BE:FIRSTの1stアルバム『BE:1』の発売(8月31日)に先駆けて、7月25日にリード曲『Scream』を配信開始、MV(ミュージックビデオ)も公開された。MVの再生回数は8月2日現在で450万回を超え、SKY-HIはTwitterで「Screamは1億再生、大真面目に目指してるよ」と発信した。

写真/上野裕二 ヘアメイク/椎津 恵
写真/上野裕二 ヘアメイク/椎津 恵

 『Scream』をリード曲にしたのは、楽曲、MV、コレオグラフィーなど全てにおいて分かりやすくてカッコいい。つまりキャッチーだからです。

 実は『Bye-Good-Bye』の一連の活動の中で『Betrayal Game』のリリースを繰り上げたりといったプランの調整がありました。『Bye-Good-Bye』完成時に手応えがあったので、次に分かりやすいダンス曲を出すのがバランスとしていいかなと考えたからです。

 僕は「分かりやすくカッコいい」ことをサービスって呼んでいるんです。個人的な趣味としては、カニエ・ウェスト(Ye/イェ)のように毎回こちらを完全に裏切ってくるようなリリースが好みではありますが、K-POPのようにほぼ毎回「分かりやすくカッコいい」ことも素晴らしいと思っています。とにかく『Scream』は、「分かりやすくカッコいい」点と我々の志向するものの意思表示として、今リリースする曲にふさわしい曲だと思います。

 コレオ(振り付け)はs**t kingzのkazukiにお願いしました。『Scream』にはマイケル(・ジャクソン)性を入れたかったので、ここはマイケルを尊敬してやまないkazukiしかいないでしょう。(起用が)バッチリハマりました。

「複数人監督体制」の必然性

 MVは、過去圧倒的に最大級の規模の予算になりました。たぶん日本国内で2022年1番予算が掛かっているMVの1つでしょう。他のボーイズグループの所属事務所やレーベルの方々、例えば(Stray Kidsの3RACHAとSKY-HIとのコラボで)一緒にお仕事をしたEpic JYPさん、(JO1やINIを擁する)LAPONEエンタテインメント社長のチェさん、一緒に仕事はしたことないけれどもHYBE LABELS JAPAN社長のイ・ミョンハクさんなどとお話をしたり、ご飯を食べたりしながら情報や意見の交換をさせていただくことがあるのですが、そういった日々の中で日本のMVの予算の不適切な少なさや使い方の未熟さ、クリエイティブへの意識の欠如…などは、自分の中で問題意識から解決可能な課題へと変わっていき、ビジネス面での成功も手伝って、今回国内最大規模の予算を組み込むこととその適切な使い方に臨めました。stuをはじめとする制作クルーにも本当に感謝しています。

 国内一予算とクオリティーの高いダンス&ボーカルのMVを撮影できるチームができたのは、『Betrayal Game』のMVの経験が大きいです。『Betrayal Game』でのトライ&エラーやそこで得た知見が、『Scream』では完全に生かされています。

 スタッフは『Betrayal Game』とだいたい似ているのですが、今回は初めて監督を複数人体制、制作チームも同時に複数走らせました。『Betrayal Game』の時は監督自体はお1人ですが、ダンスを撮影するのが得意な方に撮影に入ってもらったりして、完成イメージに対して柔軟にスタッフの体制を変えていきました。「パンがないなら小麦畑を作っちゃえ」というスタイルですね(笑)。

 その後「K-POPのMVもそんな感じらしい」となり、LE SSERAFIMの『FEARLESS』のMVなどを我々なりに解析してみたんです。すると、クレジットにも複数の撮影監督の名前があり、おそらくそれぞれの得意を生かしたシーンを撮影しているようだなと。日本のMVにはめったにいないカラリスト(映像のトーンや色合いを調整し、質感や色を決める役割)も複数人クレジットされている。

 ただ日本では、(MV制作に携われる)クリエイティブ・ディレクターやカラリストの人材が圧倒的に不足しています。

 その人材を増やすことが急務だけれども、どうしたら増やせるものか…社会課題のような気がしています。日本には優れたファッションデザイナーも多いし、センスのいい方もたくさんいる。適性の高い方がカラークリエーションを勉強したら、世界有数のカラリストになれる可能性もひょっとしたらあるかもしれません。そういう職業をしっかりつくっていきたいと考えています。

 MVをご覧いただければ、「複数人監督体制」である必然性とクオリティーに大きく納得していただけると思いますし、予算を掛けた作品であることも分かりやすいと思います。当然、BE:FIRSTの歌とダンスのクオリティーも高いので、意志が示せる、衝撃が起こせるのではないかと期待しています。

SKY-HI(日高光啓)
1986年12月12日生まれ、千葉県出身。ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーなど、幅広く活動する。2005年AAAのメンバーとしてデビューし、同時期からSKY-HIとしてソロ活動を開始。20年にBMSGを設立し、代表取締役CEOに就任
70
この記事をいいね!する

『マネジメントのはなし。』 SKY-HI・著

社長・SKY-HIの挑戦をたどれる“ドキュメンタリー本”
課題意識を持つビジネスパーソンへのヒントも満載な1冊

今、音楽業界で最も勢いのあるマネジメント/レーベル「BMSG」。そのCEOであり、アーティストとしても第一線で活躍するSKY-HIの『日経エンタテインメント!』での連載が待望の書籍化!
オーディション「THE FIRST」がムーブメントを起こし、そこから誕生したBE:FIRSTはデビュー1年で紅白歌合戦に出場。2020年9月にたった数人で始まったスタートアップ企業が、なぜここまで急激に成長できたのか。本書は、その時々でSKY-HIが抱える課題や挑戦にフォーカスしたドキュメンタリー的な1冊。「課題解決」「人材育成」「スキルアップ」「コミュニケーション」など、ビジネスのヒントの宝庫ともなっている。
■定価:1760円(10%税込み)
■発行:日経BP
■発売:日経BPマーケティング
Amazonで購入する
楽天で購入する