第1回では中国スタートアップ投資の全体像について取り上げた。第2回からは直近1週間(今回は2022年2月28日~3月6日)の中国スタートアップ投資情報を整理し、分析する。直近1週間の最新データから分かる中国スタートアップの今とは?

「直近1週間」および「直近1年間(2021年3月7日~22年3月6日)の週平均」における投資件数および投資額の比較。左縦軸目盛り(棒グラフ)では投資件数を、右縦軸目盛り(ひし形マーク)が投資1件当たりの平均投資額を示す(出所/匠新)
「直近1週間」および「直近1年間(2021年3月7日~22年3月6日)の週平均」における投資件数および投資額の比較。左縦軸目盛り(棒グラフ)では投資件数を、右縦軸目盛り(ひし形マーク)が投資1件当たりの平均投資額を示す(出所/匠新)

直近1週間は比較的小規模な投資が多かった

 直近1週間(2022年2月28日~3月6日)の中国企業による資金調達件数は計117件で、推定投資総額約174億1000万元(約3186億円)の資金調達が行われた。直近1週間と週平均に換算した直近1年(21年3月7日~22年3月6日)のデータを比較すると、直近1週間の投資件数は6件減少とやや減少しているが相対的にはほぼ変わらず、一方で投資1件当たりの投資額は6432万元(約11億7700万円)、率にして30.1%と大きく減少していることから、直近1週間は、直近1年と比較し、全体的に小規模な投資が多くなったといえる。

投資件数上位3社の業界は1年間の平均と変わらず

■直近1週間および直近1年間における各業界における投資件数
■直近1週間および直近1年間における各業界における投資件数 棒グラフ(青)は直近1週間の投資件数を、棒グラフ(黄)は直近1年間の週平均の投資件数を示す(出所/匠新)
棒グラフ(青)は直近1週間の投資件数を、棒グラフ(黄)は直近1年間の週平均の投資件数を示す(出所/匠新)

 直近1週間および直近1年間における各業界の投資件数を見ると、直近1週間で最も件数が多かった業界は「医療健康」「先進製造」「企業向けサービス」で、それぞれ計25件、23件、18件となった。上位3位の業界の投資件数の合計は66件で、全体の62.3%と大きな割合を占めた。この3つの業界は、直近1年の投資傾向と同様に投資が集まった業界となっている。

 また、直近1年間の投資と比べ、目立って投資件数が増えた業界を見てみると、「自動車交通」「スマートハードウエア」「物流」「農業」が浮かび上がる。直近1週間ではこの4業界も注目したい領域だ。

 では次に、件数から視点を変えて、各業界への投資額を見てみる。

■直近1週間および直近1年間における各業界における投資額
■直近1週間および直近1年間における各業界における投資額 横棒グラフ(青)は直近1週間の投資額を、横棒グラフ(黄)は直近1年間の週平均の投資額を示す。カッコ内のパーセントは投資額全体に占める割合を示す(出所/匠新)
横棒グラフ(青)は直近1週間の投資額を、横棒グラフ(黄)は直近1年間の週平均の投資額を示す。カッコ内のパーセントは投資額全体に占める割合を示す(出所/匠新)

「自動車交通」への投資額が顕著に増加

 投資額は上位3業界に集中し、額が多い順に「自動車交通」「医療健康」「先進製造」となり、それぞれ48億8000万元(約893億円)、34億1000万元(約624億円)、27億1000万元(約496億円)となった。上位3業界の投資額は合計して110億元(約2013億円)で、全体の約7割と大きな割合を占めた。

 上位3業界の投資額の増減を直近1年間の週平均と比較して見ると、「自動車交通」は投資額が15.6億元(約285億5000万円)多く、全体比では12.8%から31.4%と18.6ポイント増加と顕著に増加している。一方で、「医療健康」と「先進製造」はそれぞれ投資額が19.5億元(約356億8500万円)と24.9億元(約455億6700万円)それぞれ減少しており、先週は「自動車交通」の領域に、投資がより集まったといえる。

 「自動車交通」の領域で資金を調達した企業をリストアップして、中身を見てみよう。

直近1週間で投資を受けた「自動車交通」業界の主なスタートアップの一覧
直近1週間で投資を受けた「自動車交通」業界の主なスタートアップの一覧 (出所/匠新)
(出所/匠新)

 「欣旺達電動」と「嬴徹科技」がそれぞれ24億3000万元(約444億7000万円)と12億2000万元(約223億2600万円)と巨額の投資を受けており、これらが「自動車交通」業界の投資総額を引っ張っていることが分かる。この2社に関しては、後述する。

 次に投資ステージの視点でも比較してみる。

直近1週間および直近1年間における投資のステージ毎の投資件数比較
直近1週間および直近1年間における投資のステージ毎の投資件数比較 横棒グラフ(黄)は直近1年間の週平均の各ステージの投資件数を、横棒グラフ(青)は直近1週間の投資件数を示す(出所/匠新)
横棒グラフ(黄)は直近1年間の週平均の各ステージの投資件数を、横棒グラフ(青)は直近1週間の投資件数を示す(出所/匠新)

 直近1週間の投資では、アーリーステージ(シリーズ:Pre-A、A、A+を含む)への投資が最も多く、計53件の投資が行われた。次に多かったのはシードステージ(シリーズ:シード、エンジェル)の22件とミドルステージ(シリーズ:Pre-B、B、B+を含む)の20件、戦略投資の20件と肩を並べた。そして最後に、レイターステージ(シリーズ:C以降から上場前まで)は投資件数が少なく、2件のみであった。

 直近1週間と直近1年間を比較すると、直近1週間ではシードステージとアーリーステージが増加しており、その他は件数が減少していることが分かる。スタートアップとして初期の成長段階にある企業に投資が集まったことが、直近1週間の特徴だといえる。前述したように、比較的小規模な投資が多かった理由がここにある。

 次にスタートアップの資金調達額ランキングを見てみる。

直近1週間におけるスタートアップの資金調達額トップ10
直近1週間におけるスタートアップの資金調達額トップ10 資金調達達額が公開されている投資情報から、直近1週間で投資を受けたスタートアップを投資額でランキングした(出所/匠新)
資金調達達額が公開されている投資情報から、直近1週間で投資を受けたスタートアップを投資額でランキングした(出所/匠新)

この記事は会員限定(無料)です。

1
この記事をいいね!する