえる。
では次に、各業界への投資額を見てみる。
「スマートハードウエア」は投資額でも大きく増加
直近1週間の投資額はこの週も上位3業界に集中し、額が多い順に「医療健康」「企業向けサービス」「スマートハードウエア」で、それぞれ42億1000万元(約798億円)、24億5000万元(約465億5000万円)、21億5000万元(約408億5000万円)となった。上位3業界の投資額は合計して88億1000万元(約1673億9000万円)となり、全体の約7割と大きな割合を占めた。ここで注目すべきは、「スマートハードウエア」が業界ランキングで3位にランクインしていることだ。前述の投資件数と同じように投資額においても大きく増加している。
上位3業界の投資額の増減を直近1年間の週平均と比較してみると、「医療健康」は投資額が5億元(約95億円)少ないものの、全体比では20.2%から35.1%と、14.9ポイント増えていて、その存在感は大きい。一方、「企業向けサービス」は、投資額はほぼ変わらず、全体比では10.6%から20.4%と、9.8ポイント増えた。「スマートハードウエア」も9億8000万元(約186億2000万円)増え、全体比では5.1%から18%と、12.9ポイント増えている。これらからは、全体比で見て上位3業界に投資額が集中し、その中で特に「医療健康」の領域に投資が集まったことが読み取れる。
「医療健康」の領域で資金を調達した企業をリストアップして、中身を見てみる。
まずサブ業界を見てみると、「バイオ技術と製薬」の投資件数が最も多い(11件)。加えて、「医療機器および関連ハードウエア」が4件と次に多くなっており、この2つの領域に投資が集中している。次にステージを見てみると、アーリーステージとシードステージがそれぞれ10件と3件となっており、初期の成長段階にある企業に投資が集まったことも読み取れる。
次に投資ステージの視点でも比較してみる。
直近1週間の投資では、アーリーステージ(シリーズ:Pre-A、A、A+を含む)への投資が最も多く、計39件の投資が行われた。次に多かったのはシードステージへの投資で計17件。その次にミドルステージ(シリーズ:Pre-B、B、B+を含む)の13件、戦略投資の11件、最後にレイターステージ(シリーズ:C以降から上場前まで)は1件のみとなった。
直近1週間を直近1年間と比較すると、直近1週間では、シードステージとアーリーステージが全体に占める割合が大きく、一方でミドルステージとレイターステージは小さい。従って、直近1週間では初期の成長段階にある企業に投資が集まったことが、ここからも分かる。
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