※日経エンタテインメント! 2022年11月号の記事を再構成
前回のedhiii boi/RUI/TAIKIに続き、SKY-HIに聞いたのは、Novel CoreとAile The Shota。音楽性の高いソロアーティストとして大きく伸びるこの2人へのSKY-HIの接し方もまた、BE:FIRSTとは大きく異なっている。「彼らのやりたいことをかなえる際に、僕自身の知見のデータベースをフルに活用できる」というのだ。
BMSGがマネジメントの会社としてソロアーティストに対して最もやるべきは、「本人たちがやりたいことをやれるようにサポートする」ことになると思います。当然ながら2人とも「何がやりたいか」「何を表現したいか」が明確。だから基本的には、できるだけのチャンスを“投げる”。もちろん、キャリアのあるNovel Coreと今年デビューしたAile The Shotaには違いがあって、Shotaのほうが僕から話さなくてはいけないことは増えるのかなと思いますが、大筋は変わりません。
また、BE:FIRSTの場合と大きく違うのは、彼らのやりたいことをかなえる際に、僕自身の知見のデータベースをフルに活用できることです。ソロアーティストのほうが、僕が「現役アーティスト社長」であることの恩恵があるような気がします。彼らが直面する不安や悩みの多くは、自分も類似したものを味わっていることですし、ロックフェスやイベント、メディア出演なども、僕が直接話をしに行ける状態ではあるので。自分がソロアーティストとして活動を始めるときにこの環境があったらよかったのに…と、うらやましくも思いますね。だから、今は「過去への優しいリベンジ」のようなもので(笑)。
「不遇」を経たからできていること
ここ数年、少ないスタッフでできることがぐんと増えたから、インディーズにいながら第一線で活躍するソロアーティストも本当に増えたと思います。BMSGも仕事の規模感こそ大きくなってきましたが、本質的には完全に独立したインディーズです。というかそもそも“インディーズ”という言葉がCD時代に定義づけられたもののように思うので、「スタートアップ企業」と言ったほうが伝わりやすいと思いますが。
10年くらい前までは今と違って、マネジメント会社にしろ、レコード会社にしろ、何かしら大きな企業の後ろ盾が必要でしたし、メジャーデビューにも価値があった時代でした。ただ、何かしら大きな力がないと活躍できない状況は、やっぱり健康的じゃないですよね。立場の強い弱いが生まれてしまう時点で健康的ではないし、健康的でないことが当たり前だったわけです。これは自分だけでなく、その時代に音楽をやっていた少なくないソロアーティストが感じていた部分だと思います。
そうした「不遇」を経たからこそできていることもいっぱいあるわけで。その「不遇」は誰かが悪いわけでもなく、シンプルにシステムが悪いわけです。僕は恐らく人よりも、そこに強い恨みだったり憎しみだったりを感じることになった人間だとは思いますし、今後、僕ほどの思いをする人はなかなか生まれないとは思うのですが…。ただ、そうした「不遇」をこれからの世代には絶対に経験させてはいけないから、状況を変えていきたい。BMSG設立の際のステートメントにも書いたことですが、本当にそこなんです。

『マネジメントのはなし。』 SKY-HI・著
社長・SKY-HIの挑戦をたどれる“ドキュメンタリー本”
課題意識を持つビジネスパーソンへのヒントも満載な1冊
今、音楽業界で最も勢いのあるマネジメント/レーベル「BMSG」。そのCEOであり、アーティストとしても第一線で活躍するSKY-HIの『日経エンタテインメント!』での連載が待望の書籍化!
オーディション「THE FIRST」がムーブメントを起こし、そこから誕生したBE:FIRSTはデビュー1年で紅白歌合戦に出場。2020年9月にたった数人で始まったスタートアップ企業が、なぜここまで急激に成長できたのか。本書は、その時々でSKY-HIが抱える課題や挑戦にフォーカスしたドキュメンタリー的な1冊。「課題解決」「人材育成」「スキルアップ」「コミュニケーション」など、ビジネスのヒントの宝庫ともなっている。
■定価:1760円(10%税込み)
■発行:日経BP
■発売:日経BPマーケティング
■ Amazonで購入する
■ 楽天で購入する