直近1週間(今回は2022年3月7日~13日)の中国スタートアップ投資情報からは、「先進製造」分野に投資が集中していることが分かる。今週の特徴としては「ライフスタイル」分野の投資の増加が挙げられる。

「直近1週間」および「直近1年間(2021年3月14日~22年3月13日)」の週平均における投資件数および投資額の比較。左縦軸目盛り(棒グラフ)では投資件数を、右縦軸目盛り(ひし形マーク)が投資1件当たりの平均投資額を示す(出所/匠新)
「直近1週間」および「直近1年間(2021年3月14日~22年3月13日)」の週平均における投資件数および投資額の比較。左縦軸目盛り(棒グラフ)では投資件数を、右縦軸目盛り(ひし形マーク)が投資1件当たりの平均投資額を示す(出所/匠新)

投資件数および金額は若干少なめ

 直近1週間(2022年3月7日~13日)の中国企業による資金調達件数は計105件で、推定総額約138億5千万元(約2574億7150万円)の資金調達が行われた。直近1週間と週平均に換算した直近1年間(21年3月14日~22年3月13日)のデータを比較すると、直近1週間の投資件数は17.5件減少し、率にして14.3%と大幅に減った。一方で投資1件当たりの投資額では、6170万元(約11億4700万円)減少し、率にして32%とさらに大幅な減少を記録している。従って、直近1週間は直近1年間の平均と比べ、投資件数および投資額ともに少なかったといえる。

投資件数では「先進製造」に大きく集中

直近1週間および直近1年間における各業界における投資件数
直近1週間および直近1年間における各業界における投資件数 棒グラフ(青)は、直近1週間の投資件数を、棒グラフ(黄)は直近1年間の週平均の投資件数を示す(出所/匠新)
棒グラフ(青)は、直近1週間の投資件数を、棒グラフ(黄)は直近1年間の週平均の投資件数を示す(出所/匠新)

 直近1週間および直近1年間における各業界の投資件数を見ると、直近1週間で全体的に件数が多かった業界は「先進製造」「医療健康」「企業向けサービス」で、それぞれ計32件、15件、15件となった。これら上位3位の業界の投資件数の合計は62件で、全体の59%と大きな割合を占めた。直近1年間でも同様で、この3つは要注目の業界だといえる。

 また、直近1年間の投資と比べ、直近1週間で目立って投資件数が増えた業界を見てみると、まず「先進製造」があり、その次に「ライフスタイル」が浮かび上がった。「先進製造」は直近1年間では22.5件で2位だが、直近1週間では32件と9.5件(率にして42%)増えて1位であり、特に目立って件数が増えた業界となった。「先進製造」については後ほど詳しく解説する。「ライフスタイル」も直近1年間の平均4.9件から、直近1週間では8件と3.1件(率にして63%)も大きく増えた。

 「ライフスタイル」の領域で資金を調達した企業をリストアップして、その中身を見てみる。

直近1週間で投資を受けた「ライフスタイル」業界の主なスタートアップの一覧
直近1週間で投資を受けた「ライフスタイル」業界の主なスタートアップの一覧 (出所/匠新)
(出所/匠新)

 まず、ステージを見ると、シードステージおよびアーリーステージでの投資が8件中6件となっており、初期の成長段階にある企業に投資が集まったことが分かる。次に、特に投資が多かったサブ業界を見ると、件数が多い順に「飲食業」で4件、エンターテインメントで2件が挙げられる。

 では次に、各業界への投資額を見てみる。

直近1週間および直近1年間における各業界における投資額
直近1週間および直近1年間における各業界における投資額 横棒グラフ(青)は直近1週間の投資額を、横棒グラフ(黄)は直近1年間の週平均の投資額を示す。カッコ内のパーセントは投資額全体に占める割合を示す(出所/匠新)
横棒グラフ(青)は直近1週間の投資額を、横棒グラフ(黄)は直近1年間の週平均の投資額を示す。カッコ内のパーセントは投資額全体に占める割合を示す(出所/匠新)

「先進製造」の存在感は投資額でも顕著に

 直近1週間の投資額は上位3業界に集中し、額が多い順に「先進製造」「企業向けサービス」「自動車交通」となり、それぞれ46億5000万元(約864億4350万円)、25億2000万元(約468億4680万円)、22億2000万元(約412億6980万円)となった。上位3業界の投資額は合計して93億9000万元(約1745億6010万円)となり、全体の約7割と大きな割合を占めた。

 上位3業界の投資額の増減を直近1年間の週平均と比較してみると、「先進製造」は投資額が2億9000万元(約53億9110万円)少ないものの、全体比では21%から34.9%と、13.9ポイントも増えており、直近での存在感は大きい。一方で、「企業向けサービス」は投資額はほぼ変わらないものの、全体比では10.7%から18.9%と、8.2ポイント増えた。「自動車交通」も投資額は6.1億元(約113億4000万円)減っているが、全体比では12.0%から16.7%と、4.7ポイント増えている。全体的に上位3業界に投資額が集中する傾向にあり、かつ先進製造の領域に特に投資が集まったことが、投資件数と同じように投資金額の面からも明らかになったといえる。

 「先進製造」の領域で資金を調達した企業をリストアップして、中身を見てみよう。

直近1週間で投資を受けた「先進製造」業界の主なスタートアップの一覧
直近1週間で投資を受けた「先進製造」業界の主なスタートアップの一覧 (出所/匠新)
(出所/匠新)

 まず、「芜湖佳納能源」が、14億7000万元(約273億2730万円)と大規模な投資を受けており、「先進製造」業界の投資総額を引っ張っていることが分かる。次にサブ業界に着目すると、最大の投資額があった「新素材」に加え、計32件の投資のうち、「集積回路」が14件、「スマート装置」が5件となっており、この2つの領域に投資が集中していることが分かる。

 次に投資ステージの視点でも比較してみる。

直近1週間および直近1年間におけるステージごとの投資件数比較
直近1週間および直近1年間におけるステージ毎の投資件数比較 横棒グラフ(黄)は直近1年間の週平均の各ステージの投資件数を、横棒グラフ(青)は直近1週間の投資件数を示す(出所/匠新)
横棒グラフ(黄)は直近1年間の週平均の各ステージの投資件数を、横棒グラフ(青)は直近1週間の投資件数を示す(出所/匠新)

 直近1週間の投資では、アーリーステージ(シリーズ:Pre-A、A、A+を含む)への投資が最も多く、計37件の投資が行われた。次に多かったのはシードステージへの投資で計22件となっている。その次にミドルステージ(シリーズ:Pre-B、B、B+を含む)の19件、戦略投資の16件、最後にレイターステージ(シリーズ:C以降から上場前まで)は2件のみとなった。

 直近1週間を直近1年間と比較すると、直近1週間では、シードステージとアーリーステージが全体に占める割合が大きくなり、一方でミドルステージとレイターステージが占める割合は小さくなった。従って、直近1週間では初期の成長段階にある企業に投資が集まったと見てとれる。

 次にスタートアップの資金調達額ランキングを見てみる。

直近1週間におけるスタートアップの資金調達額トップ10
直近1週間におけるスタートアップの資金調達額トップ10 資金調達額が公開されている投資情報から、直近1週間で投資を受けたスタートアップを投資額でランキングした(出所/匠新)
資金調達額が公開されている投資情報から、直近1週間で投資を受けたスタートアップを投資額でランキングした(出所/匠新)

この記事は会員限定(無料)です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
この記事をいいね!する