※日経エンタテインメント! 2022年12月号の記事を再構成
設立2周年となる9月17日、18日、BMSGは初の大規模自社興行として「BMSG FES‘22」を開催。所属する15人全員がステージに上がるフェスは、BMSGおよびアーティストの過去・現在・未来へのストーリーを強く感じさせる強烈なメッセージを打ち出し、アーティストもまたその意義に対して全身全霊を込めてステージで表現してみせた。なぜあれほどまでに、内容の濃い場が作れたのか。
――SKY-HIはBMSG設立をさかのぼること5年ほど前から、フェスのイメージをアイデアとして温めており、設立からほどなく実現に動いたという。その意図の核にあるのは、会社として世間にプレゼンスを示すことや単なるファンサービスとしてというよりも、「所属アーティストの未来のため」であったようだ。
BMSG FESをやりたかった背景には2つありました。設立3年目を迎えて拡大している今は、BMSGがBMSGとして存在する意味、アーティストがBMSGに所属する必然性が、非常に根強く色濃く出ている段階だということ。それは新しい会社だからこその状態であると同時に、とても尊い状態です。そのタイミングでフェスを実現したかったのが1つ。もう1つは、アーティストが音楽活動に飽きることなく、様々な新しい夢を見られる環境を用意したかったからです。
音楽を仕事にすると、1年で数回シングルを出してプロモーションで動き、レコーディングをし、アルバムをリリースしてツアーを回り…と、ルーティン化してしまいがちなんです。活動に新鮮味のある最初の1年、2年はまだいいのですが、「仕事」と捉えるようになるとルーティン化し、いくら音楽が好きな人でも、楽しくなくなってしまうことがある。そうならないためにも、将来的に遊べるバッファ(ゆとり、余裕)のあるものを作っておきたいとずっと思っていました。例えば、グループやソロの垣根を越えたユニットで曲作りをしてステージに上がる機会を設けたり、という有機的なコラボレーションがたくさん生まれてほしいなとか。アーティストそれぞれがやりたいことをカジュアルにできる場があると絶対いいですよね。BMSGを続けていくからには、今後も毎年新しい物語がどんどん生まれていくと思うんです。それをきちんと形として作り上げたうえで、演出の転換もない3時間ほどの1つの大きな物語としてライブを作れたら、すごく面白いんじゃないかとずっと考えていました。さらにそれが、楽しく音楽で活動することにつながればと強く願っています。
あとは、自分はマーベル映画や『アベンジャーズ』シリーズが好きなんですが、BMSGには同じような感覚の人が集まっていて、“全員集合”するアベンジャーズ感が好き。単純にそこが大きいのかなという気はしていますね(笑)。ただ、そういう場って作ろうとしないと作れないものなんです。
さらに、アーティスト自身が持つあまたの魅力や人間性の中には、ケミ(ケミストリー)のような他者との関係性によって初めて外に出る部分もいっぱいあると思うんです。例えばBMSG FESで言えば、『New Chapter』でBE:FIRSTで最年少のRYUHEIがグループ外の同世代のメンバーと花道を歩いたり、『ナナイロホリデー』でSOTA(BE:FIRST)とRAN(トレーニー。23年に「MAZZEL」のメンバーとしてデビュー予定)がダンスコラボを見せたりとか。新たなアーティストが増えれば、『New Chapter』のような大所帯でのコラボレートもまた違ったものができると思いますし、今後、「THE FIRST」を知らない多くの人がBMSG所属のアーティストを応援してくれるようになったときにこそ「THE FIRST」の物語を生かしたコラボステージを作れば、分かる人には分かる、伝説のコラボができるかもしれません。
見ている方にとっても、特定のアーティストだけでなく全体を応援していたほうがいっぱいのワクワクがあるし、そういう場を作るのは自分も楽しい。今回のフェスでも観客席のワクワクが本当にすごかったし、自分も「これだ!」という確信を得ました。
フェスの会場に富士急ハイランドを選んだのは…
――会場に選んだのは、富士急ハイランドのコニファーフォレスト。過去にもここでライブを行ったことのあるSKY-HIだが、同規模の会場が数多くあるなか、自身が率いるBMSGでここを選んだのはなぜか。
富士山が見えるとかもあるんですが(笑)。真面目な話、いくつか理由があります。1番はロケーションがエモーショナルなこと。コニファーフォレストは、引きで撮影したときを筆頭に、どこを切り取っても絵面の良さが秀逸なのです。
出演者全員が泊まり込みで行かなくてはいけない立地も重要でした。今回はMV(ミュージックビデオ)の撮影もあったので3泊4日で行ったのですが、初日を迎える前に2泊していると、全員のフェスへの気持ちの入れ込み方が大きく違ってきますし、それは必要なことでした。当然、社運を懸けた興行ですし、アーティストそれぞれにとっても人生を懸けたステージではありますが、その「懸かっている」ことをみんなが感じやすい環境になったのは間違いないと思います。
ただ、野外フェスを初めて自社興行でやるがゆえの苦労も多かったです。
(次回に続く)

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社長・SKY-HIの挑戦をたどれる“ドキュメンタリー本”
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今、音楽業界で最も勢いのあるマネジメント/レーベル「BMSG」。そのCEOであり、アーティストとしても第一線で活躍するSKY-HIの『日経エンタテインメント!』での連載が待望の書籍化!
オーディション「THE FIRST」がムーブメントを起こし、そこから誕生したBE:FIRSTはデビュー1年で紅白歌合戦に出場。2020年9月にたった数人で始まったスタートアップ企業が、なぜここまで急激に成長できたのか。本書は、その時々でSKY-HIが抱える課題や挑戦にフォーカスしたドキュメンタリー的な1冊。「課題解決」「人材育成」「スキルアップ」「コミュニケーション」など、ビジネスのヒントの宝庫ともなっている。
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