※日経エンタテインメント! 2022年4月号の記事を再構成

iTunesソングランキング(すべてのジャンル・ヒップホップ/ラップ)において世界29カ国・地域で1位、音楽チャートサイト「kworb.net」におけるワールドワイドソングランキングで3位を獲得したSKY-HIの『JUST BREATHE feat.3RACHA of Stray Kids』。2月にリリースしたこの配信シングルでは韓国のボーイズグループStray Kidsのプロデュースチーム「3RACHA」とコラボしている。

3RACHAの3人はバンチャンが24歳、チャンビンが22歳、ハンが21歳。世代としてはBE:FIRSTの年長組とほぼ同世代だ。今後BMSGが「世界に打って出る」ことは、3RACHAのような才能のある若者と同じ土俵に立つことになる。もちろん、2021年にオーディションを経て結成したBE:FIRSTと、短くない練習生生活を経て18年にデビューしたStray Kidsとではステージが違う。しかし、グローバル市場においては、そこは同じ「ボーイズグループ」として平等に見られる。その意味で改めて現実の課題を目の当たりにすることはあったのか。

▼前回はこちら SKY-HI 3RACHAとのコラボで実感したリアルな“世界”

ポジティブに頑張ることが大事

 BE:FIRSTのプレデビュー曲『Shining One』のMV(ミュージックビデオ)再生回数は現在2500万以上、ストリーミング5000万回超えで日本ではヒット作となっていますが、Stray KidsなどのトップクラスのK-POPアーティストは億単位が最低ライン。当然ながら、僕らとの距離の違いは強く感じました。でも一方で、安心した部分もあるんです。それは、自分が思っているBE:FIRSTが次のステップに行くための課題克服は、やっぱり必要なものなんだなと確信できたことです。

 現時点で距離があるのは、ステージが違うから仕方ないことだと思います。でも、日本という国の中で高い評価や数字を得ていることを僕らは誇っていいし、Stray KidsやK-POPアーティストとは、また違う道筋を歩むと思うんです。その先にもっと大きなフィールドがあることも確信できます。いつかの未来に海外でStray KidsとBE:FIRSTとの対バンのステージがあったとしても、お互いにカッコよくパフォーマンスをできる姿は思い浮かべられます。決して競うわけではなく、お互いの個性を尊重して、僕らは僕らでポジティブに頑張ることが大事なんじゃないかな。そういう意味では、今、僕自身がBE:FIRSTに対して「いいグループだなあ」と思う部分を突き詰めていくだけなんでしょうね。

「海外に届ける」ことへの課題は?

 日本でメジャーデビューして半年に満たないグループにこれを聞くのは時期尚早かもしれない。しかし、SKY‐HIが「身をもって世界を体感した」という今、BE:FIRSTのグローバル展開、つまり現段階で「海外に届ける」ことにどんな体感を得ているのか。そこには、想定していなかった難しさもあるようだ。

 BE:FIRSTのスキルや実力といった部分とは切り離して、「海外に届ける」ことへの難しさは今、正直、頭を悩ませている部分ではあります。実際に海外の方々とお話ししていると、こちらの想像以上に日本が「エンタテインメント後進国」と思われているなと感じます。現状を考えると、当然と言えば当然なんですが。東南アジアであれ欧米であれ、韓国のコンテンツがこれだけあふれているなかで、「今、日本で人気の~」の冠があったとしても大きく評価されるものではないんだなと。

 当初は“アジアに届けて世界中に”と考えていましたが、そのアジアが難しい。K-POPを見慣れているから、ちょっとやそっとクオリティが高いくらいでは驚いてもらえない。そもそもの予算感も、それに触れているクリエイターの数も、まだまだ追いつけませんしね。アニメやマンガを通して日本に対してポジティブなイメージを持ってくれる人も少なくないし、好意的ではある。ただ、「好意的」が伝わるからこそ、日本の「歌って踊る」グループに対するそもそもの期待値の低さがかえって見えてくるというか。

 逆に欧米市場であれば、韓国だろうが日本だろうが、タイだろうがフィリピンだろうが、そこはひとまとめに「アジア発」として比較的フラットに見てもらえたりするんです。ただそこにも壁はあって、簡単にはアーティスト自身のファンにはなってくれない。やっぱり継続的に見せ続ける動線が必要です。その意味では、やっぱりアジアのほうが、継続的に見せる動線が浮かぶんですよね…。

 じゃあ、どう道を拓いていくか。まぐれ当たりのような1曲で大ヒットを生み出せたら楽かもしれないけど、そんな偶然に身を任せるわけにもいきません。だから、地道に地道に、焦らず急いで手を尽くしているという感じですね。現段階でも進めている話はありますが、楽そうな話に安易に飛びつくよりも、自分たちが考える方向、志向する方向を着実に続けていく。今はそれが必要なことだと考えています。

SKY-HI(日高光啓)
1986年12月12日生まれ、千葉県出身。ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーなど、幅広く活動する。2005年AAAのメンバーとしてデビュー。同時期からSKY-HIとしてソロ活動を開始。20年にBMSGを設立し、代表取締役CEOに就任

(写真/上野裕二、ヘアメイク/椎津 恵)

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