※日経エンタテインメント! 2022年7月号の記事を再構成
5月18日に2ndシングル『Bye-Good-Bye』をリリースしたBE:FIRST。5月25日公開のBillboard JAPANの総合ソング・チャート「HOT 100」では米津玄師に次ぐ2位につけ、全指標が3位以内というバランスのいい好成績を残した。
シングル『Bye-Good-Bye』の収録曲は3曲。1月31日に『Brave Generation』、3月7日に『Bye-Good-Bye』、4月25日に『Betrayal Game』と、全ての収録曲がCDリリースに先駆けてデジタル配信済み。その間に、『Bye-Good-Bye』のMV(ミュージックビデオ)は再生回数2000万回を突破し、オリコンのデジタルランキングでは、通算4作目の2部門同時1位を獲得する史上初の記録を達成(※)。この3カ月半、様々な数字的な結果を残してCDリリースに至っている。
4月号の本連載で、「今回はリリースや情報公開の仕方、チャートアクションを含めて実験的なことを試す機会」と語っていたSKY-HIに、今回の一連の活動を振り返ってもらった。なおインタビューは、CDリリース前の5月上旬に行った。
とにかく「全てにおいて完璧だったな」と手応えを感じています。
CDリリースまでに収録曲を出していったのは、アルバムリリース前にヒットを連発していく海外アーティストのスタイルを取り入れてみたかったからです。アーティストの存在を認知させるために1番必要なのは、世の中にリリースし続けていくこと。BE:FIRSTの場合は「THE FIRST FINAL」以降、オーディション時のイメージを更新し、新しい層にリーチするためにも立て続けに作品を出すことが必須だと考えていましたが、決して突飛な方法ではありません。海外でも、当初はヒップホップから始まり、今ではポップミュージック全般に広がった方法です。
なぜそのスタイルがポピュラーかというと、DSP(Digital Service Provider/デジタル音楽配信事業者)のプレイリストに入れるためです。とにかく多くのプレイリストに入り、リスナーを増やす道を広げたい。それには、存在感を増すためにも、頻繁にリリースすることが大事なんです。
K-POPの“カムバ”(カムバック/新曲を発表して活動を再開すること)も、そこで一気に存在感を高める意味では近いところがあると思うし、どちらのやり方も学ぶところがあるなと考えていました。
さらにもう1つ理由があります。これは日本のCD偏重型の音楽ビジネスのデメリットだと思うのですが、シングルの1曲だけが“リード曲”とされ、チャートに反映されるのはその曲だけというケースがほとんど。でも、デジタルが広がった今、それは前時代的な捉え方ですし、クリエーションにいい影響を及ぼさないなと強く感じていました。その中で、今回は全ての収録曲にタイアップやキャンペーンなどを付けることで、さらに外にリーチできるチャンスにもなれた。これにより日本のボーイズグループではオーソドックスではないデジタルの単曲リリースにもアリバイを付けられ、レーベルを含めてチームとしてそこに踏み切ることができました。
ただ、これってアーティストにとっては特別なことではないんです。CD偏重になりがちなボーイズグループやアイドルだから特殊なケースに見えるだけであって。
「アーティストとして至極真っ当なこと」としながらも、こうした動きがもたらした贈り物もいろいろあった。
大きなプレゼントの1つが、SpotifyやApple Music、Amazon Musicなど、DSP周りの方々が、BE:FIRSTの動きを音楽的な面で評価してくれたことです。DSPにとっても定期的にヒットアイテムを出せるようなアーティストと判断できたならピックアップするのは普通だと思うのですが、デビュー間もないアーティストに対して各社が軒並み応援体制を作ってくれたのはありえないことだと思うので、各社様やチームの担当にも深く感謝しています。Amazon Musicでは、次世代アーティストが出演するライブイベント「BREAKTHROUGH JAPAN Live」の第1回アーティストに(BMSG所属の)edhiii boiが選ばれるという波及効果もありました。
今後に好影響を与える成果
実はここまでは「プレイリストに乗せてもらう」ことに苦労していました。(「THE FIRST」オーディション中に配信リリースした)『Be Free』『Move On』の頃は、各種チャートにランクインしたにもかかわらずプレイリスト入りは果たせなかったし、プレデビュー曲の『Shining One』では数字的な結果をもってしても、プレイリスト入りの難しさを強く感じたんです。音楽業界各所には、固定のファンに支えられたボーイズグループは、すぐに数字が落ちる、そして何より音楽的価値が高くないという先入観があったのは確かだと思います。
とにかく今回の一連の活動で、日本の音楽の発信地であるDSP各社をはじめ、音楽関係者や音楽メディアに対して、BE:FIRSTという名前と存在感を強く意識させることに成功し、優れたアーティストとして認知してもらうことができた。これはたぶん、日本のアイドル、ボーイズグループがこれまでなし得なかったことだと自負しています。さらに、DSP各社ともメジャーデビューから半年しないうちに本当にいいリレーションシップを構築できた。今後、それがいい影響を強く与えてくれるに違いない。そこが今回の1番の実績です。
それに伴って各種チャートで1位を取ったり、史上初を記録したりといった効果もありましたが、それはあくまでも「副次的な成果」と捉えています。[次回に続く]

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