
現代の日本では食品ロスが大きな社会問題となっている。中でもパンはロス率の高い食品の一つだ。廃棄されるパンを原料にしたビール造りが各地で広がっている。
ビールの歴史は紀元前まで遡る。古代エジプトでは、ピラミッドの建設に従事した労働者にビールが報酬として支払われた。当時のビールは麦芽ではなくパンを原料にしていたという。時は下って、現代の日本では食品ロスが大きな社会問題となっている。中でもパンはロス率の高い食品の一つだ(注)。クラフトビールの世界に参入するチャレンジャーが増え、各地の小さなブルワリーがそれぞれ理念を掲げて個性を競い合う中、食品ロスという問題に向き合い、大量に廃棄されるパンを原料にしたビール造りに取り組む動きが広がっている。
カフェ・カンパニー(東京・渋谷)、リバネス(東京・新宿)、CRUST JAPAN(大阪市)の3社は、食品ロスのパンを活用したアップサイクルビール「パンからつくったペールエール」を共同開発し、2021年11月1日に発売した。原材料にはブーランジェリーエリックカイザージャポン(東京・港)が運営するブーランジェリー「MAISON KAYSER」でロスとなってしまったパンを使用した。
「今後はノンアルコール飲料やケーキミックスなどさまざまなジャンルのアップサイクル商品を展開していきたい」と、CRUST JAPANのゼネラルマネージャー吉田紘規氏は言う。ビールにはパンだけでなく白米も原材料として利用できるし、ノンアルコール飲料の場合は野菜や果物なども原料になる。コーヒーかすやカカオの殻、お茶の葉などさまざまな素材がアップサイクルに利用できる。「30年までに世界の食品ロスの1%を削減するのが目標だ」(吉田氏)
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