※日経エンタテインメント! 2023年3月号の記事を再構成
SKY-HI率いるBMSGが放つ2つ目の男性ダンス&ボーカルグループ「MAZZEL(マーゼル)」の誕生までを追うオーディションドキュメンタリー番組「MISSIONx2(ミッション・ミッション、以下Mx2)」が、BMSG YouTube公式チャンネルで配信中だ。1話からメンバー8人の顔が映ったが、1月の配信ではまずBMSGにトレーニーとして所属していたRANと結果的には別の道を選んだREIKO、さらに電撃的に、非公開トレーニーだったSEITOとKAIRYUの存在が明かされ、4人の物語が幕を開けた。まずは「THE FIRST」の3次審査までいたKAIRYUの話から。
番組でも話していますが、「THE FIRST」が終了した後、KAIRYUが会社宛てにメールを送ってくれました。スキルの足りなかったダンスにも意欲的に取り組んでいて基礎練習の動画も送ってくれ、「これはひょっとしたら何かになってくれる気がする」と感じたんです。当時、2つ目のグループを作りたくてトレーニーを募集し始めた頃でした。
「KAIRYU君もトレーニーとして来てくれたらいいな」と思っていたものの、「THE FIRST」ではこちらの都合で候補にしなかった経緯があるので、あまり厚顔無恥に「来てください」とお願いはできないじゃないですか。でも、本人が連絡をくれたということもあり、BE:FIRSTのデビュー前くらいに1度電話して、2つ目のグループの構想を話しました。「仮にデビューメンバーに選んだとしても少なくとも半年は先だし、1年くらい待たせるかもしれない。それでも一緒にやってくれますか」と。次の瞬間には関西から東京に出てきていましたね(笑)。
「THE FIRST」時点では、彼はBE:FIRSTには間に合わないと思ったし、「Mx2」を始めてからもそれは感じました。だから、「Mx2」はKAIRYUの番組でもあると思います。今は当然、当時よりさらに大きく成長していますし、歌っても本当にマイクの乗りが抜群に良いんです。当時の彼を知っている視聴者の方には、興味深く見ていただけると思います。
そしてもう1人の“隠された”トレーニーがSEITOだ。事務所に所属し、ボーカルグループのメンバーとして活動していたSEITOは「THE FIRST」への応募こそかなわなかったが、「Mx2」で満を持しての参加となり、MAZZELとしてのデビューをつかんだ。
2017年くらいから「自分はまだ何もできていない。自分が会社を立ち上げてオーディションをするしかない」と感じた、そのきっかけとなった1人がSEITOでした。SEITOは音楽が好きで、やりたいことがいろいろあって、ボーイズグループもそのうちの1つだったんです。でも、いざグループのメンバーとなったら、彼が思うような活動ができないことが多分にあった。それで相談を受けたり、悩みを聞いたりしていたんですが、SEITOが抱えていたものはかつての自分が感じていたことと近く、自分事だと思ったんです。“神格化”を避けて描いた“変化”
一般的なオーディション番組は選ばれる過程を追い、そのなかで参加者の努力や葛藤などを見せて視聴者の共感を得ていく構成が多く、初回にデビューメンバーが明かされることは異例だ。「Mx2」の場合は、そこから始まり、ドキュメンタリー形式で彼らの足跡を時系列で伝えていく。この構成にした意図は、「THE FIRST」で感じたあることにあった。
オーディション番組って、見ているうちに編集などによって最終メンバーが何となく予想できるものが多いですよね。でも、「THE FIRST」ではあるがままの様子を見せたつもりですし、参加者の映り方に差はつけなかったつもりです。とはいえ、こちらは厳正に審査するけれども、少なからず「どうしたら見る人の興味を引けるか」「どうエンタテインするか」の視点も大事にしていました。
今回意図したのは、それすらも抜いた、エンタテインしようとしていない本当のドキュメンタリーであること。「THE FIRST」をやってみて感じたのは、ありのままに見せる方法にも功罪があるということでした。例えば、デビューメンバーに選ばれなかった人の見せ場や、人として素敵な面を映すことで、選ばれなかったことへのざわめきが大きくなってしまう。そのざわめきは番組としては必ずしも悪いだけではありませんが、やっぱり選ぶ側の人間として思うところも少しありました。
1998年のフランスワールドカップで代表メンバーに選ばれなかったキングカズ(三浦知良)を、僕はいまだに神格化しているところがあると思うんです。そうしたキングカズ現象でもありますが、「THE FIRST」の最終審査で選ばれなかったRANとREIKOも、ある種の神格化をされがちだと感じるんです。それには良し悪しの両面があります。その「ほつれ」は、その人自身をさらに美しく見せるけれども、まだ若い彼らはこれからどんどん人として変わっていく時期です。だから「Mx2」は、あらかじめ残るメンバーが最初に分かっているところから始め、その意識の変遷が伝わるこの形式がいい気がしました。