
SDGs(持続可能な開発目標)重視の流れが加速している中で、リサイクル&アップサイクルに、企業としてどう取り組むか──。特集「リサイクル&アップサイクルへの挑戦」の最終回は、さまざまな業種のユニークな取り組みをダイジェストで紹介する。
ペーパル(奈良市)が開発した紙素材「kome-kami(コメカミ)」は、廃棄米を活用した商品だ。食用に適さない古米や、企業や自治体が災害用に備蓄して賞味期限が切れた米、メーカーなどで発生する破砕米、一般の家庭や流通段階で食用では使えない米などから作る。同社は1890年に創業して以来、紙の販売を通じて日本の紙文化を支えているという自負があり、食品廃棄の課題を解決したかったという。
米とパルプを混ぜて製造するが、米をいかに細かく粉砕するかに苦労したという。粒が大きいと製造機械に通らないからだ。しかし、なかなか小さく粉砕できず、多くの粉砕工場に相談してようやく製品化にこぎつけたという。2021年4月にクラウドファンディング「Makuake」で、kome-kamiを使ったノートや名刺を販売したところ好調だったという。売り上げの1%をフードバンク団体に寄付しており、食品廃棄の課題を解決しようと動いている。
企業や自治体での活用を広げ、パンフレットや封筒、名刺や紙袋、ノベルティーグッズとしてのノートといった市場を狙う。紙単体の販売に加え、印刷・加工会社などの導入も狙う。
ペーパルはこれまで薄い紙素材としてkome-kamiを販売していたが、化粧箱などパッケージとして使いたいという要望を受け、パッケージ用途を狙った厚い紙素材の新商品「kome-kamiカード紙」を22年1月から販売している。化粧箱のほかに菓子の外箱などに使う用途を想定している。米を思わせるナチュラルな色味と独特な風合いが特徴という。パッケージにkome-kamiを使用すれば脱プラスチックにつながる。SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みの一環にもなりそうだ。
オリジナルノートを製造・販売している大栗紙工(大阪市)は、kome-kamiを使用した商品を22年1月から展開中。表紙にkome-kamiカード紙、中紙にkome-kamiを活用し、中紙を切り取ればメッセージカードとしても使えるノートパッド「Sustainable Pad(サステナブルパッド)」だ。「未来のために資源を循環させる」をテーマにした大栗紙工の新ブランド「MAARU(まある)」の第1弾。表紙にはさまざまな環境・社会問題をモチーフに、日常使いに自然となじむデザインにした。教育機関や企業などのノベルティー用に名入れも可能という。
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