1stアルバム『BE:1』が、Billboard JAPAN「Hot Albums」で1位を獲得したBE:FIRST。この夏は「FUJI ROCK FESTIVAL‘22」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022」「SUMMER SONIC 2022」などのフェスのステージにも立ち、音楽専門誌の取材も数多く受け、各音楽配信サービスも彼らをピックアップし、音楽性の高いグループとしての印象が強まったのではないだろうか。BE:FIRSTのデビュー前、SKY-HIは今後について「彼らがやるべきは、いいパフォーマンスをすることに尽きる」(『日経エンタテインメント!』2021年12月号)と語っていた。デビューから1年、SKY-HIとしてはBE:FIRSTの現状をどう評価するのか。

(写真/上野裕二 ヘアメイク/椎津 恵)
(写真/上野裕二 ヘアメイク/椎津 恵)

 BE:FIRSTでやりたいことは、BMSGを立ち上げたときやTHE FIRSTを始めるときからずっと同じです。世界に通用するグループをつくりたい、そして「クオリティーファースト」「クリエイティブファースト」「アーティシズムファースト」を体現したグループをつくりたい。今、それが本当に実現できていることに関して、強い達成感もあるし、自分の自信にもなっています。何よりそうさせてくれたのは彼ら自身なので、やっぱり感謝の気持ちが強いです。

 それがベースにありながら、この1年目で彼らのデビュー前から考えていたことの8割くらいはかないました。例えばロックフェスに出ること、どうステップを重ねていくかという方策、DSP(デジタル音楽配信事業者)からプレイリストに入れたくなるような音楽性の評価を得ること、Chaki ZuluやKMなどのような日本の音楽シーンの今イケてるクリエイターとしっかりと組んだ楽曲制作、レコード会社の理解を得て予算を掛けたミュージックビデオを作ることなど。ジョナス・ブルーとのコラボレーションも、BE:FIRSTのキャリアの早い段階で海外アーティストの楽曲にフィーチャリングで呼ばれたいと考えていたら、かなった。やりたかったことでできなかったことは1つもないです。これらはたぶんに「運」と「縁」によることも大きかったなと思います。

 でも、最初に大切なのはやっぱり「案」と「韻」なんです。「案」と「韻」に「運」と「縁」が絡まって「恩」になる。うまいことを言ったようですが(笑)、本当に「案」と「韻」と「運」と「縁」と「恩」ですね。

 「案」はアイデア。「韻」はリズムです。後者は後付けでもあるんだけど(笑)、ちゃんと意味も理屈もあって、もう少し説明すると、日本では、特にボーイバンドにおいて、楽曲のリズムに対するアプローチが弱いケースが少なくないと思います。中学生くらいからUSの楽曲を中心に聴いていくと、別にメロコアだろうがヘヴィメタルだろうがR&Bだろうが、ちゃんと韻は落としていくし、それが歌のリズムを作っていたことに気づくと思います。それがダンスミュージックともなれば殊更だし、メロディーより大事な要素と言っても過言ではありません。

 そこにさらにメッセージとしても強みのあったヒップホップがラップミュージックとなり世界で音楽的にも覇権を取ったのも割と自然な話だったと思うんですけど、それが日本であんまりやられていなかったので、音楽の中でリズムに対する解釈を強めることはマストでしたし、それを怠らなかったことが、BE:FIRSTは曲がカッコいいと言っていただけている1番の理由かなと感じています。リズムに対する貪欲さがもう桁違いですから。

1年目でのコラボはINIさんとどうしてもやりたかった

 特に大きなことと捉えているのは、まずは多くのプレイリストに入ったこととロックフェスへの出演。3つ目に他のボーイバンドとのコラボレーションを挙げた。

 Spotifyのマンスリーリスナー数は150万人に達しました。今は少し落ちましたが、おそらく『BE:1』リリース後は、また新規で聴いてくれる人が増えるはずです。150万人という数字は国内アーティストのトップクラスだと思います。同じ人での積み上げが効かないこともあり、特にここ(マンスリーリスナー数)に弱かったダンス&ボーカルの中で、圧倒的な数字です。今の時代で“国民的”な存在になるために必要である一方、最も難しいプロセスだったと思います。それを達成でき続けているのは、本当に今後にとっても大きなことです。こことロックフェスへの出演でBE:FIRSTが音楽業界全体にプレゼンスを示していることがまず重要でした。

 僕自身もアーティストとしてプレイリストに入ることは大切にしてきましたし、その経験がフルで生かせたと思います。ただ、プレイリスト入りで何が大切かというと、単純にきちんとカッコいい曲を作って、世間にカッコいい曲だとアピールし、それでDSPに認めてもらうことでしかないし、アイドルなのかアーティストなのかとか、ボーイバンドに対する思い込みや偏見といった認知を変えていくためにも、その順序(戦略よりもまずは楽曲ありき)がいいと思うんです。

 それに加えて、他のボーイバンドと目に見える形でのコラボレーションができたこともよかった。ライバルはいっぱいいるけれど競合はいない、っていう考えを伝えるメッセージになったと思います。1年目でのコラボは、くしくも同日デビューのご縁があったINIさんとどうしてもやりたかったことでしたが、INIさんとBE:FIRSTの人間性のおかげですごく融和して、ポジティブなバイブスと相互に良い作用が生まれたと思います。今後も他グループとのコラボは進めたいと思っていますし、K-POP界のように音楽番組や授賞式などでグループや事務所の垣根を超えたコラボや交流を実現したいし、複数のグループが参加した番組『KINGDOM:LEGENDARY WAR』みたいな企画もすてきですよね。いつか運動会もやりたいし。

 今後やりたいことはもちろんいろいろありますが、1年目はやりたいことを本当に抜かりなくできました。「THE FIRST」で得た彼らから自分への大きな信頼も裏切ることなく裏付けできたし、僕が言い続けてきたことを僕が実現できたのは彼らの力でしかないから感謝は尽きません。そういう意味で、素晴らしい1年だったのは間違いないです。

(次回へ続く)

SKY-HI(日高光啓)
1986年12月12日生まれ、千葉県出身。ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーなど、幅広く活動する。2005年、AAAのメンバーとしてデビューし、同時期からSKY-HIとしてソロ活動を開始。20年にBMSGを設立し、代表取締役CEOに就任
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