
1987年生まれの「スーパードライ」は、日本のヒット商品史にどのようなインパクトをもたらしてきたのか。同じ年の月刊誌「日経トレンディ」の記事を見ながら、ロングセラーブランドの栄枯盛衰を振り返る。アドバイザリーボードの音部大輔氏に、リニューアル成功のカギも聞いた。

「スーパードライ」とはどのようなブランドだったのか、フルリニューアルの核心に入る前に、月刊誌『日経トレンディ』の記事とともに振り返ってみたい。
同誌が毎年12月号で掲載する「ヒット商品ベスト30」という恒例の特集がある。スーパードライは発売時の1987年、13位に入った。ちなみに日経トレンディもこの年創刊。スーパードライとは同い年である。
国際ジャーナリスト落合信彦氏の写真などとともに、当時の記事にはこうある。「今年3月に売り出した生ビールだが、年内には1000万ケースに届く勢いだ。100万ケースを売ればヒットといわれるビール業界だけに、この数字は意味がある。(中略)スーパードライのヒットが貢献し、アサヒビール全体では、1~8月の売り上げは前年比28%増。シェアは当初目標の11%台後半を上回り、13%台も見込める勢いだ」。その後のスーパードライの躍進を考えると、13位はやや低い印象だろう。この年のインパクトとしては、低迷していたアサヒビールのシェアを上向かせた「強力な新ブランド」という程度の位置づけだった。
スーパードライはその9年後、96年12月号のヒット商品ベスト30に再登場する。新商品や新サービスを中心に取り上げる特集で、既存ブランドが再びランクインするのは異例だ。当時の記事では、「この7月、アサヒスーパードライは前年比37%増の1910万ケースを販売。キリンラガーに240万ケースの差をつけ、ついにビールのトップ銘柄になった。(中略)43年ぶりのトップ交代は、世代交代を印象付けている」とある。
アサヒは92年から「鮮度向上活動」を開始。ビールのフレッシュさを訴求し、製造から工場出荷までの日数をひたすら短縮し続けてきた。その成果が実り、98年についにビール市場で年間シェア1位となる。ブランドのみならず、ビール全体でのシェア逆転だ。
日経トレンディでは20周年に当たる2007年12月号で、「ヒット商品グランドチャンピオン」という特集を行った。過去20年にランクインしたヒット商品すべて(計590商品・1987年のランキングのみ20商品のため)の中から、マーケターや商品企画、研究担当など現役のビジネスパーソンに票を投じてもらう企画だ。スーパードライは「携帯電話」「インターネット」「ユニクロ」に次ぐ4位となった(5位は「プリウス」)。「一票を投じた理由」をいくつか紹介しよう(回答者の社名は伏せて業界で記した)。
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