4月から放送されていたBE:FIRSTの地上波初冠番組『BE:FIRST TV』(日テレ系)が7月2日で最終回を迎える(日テレプラスでのオリジナル版は7月3日)。『スッキリ』(日テレ系)で毎週「THE FIRST」のオーディションの模様を放送していた頃から、「テレビ離れが進んでいるとはいうけれども、無料のコンテンツが毎日放送され、何百万人もが見ているメディア」として、その強さを語っていたSKY-HIだが、実際にBE:FIRSTの冠番組を通して改めて感じたことも少なくなかったようだ。今回は全13回を振り返って感じたことを聞いてみた。
『BE:FIRST TV』をやって良かったことはいっぱいありますし、悩ましかったこともありました。地上波にコンテンツが載るということはとてもありがたく、認知を広げることにつながりました。繰り返しになりますがBE:FIRSTには「イジる/イジられる」を禁止しているので、その点ではどういう状態を切り取られても視聴者の方々を不快にさせることもなかったと思います。毎回、パフォーマンスを披露する時間ももらえたし、そういった意味ではとてもポジティブでした。
日テレさんとは「THE FIRST」からのお付き合いなので、僕がやっていること・やろうとしていることに対して理解していただき、尊重もしてくださっていると感じます。ただやっぱり民放テレビ局の立場では、番組での音楽をはじめコンテンツそのものだけでなく、数字(視聴率)も追求しないといけない。それらを両立させる難しさは感じました。
僕らとしてはやりたいことを全然やれなかったわけではないし、司会を俳優の佐藤隆太さんにお願いしたいという望みもかなえてくれましたし、一番やりたくなかったことはやらないようにしてもらえました。ただ30年前にCDで最盛期を迎えた音楽業界同様に、大きな業界が変わることの難しさを感じた部分もありました。
「気がついたら自然に変わっていた」が理想
僕は今の芸能界や音楽業界は根本から変わっていくべきだと考えてBMSGを立ち上げましたが、最近思うのは革命みたいなものって、起こそうと思ってある日を境に一変するわけではなくて、気がついたら自然に変わっていたというものなのかもなと。これまでもなんとなくそう感じていたけれど、その確信が強くなったというか。
僕は、You Tubeがあるからテレビを否定したり、配信時代だからとメジャーレーベルにアレルギーを示したり……そういった「今まで」と「それ以外」をぱつんと分けて動くのは、「革命」から一番遠い行為だと思っているんです。
BMSGはテレビ局やレコード会社を含めて大きな会社と一緒にお仕事をすることもありますが、その際に、自分たちが守るべきところをきちんと守って、出したいと思っているところを最大限出しながら、徐々に変わっていくことが革命につながるのかなと考えています。
その業界が変われなかったり変わらなかったりする原因は、誰か1人やどこか1社が悪いわけではないですよね。だからこそみんなで一緒にちゃんと結果を出しながら、より良いものを考えていくことが必要です。その道中で関わる人が増えたり、大きな会社になってきたりすると、意識のズレも生まれるでしょうが、丁寧に伝えてズレを解消していく。それを繰り返すことで変わっていき、気がついたら革命と呼ばれていた、となると思うんです。
BMSGとエイベックスの共同音楽レーベル「B-ME」でも、BE:FIRSTのプレデビュー曲『Shining One』(21年8月)の頃と今では、エイベックスの方々のBMSGやBE:FIRSTへの意識は大きく変わりました。当初は長年培ってきた「売るためのスキーム」を外れているとなかなか理解されにくかったのですが、今は「この方法はBE:FIRST/BMSGにふさわしくない」と考えてくれるし、こちらの想定以上の提案をいただくことも増えています。
こうしたポジティブなコミュニケーションを積み重ねていった末に、ある日気づいたら業界が変わっていた。そんな革命を起こしたいと考えています。

『マネジメントのはなし。』 SKY-HI・著
社長・SKY-HIの挑戦をたどれる“ドキュメンタリー本”
課題意識を持つビジネスパーソンへのヒントも満載な1冊
今、音楽業界で最も勢いのあるマネジメント/レーベル「BMSG」。そのCEOであり、アーティストとしても第一線で活躍するSKY-HIの『日経エンタテインメント!』での連載が待望の書籍化!
オーディション「THE FIRST」がムーブメントを起こし、そこから誕生したBE:FIRSTはデビュー1年で紅白歌合戦に出場。2020年9月にたった数人で始まったスタートアップ企業が、なぜここまで急激に成長できたのか。本書は、その時々でSKY-HIが抱える課題や挑戦にフォーカスしたドキュメンタリー的な1冊。「課題解決」「人材育成」「スキルアップ」「コミュニケーション」など、ビジネスのヒントの宝庫ともなっている。
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