前回、BE:FIRSTにとってアウェーである「VIVA LA ROCK 2022」の話から、MCをなぜ重視するのか語ってくれたSKY-HI SKY-HI 重要なライブMC、「新人」BE:FIRSTに求めることは 。今回は、BE:FIRSTの過去の出演ライブやファンミーティングのMCを振り返りながら、さらなる課題を聞いた。
BE:FIRSTにデビュー前から伝えているのが、安易に「いじる」「いじられる」でトークを成り立たせるのは絶対禁止ということです。そのうえで当たり障りのないことではなくしっかりした自分たちの言葉を発信してほしいし、たとえ自分たちに興味のなかった人に対しても言葉で「刺す」。ロックフェスでこれができるようになれば、ワンマンライブではもっと感情の言語化が楽になるし、それができた後、またさらにフェスに強くなる。全ては「階段」ですよね。いろいろなライブに出て場数を経験するのは大事ですが、闇雲に経験すればいいわけでもないので、その都度都度MCの課題も違います。
BE:FIRSTの場合、最初のワンマン(デビュー2日後に開催した11月5日の「“FIRST” One Man Show -We All Gifted.-」)でのMCの課題は、ステージに上がれたことに舞い上がらないで、会場に来てくれた人と目を合わせ、それぞれが人格を持つ「人」であることを想像し、その人々が幸せな気持ちで帰路につくところまで想像することでした。
次のファンミーティング(全国5都市で開催した「-Hello My "BESTY"- 2021」)では、絶対に台本を暗記するような形ではなく、ちゃんと真面目にいいことを言うことを全公演についてお願いしました。ファンの方々がBE:FIRSTとのコミュニケーションを求めているファンミは、ある程度皆さんに温かく受け止めていただける場ではあります。それでも、例えば最後のMCを内輪でわちゃわちゃしてから最後の曲にいくのではなく、ちょっと時間が掛かってしまってもいいから、自分の言葉で来てくれた方の心に刺さるいいことを言ってくださいと。ただ、それを7人にやってもらったらべらぼうに時間が掛かりました(笑)。「VIVA LA ROCK 2022」のようなロックフェスではそこに時間を掛けるわけにはいかないから、やっぱり短い言葉でそれをやらなくちゃいけなかったわけです。
ライブで感じた「良くない方向」
――「VIVA LA ROCK」の6日前の4月24日には、2ndワンマンライブ「"Bye-Good-Bye"One-day One Man Show」もあった。4月中旬時点でSKY-HIは、ファンミツアーとロックフェスの間にあるこのライブの“立ち位置”を「ただの通過点にしたくないけれども、非常に難しい」と明かしていた。「ファンミや冠番組(『BE:FIRST TV』日テレ系)が始まったところで親しみやすさが出ているけれども、2ndワンマンの翌日には『Betrayal Game』のMV(ミュージックビデオ)の公開も控えているので。こちら側の課題がクリエイティビティやクオリティの担保だとすると、彼らの課題は“気高さ”かなと思います」。
実際に2ndワンマンは、オープニングの『Betrayal Game』での登場シーンから、思わず感嘆の声が漏れてしまうような気高さであり、多彩な楽曲ごとに異なる色を見せるパフォーマンスにも圧倒され、たった半年くらい前にデビューしたことを忘れてしまうほどだった。
しかし、SKY-HIは昼の部が終わった時点で、ある明確な問題点を感じていたという。
MCですね。気高さをテーマにしながらも、7人が横一列に並んでしゃべるMCパートでは、どうしても初々しさが目についたのと、良くも悪くも作用する「慣れ」が良くない方向に出ちゃっているなと感じました。もちろんリラックスして内側の仲の良さが出ていたのはとても素敵でした。でも、具体的に言うと、彼らは「会場に来てくださった方々のおかげ」と素直に感じて言葉にしたのでしょうが、それがありきたりの言葉で途中までみんな似てしまっていたんです。本当は自分がそう感じているのなら、「皆さんのおかげである」ことを自分の中でもっと深く掘り下げて自分の言葉にすべきだと思うんです。だから昼の部が終わったあとに「夜は気をつけてね」と。
夜のMCは、全員の個性が出てすごく良かったと思いました。特にRYUHEIが。「BESTY(BE:FIRSTのファンネーム)の皆さんもすごく個性的で」みたいなことを言って会場に笑いが起き、そこから皆さんがなぜ個性的かを熱弁して(笑)。でも最終的にはメッセージ性が感じられるものでした。彼は、個の人間としてそれぞれの人生があり、それぞれの趣味嗜好もあるけれども、そうした皆さんが集まっている場所が美しいっていうことを言ってくれていたと思うんですよ、たぶん。今後に夢が広がるMCでしたね。
こうしてワンマンライブやファンミツアー、ロックフェスなどの場を経験したことは今後にも大きく生きてくると思います。特にロックフェスでの短い言葉で強いメッセージを放つ経験は、近いところではワンマンツアーに確実に生きてくると思います。端的に胸に深く刺さる言葉を観客の皆さんに渡して、各公演を締められるようになるといいですね。

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