※日経エンタテインメント! 2022年6月号の記事を再構成
芸能事務所としては異例の速さでリソースの拡大に動いたSKY-HI。前回
LINK:SKY-HI 急拡大中のBMSG、人材補強で目指す次のステップ
に続く後半では、日本の芸能界におけるマネジャー職への考えを聞いた。様々な高いスキルが要求されるマネジャーだが、SKY-HIは「スターマネジャーの誕生が課題の解決につながる気がする」とアイデアを語った。
BMSGの設立やオーディション「THE FIRST」がそうであったように、SKY-HIは人材育成についても自ら動くことで業界に問題提起し、発展のために挑戦を続ける。
優秀な人が集まるポジションに
日本でスクーター・ブラウン(※2)のようなマネジャーが出てこないのは損失だなあって。マネジャーとしての実績で名を上げて、さらにマネジャー自身に仕事が来るような人を作りたい。
日本では優秀なスタッフの方の多くは、表に出ることを避ける印象があります。それは美徳でもある一方、もったいない面もある。僕は「隗(かい)より始めよ」とばかりに、僕についてくれた木村君という優秀な現場マネジャーをSNSなどでも紹介し、キャラクターを立ててきたことがありますが、その学びは多かったです。マネジャーが1人の人間として認知されることで、一緒にお仕事する他社の方との話も、「あの木村さんですよね」から入ることが増え、いわゆる形式的なアイドリングトークがいらない。アーティストだけでなくマネジャーのことも知ってくださっているから、様々な話が非常にスムーズに進むし、他社さんとマネジメント側、アーティスト側での認識の齟齬も少なく進むことが多かったんです。だから僕が思い描いている、これからの「スターマネジャー」のプロジェクトも、そういった知見を生かしてうまくいくはずだと思っています。
もう1つ言えば、「スターマネジャー」が脚光を浴びることで、今後優秀な方が「芸能マネジャーになってみたい」と目指してくれることにも期待しています。例えば、小室哲哉さんがシンセサイザーを手に世に出てきたのを見た若き日のKREVAさんが音楽機材を買ってみた結果、スーパーアーティストになった。同じような現象が、マネジャー界でも生まれてくると思うんです。藤田晋さんや前田裕二さんが起業したのを見て、自分も起業したいと思う若い世代が出てくるとか。極めて優秀で、かつ人としても素敵なマネジャーが前に立つことで、何をやっても優秀であるような方が芸能マネジャーを目指してくれる状況を作りたいという気持ちはすごくありますね。
「自分もやってみたい」っていう思いを
――ただ、芸能のマネジャー職は、時間だけでも、一般企業とは違う側面が大きい。
特に現場マネジャーは、時間的な拘束が大きいですよね。そこは恐らく、自分自身がプレーヤーのつもりでないとできないとは思います。僕も例えば、1週間のうちに朝6時からテレビ収録をする日もあれば、明け方まで仕事が続く日もある。僕も、マネジャーにはその時間、僕についてこないで寝ててほしいなって思いますし。それでも「自分ごと」に捉えられる優秀なマネジャーこそ現場に付くことを望む。
そうした複雑な事柄が絡み合っているのが今の芸能のマネジャー職ですが、そこには解決できる課題もあると思うんです。その1歩となり得るのが「スターマネジャー」の誕生のような気がしているんですよね。だからスタッフオーディションをやりたいんです。
例えば視聴率が0.5%だったとしても、それで70万~80万人の方が見てくださったり、YouTubeで3万人が10回再生して合計30万回あったりとか、それだけの視聴者の方にエンゲージメントが深くリーチできればうれしいです。
少しでも興味を持ってくれて、「これだったら自分もやってみたいな」とか思ってくれる人がいればいい。今活躍しているアーティストだって、幼いときの「自分もやってみたい」っていう思いが、この世界を目指すスタートだった人が少なくないように思うんですよ。ピアノを弾いている人、ギターを弾いている人を見て。
僕はそういう発信をしていくことが、エンタテインメントの労働環境の改善や業界そのものの発展につながることだと確信しています。千里の道も一歩から。何かを変えたいからといって、素っ裸で日本刀を持って切り込んでもかなわないし、まずは服を着て(笑)、鎧を身に着けないと。その1歩が、今回の求人募集であり、BMSGをきちんと経営することなんです。