BMSGは初夏から大々的な広告クリエイティブを展開し、「新章突入」をアピール。9月17日、18日に開催された「BMSG FES ’22」では、所属全員からなる「BMSG ALLSTARS」での新曲『New Chapter』も発表し、「新たなフェーズの始まり」を強く印象づけた。フェス前に「新章とは何か?」が語られることはなく、何か大きなプロジェクトの発表があると予想した人も少なくなかったろうが、「BMSG FES ’22」ではそれ以上に次フェーズに対する高揚感や期待感が高まったのではないだろうか。そもそもなぜSKY-HIは「新章突入」を掲げたのか、改めて聞いてみた。

(写真/上野裕二 ヘアメイク/椎津 恵)
(写真/上野裕二 ヘアメイク/椎津 恵)

 BMSG全体の意識としてスローガンが1つあったほうが次のフェーズに進みやすいということが絶対にありました。特にアーティスト稼業は、レコーディングやリリース、ライブツアーなどの全ての活動が地続きなこともあり、同じグループでもメンバーによって意識の差が出てしまいやすいんです。例えばデビュー1年のBE:FIRSTにしても、デビューを「ついこの前」と感じる人もいれば「すごく昔」と感じる人もいると思うんです。そうした意識のズレが起きると、今こそそんな気配はありませんが、いつかチームワークにも影響が出てしまう。ただ、他人同士が意識を共有していくことって、限界があるんですよね。

 多かれ少なかれほぼ全てのグループにその意識のズレというのは存在していて、その時どうするかというと、みんな諦めながらやっている。諦めるといってもネガティブな意味ではないことも多く、そういうものだと受け入れながら進んでいくわけです。その諦めを解消する方法はグループ外に立つ第三者のプロデューサーがマネジメントするべきことだと思います。そのために必要なことはいろいろとありますが、今回の場合は1つ全員共通で分かりやすい「新章突入」という旗を立てることでした。

 今は、全員にそれが必要な段階だと思うんです。昨年デビューのBE:FIRSTやトレーニーはもちろんのこと、ソロアーティストたちもまだ若手なので、そういう分かりやすいスイッチは絶対あった方が良いと思います。自分が発する言葉が彼らに影響を与えることを僕は慎重に考えないといけないし、それが彼らの活動にプラスになったほうがいい。その中で今年のフェーズだと「新章突入」という言葉が1番分かりやすかったんじゃないかと思います。

中身のある「ムーブメント」を作るための大事な年へ

――共通意識としての「新章」はおそらくBMSG全員にとっての1つの旗でもありながら、アーティスト個々の課題にもつながっていくと思われる。一方で、彼らを率いる立場としてSKY-HI自身が「新章」に求めるのは、実のある上昇であり、アーティストそれぞれの「今」に対する責任感と「今」を更新し続けていくことだと語る。

 スタートがいいものって多くないなかで、BMSGはいいスタートを切れました。これはいいことに違いないんですが、立ち上げからビジョンとして掲げている「ブームがムーブメントになってカルチャーになる」ことの「ムーブメント」の部分をしっかりやらないといけないなと考えています。

 「今、調子いいね」と世の中に感じてもらえるのって、上っているときなんです。上って、上って、上っていくと踊り場が来る。踊り場が来れば、ちょっとやそっとでは(存在が)揺るがない状況なんですが、まずはそこまで走らないといけない。でも勢いだけで踊り場を目指すのもよくないと思うんです。勢いだけで行ってしまうと何か起きたときに簡単に崩れてしまうから、絶対に実のあるもの、実のある集団にしていかないといけない。

 そのためには、特にBE:FIRSTになるのですが、「一度、新人意識を捨てる」ことが大事だと思います。自分は「初心を忘れず」っていい言葉じゃないと思っているんですよね。

 当たり前だけど結成時と今では背負っている責任も違うし、置かれている環境も違う。持つべき意識の高さは全く別物であるべきなんです。だから「初心を忘れず」では困る。来年彼らとやりたいことはもうすでにたくさんあるし、全員がさらに階段を登るための新章にしなくてはいけない。

 BE:FIRSTは、まずはここまでにつかんだ栄光や成果に対する責任を自覚しないといけない。一方でソロアーティストはこの1年、オーディション「THE FIRST」からの(認知度向上などの)プレゼントもあったと思う。そのプレゼントは呪いにも転じやすいわけですが1年目は仕方ない。ただ、2年目以降にそれを乗り越えられるかは自分次第だと思うんです。自分自身の気の持ちようといったものではなく、作品で更新していくしかない。

 僕自身もBMSG設立から「THE FIRST」までの段階では「AAAの人」という紹介が多かったのですが、今はそう言われなくなってきました。十数年活動してそれなりに名前が知られた肩書すら、短期間で更新できる。今後1年で(Aile The)Shotaにも完全に「THE FIRST」なしで語られる段階になってほしいし、そうなれるように自分たちも頑張らないといけない。まぁShotaに関してはもうほぼ達成できてきているわけですが(笑)。

 そういったことが全員それぞれにある。それが今回の「新章」になると思います。

SKY-HI(日高光啓)
1986年12月12日生まれ、千葉県出身。ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーなど、幅広く活動する。2005年、AAAのメンバーとしてデビューし、同時期からSKY-HIとしてソロ活動を開始。20年にBMSGを設立し、CEOに就任
135
この記事をいいね!する

『マネジメントのはなし。』 SKY-HI・著

社長・SKY-HIの挑戦をたどれる“ドキュメンタリー本”
課題意識を持つビジネスパーソンへのヒントも満載な1冊

今、音楽業界で最も勢いのあるマネジメント/レーベル「BMSG」。そのCEOであり、アーティストとしても第一線で活躍するSKY-HIの『日経エンタテインメント!』での連載が待望の書籍化!
オーディション「THE FIRST」がムーブメントを起こし、そこから誕生したBE:FIRSTはデビュー1年で紅白歌合戦に出場。2020年9月にたった数人で始まったスタートアップ企業が、なぜここまで急激に成長できたのか。本書は、その時々でSKY-HIが抱える課題や挑戦にフォーカスしたドキュメンタリー的な1冊。「課題解決」「人材育成」「スキルアップ」「コミュニケーション」など、ビジネスのヒントの宝庫ともなっている。
■定価:1760円(10%税込み)
■発行:日経BP
■発売:日経BPマーケティング
Amazonで購入する
楽天で購入する