※日経エンタテインメント! 2023年1月号の記事を再構成
2022年11月22日、BMSGは記者会見でBE:FIRSTに続く2つめのダンス&ボーカルグループ「MAZZEL(マーゼル)」を発表した。8人のメンバーのうち、RANはオーディション「THE FIRST」に参加し、その後、トレーニーとして経験を積んできたが、それぞれの顔ぶれも気になるところだ。前編でSKY-HIはグループ名が「Maze」(迷路)と「Zeal」(情熱など)の組み合わせだと語ったが、彼らもまた人生の「迷路」をさまよう人たちだったのか。そして、このグループのネーミングには、SKY-HI自身にとっての「迷路」の存在も感じられる。
生きていれば誰しもがそれぞれのストーリーを持っていると思います。だから、このプロジェクトもまた、参加者それぞれの「迷路の抜け道」を探すストーリーの一歩になると思います。BMSGとしても、「ただ何も考えずに、考えたり行動したりを放棄することを『幸せ』と思おうとする」という考え方で満足するのではなく、本質的な「幸せ」を求めて手に入れたいと思う仲間たちに集まってほしいと思っているので、彼らがどうやってその道を探すのか、その過程は大事にしたところです。
迷路にあったのは自分も同じで、この1年ほど「MAZZEL」の結成プロジェクトは、常に悩みがつきまとう事案でした。いつ出すべきか、何を出すべきか、どう進めるべきかなど、悩むことはたくさんありましたね。なかでも1番重要だったのは、強烈な成功体験としてあるBE:FIRSTとは、全く違うことをやるべきだということ。自分自身にとって必要だった「迷路の抜け道」はそこでした。
型だけなぞっても劣化版ができるだけ
――BE:FIRSTでは、オーディションから結成・誕生までをほぼリアルタイムで放送・配信で見せながら、視聴者の感情移入や期待を膨らませてきたことが、デビュー前からのファン獲得にもつながった。一方で今回は、デビューメンバーを発表してから、彼らの誕生までの道のりを見せていくという、時系列としては真逆の手法だ。
何をやるにしてもこれまで「必然性」や「意味あること」に対して真摯な姿勢を貫いてきたSKY-HIだからこそ、そこには大きな理由があるのだろう。
自分にとっての基本として、このプロジェクトは「THE FIRST」やBE:FIRSTと違うことをしないと、まず意味がない。そもそもBE:FIRSTというグループは、既存の芸能のシステムでは才能が生かせず、そこにはまれない方々が集まって生まれています。それにもかかわらず、自分が「THE FIRST」のシステムなりBE:FIRSTのメンバー構成を1つの「型」としてしまうのは本末転倒で、1番危険なこと。だから、何から何まで違わなくてはいけなかったんです。
しかも、「THE FIRST」は僕自身が合宿で参加メンバーと寝食をともにするという意味でもフルコミットしたプロジェクト。あの時期は、僕も「THE FIRST」というプロジェクトのことしか考えていませんでした。今回は、(会社の規模や状況も変わり)全く同じことをするわけではないのに、その型だけなぞっても劣化版ができるだけというか、失敗するという未来しか見えなかったですね。
では今回どうするかとなったとき、割と最初からゴール(結果)を初めに提示したうえでのドキュメンタリー形式がふさわしいという考えはありました。メンバー決定までの様子もYouTubeで配信していく予定です。ぜひ彼らが最初の「迷路」を抜けるまでをご覧ください。恐らく、なぜこの形式がベストだったかはご覧いただければとも思うのですが。プロジェクトの真髄というか1つのクライマックスには、初回から触れられると思います。

『マネジメントのはなし。』 SKY-HI・著
社長・SKY-HIの挑戦をたどれる“ドキュメンタリー本”
課題意識を持つビジネスパーソンへのヒントも満載な1冊
今、音楽業界で最も勢いのあるマネジメント/レーベル「BMSG」。そのCEOであり、アーティストとしても第一線で活躍するSKY-HIの『日経エンタテインメント!』での連載が待望の書籍化!
オーディション「THE FIRST」がムーブメントを起こし、そこから誕生したBE:FIRSTはデビュー1年で紅白歌合戦に出場。2020年9月にたった数人で始まったスタートアップ企業が、なぜここまで急激に成長できたのか。本書は、その時々でSKY-HIが抱える課題や挑戦にフォーカスしたドキュメンタリー的な1冊。「課題解決」「人材育成」「スキルアップ」「コミュニケーション」など、ビジネスのヒントの宝庫ともなっている。
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