※日経エンタテインメント! 2022年7月号の記事を再構成
5月18日に2ndシングル『Bye-Good-Bye』をリリースしたBE:FIRST。実はCDに収録された3曲はすでにデジタル配信済みだ。その狙いをSKY-HIは「DSP(Digital Service Provider/デジタル音楽配信事業者)のプレイリストに入れたかったから」と語る(前編参照)。ではCDの価値はどこにあるのか。一貫してCD偏重の音楽業界・音楽メディアに警鐘を鳴らし続けながら、一方で、CDではファンに喜んでもらえるような特典も用意する。その理由は終始明確なのだが、デビューシングル『Gifted.』では、その両輪の施策に戸惑うファンの姿も見られた。しかし、全曲デジタル配信済みの今回の『Bye-Good-Bye』の場合は、よりストレートに“コアファン向け”であるCDの立ち位置が示されたように思う。
▼前編参照 SKY-HI CD発売前にデジタルで全曲リリースした本当の狙いは?『Bye-Good-Bye』がYouTube再生回数2000万回を突破したのは、5月15日。CDリリース直前です。このタイミングでCDを“グッズ”として出せたのは、すごく美しいことだと思うんですよね。楽曲だけを聴きたい人はわざわざCDを買う必要もない。でも、グッズとして持っておきたいファン心理を満たすだけのアートワーク、クリエーション、ビジュアル、そこに紐付く各種の特典…全て素晴らしいものができていると思います。今、事務所に全ショップの特典がそろってるんですけど、僕自身も「いいな!」「集めたいな!」って純粋に思ったし。
そういうことも含めて、収録曲すべてがBillboardのトップ10にランクインしながら、理想的なCD販売の仕方ができた。CDのセールスに依存するのではないけれども、かと言って、CDの価値を毀損することもないっていうのは、本当に美しい形だと思います。
1stアルバムまでの流れに自信
プレイリストの後押しに加え、音楽フェス「VIVA LA ROCK 2022」への出演や音楽番組への出演のたびに、Spotifyの登録者数も大きく伸びた。
地上波やフェスに出ればなんでもかんでも増えるわけでもないし、そこでインパクトを残せるからこそ増えるんだと思います。でも自分も含めて、増えるときは一気に増えるのが面白いですよね。しかもSpotifyの場合は、ユニークユーザーの数字が出るから、1人が何回も再生した数字ではない。いい意味で純粋な指標でもありますよね。
例えば100万人のユニークリスナーがいるのに、ライブに100人しか来ないこともあり得ますが、現在のBE:FIRSTはそういう状況ではありません。一方で、ファンが多いのは素敵だけど、ファンしか聴かない音楽になってしまうのは文化的には貧しいこと。だから、ファンがたくさんいることとファン以外にも好まれる楽曲を世に出すことの両輪で進むのが大切な気がします。
今回、BE:FIRSTは、ボーイズグループやアイドルに対する世間の偏見や色眼鏡を払拭する、新たな1歩を踏み出したように思える。「VIVA LA ROCK 2022」のMCで、彼らが自身を「ボーイバンド」と称したことも、その表明の1つと感じたが…。
これは単に、彼らは「アイドル」なのか「アーティスト」なのかとカテゴライズする論争がいつも起きているのが面倒だったこともあります。そんなものは呼びたいように好きに呼べばいいし、本当にどうでもいい(笑)。だったら自称するときは普通に英語で「ボーイバンド」って言えばよくない?って。そうすれば議論を巻き起こす余地もない。…と思ったのですが、やはりこれでもまた新しい議論が生まれていたらしいんです。なんと呼ばれても我々がやるべき事や作るべき物は変わらないので、本当にカテゴライズの論争はくだらない話だとしか思いませんが、まぁ代表としては「本当にどうでもいいので、あなたが呼びやすい呼び方で呼んでください」と言い続けていくしかないんでしょうね。
これもこの連載でも何度も言ってきたことですが、僕らの第1優先は、今後もいい音楽を作っていい音楽を届けること。その一方で、CDでは、モノを手元に置きたい人の所有欲やコレクション欲を満たせるだけの特典やアートワークなどにこだわっていきたいなと思っています。
今後もこのようなリリースの方法を取るかは分かりませんが、近いうちにまた新しい楽曲をお届けできると思います。次の曲はものすごくいいですよ! どの新曲にも言っていますが、本当にいい。(今、構想している)1stアルバムまでの流れは本当に全てに自信があります。自信は絶対的にあるんですが、それでも毎回怖いですよね。

『マネジメントのはなし。』 SKY-HI・著
社長・SKY-HIの挑戦をたどれる“ドキュメンタリー本”
課題意識を持つビジネスパーソンへのヒントも満載な1冊
今、音楽業界で最も勢いのあるマネジメント/レーベル「BMSG」。そのCEOであり、アーティストとしても第一線で活躍するSKY-HIの『日経エンタテインメント!』での連載が待望の書籍化!
オーディション「THE FIRST」がムーブメントを起こし、そこから誕生したBE:FIRSTはデビュー1年で紅白歌合戦に出場。2020年9月にたった数人で始まったスタートアップ企業が、なぜここまで急激に成長できたのか。本書は、その時々でSKY-HIが抱える課題や挑戦にフォーカスしたドキュメンタリー的な1冊。「課題解決」「人材育成」「スキルアップ」「コミュニケーション」など、ビジネスのヒントの宝庫ともなっている。
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