※日経エンタテインメント! 2022年9月号の記事を再構成
8月31日にBE:FIRSTが1stアルバム『BE:1』をリリースした。収録曲15曲のうち、7月25日に先行配信した『Scream』を含む8曲が新曲だ。この連載でもSKY-HIは新曲のリリースのたびに「いい曲だという自信がある」と語り、その想像を必ず超えてくることに驚いた1年だったが、完成したアルバムはかなり衝撃的な出来栄えになっている。
1stアルバムで「やるべきこと」は明確でした。目標に置いていることは2つあって、1つは「2年後にはドームツアーをやれるようにならなくちゃいけない」こと、もう1つは「鉄が熱いうちに海外プロモーションを進めなくてはいけない」ことです。
BE:FIRSTは幸いにもオーディション直後から一定の人気を得られました。ただ、SHUNTO(18歳)やRYUHEI(15歳)は、K-POPアーティストのデビュー年齢とほぼ同じ世代ですが、20歳オーバーが5人いて、そのうち3人が23~24歳。そう考えると、現状に甘んじるわけにはいかず、時間的な余裕はない。焦ってはいませんが、急いでやらなくてはいけないことは多いと捉えています。
もちろん今の時代、30歳を超えたらボーイズグループが成立しないわけでもありません。それでも、年齢によって人間としてのフィールドや社会での立ち位置は明確に変わってくる。小学生なら小学生、ティーンならティーンのフィールドがあり、20代前半には20代前半のフィールドがある。同級生や親との会話の内容も変わってきますし、人生のフィールドが進んでいくなかで人間としてのフィールドを上げられていないと良くないと思う。端的に言えば、30歳になってボーイズグループとして新人として振る舞うわけにはいかない。例外はあるでしょうし、あればそれはいいことですが、あくまでも例外だと思います。
ゼロから出てきた(アーティストの)方々が3~4年のキャリアを積み、初のベストアルバムを出すフェーズってあるじゃないですか。ベスト盤を出すことで「その人の名前は知っていた」人々を改めてつかんで、加速し、フィールドを上げていく。BE:FIRSTは1年目ですが、注目度の高さや今後成し遂げたいことを考えると、今すでにその段階にいないといけないと思うんです。それゆえ、アルバムの全貌は、早い段階から出来ていました。
収集欲やコレクター欲も絶対に満足させたい
実際に、『Shining One』の制作からアルバムの完成までに2年強かかっていますが、メンバーが決まってから内容を考え、構築性を上げ、アルバムとしての強度やアティチュードを猛スピードで仕上げました。ちなみに、オーディションで6人で披露した『Be Free』『Move On』は6文字、10人が参加した『Shining One』は10文字、デビュー曲『Gifted.』はメンバーの数と同じ7文字。そういった音楽面以外で楽しめたり奥深さを演出する仕掛けは1stアルバム『BE:1』にも用意しています。とにかく全てにおいて「アルバムとしての価値」を上げることに苦心しました。このご時世にCDとして買ってくれる方の収集欲やコレクター欲も絶対に満足させたいし。
最終的にBE:FIRSTとしてデビューするメンバーが決まってから収録曲のほとんどを作りましたが、振れ幅として予定していた通りのものになりました。どれも今の時代のボーイズグループとしてイケてる曲だと思いますし、そこは余計なことを考えないでシンプルに作りやすかったです。
海外へのアプローチに話を変えると、量と質と結果が必要で、それが1つの説得力になる。だから、アルバムを出さないことにはその土俵にも乗れない。ピコ太郎のように世界的にバズるものでもあれば話は別かもしれませんが、現実的にはここを狙うほうが難しい。自分は無理なことは最初から夢見ない主義です。実現不可能でないなかで夢を見るスタンスでいくと、興味を引けるアルバムを作って「このボーイバンドやばいよ!」と分かりやすい1stアルバムを作りたかった。特に『BF is...』からの『Gifted.』への流れはアティチュードの面でその真骨頂だと思います。
「振れ幅が大きい」というインパクトは、様々な意味で彼らのクオリティーの高さを分かりやすく伝えられる。「誰が聴いても聴き応えがある」ものを作ることは対海外だけでなく、そもそもこの時代にアルバムを作る以上、至上命題の1つだったと思います。

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オーディション「THE FIRST」がムーブメントを起こし、そこから誕生したBE:FIRSTはデビュー1年で紅白歌合戦に出場。2020年9月にたった数人で始まったスタートアップ企業が、なぜここまで急激に成長できたのか。本書は、その時々でSKY-HIが抱える課題や挑戦にフォーカスしたドキュメンタリー的な1冊。「課題解決」「人材育成」「スキルアップ」「コミュニケーション」など、ビジネスのヒントの宝庫ともなっている。
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