BMSGは「ライブ」という実経験に対して、非常にどん欲に見える。BE:FIRSTは、プレデビューからメジャーデビューの間に「SUPERSONIC 2021」(ZOZOマリンスタジアム)を皮切りに、「MTV LIVE MATCH」(ぴあアリーナMM)、さらにはデビュー2日後の「バズリズム LIVE 2021」(横浜アリーナ)と、オープニングアクトとして出演。デビュー翌日には単独ワンマン(立川ステージガーデン)を決行し、その後、初のファンミーティングを全国5都市のZeppで開催。BMSG所属アーティストも、それぞれにライブハウス、ホール、アリーナと規模の違う会場でのパフォーマンスをそれぞれに経験している。ライブには場数が重要だ。だが、それ以上にSKY-HIのライブへの考え方が透けて見える。
「身の丈に合うステージ」と「身の丈以上のステージ」
ライブに対する考えという意味では、自分がプレーヤーとしてこれまで様々な経験をしてきたことは確実にあるでしょうね。その中で自分の経験で大きかったのは、いきなりアリーナやドームクラスのライブを経験すると、観客の方を「人」としてリアルに認識できる感覚が欠けてしまうことでした。
最初の経験として大事なのは、「身の丈に合うステージ」の感覚を段階的に根付かせることかなと思いますし、「身の丈に合うステージ」と「身の丈以上のステージ」を繰り返していくことが一番成長につながると思っています。前者は自分たちを目当てに集まってくれるファンの前に小規模な会場でも立つことだし、後者は観客が大人数で自分たちにとってアウェーのステージに、これまでの自分たちの経験とスキルだけを担保に立たせることです。この場合、僕が立つステージに連れて行くケースも含まれます。
たとえて言うなら、源泉かけ流しで50度の温泉は誰でも「熱い」って分かるし、体が冷え切った状態で42度のお湯に浸かったら、やっぱり「熱い」んですよ。「熱い(無理!)」ではなくそれが一体何度くらいなのかを感じられるのが「身の丈に合うステージ」。温かい温度を温度として認識できる、つまり人を人として認識できるサイズ感ですよね。そのサイズ感でまずワンマンライブやファンミーティングをやる──BE:FIRSTの初動として、これは成功したと考えています。
「できるだけその土地のご飯を食べて」
――ファンミーティングでは名古屋、札幌、福岡、大阪、東京のZeppを巡った。
各都市のファンに直接出会い、コミュニケーションを取り……。自分たちがどんな人に応援されていて、どんな人に声を伝えるべきなのかを具体的にイメージできるのは、今後においてもとても大事な部分です。さらにメンバーやスタッフにお願いしたのが、「できるだけその土地のご飯を食べてね」ということでした。その土地の人に会い、土地のご飯を食べることで、理解も深まる。本当は日頃、BE:FIRSTのメンバーには美容と健康のためにラーメン禁止と言っているんですが、福岡公演の日だけは、OKを出しました(笑)。そうやって各地の皆さんとコミュニケーションを取った後に、1月末に「THE FIRST FINAL」(ぴあアリーナMM)でアリーナを経験することで、「アリーナサイズの人たちが自分たちを支えてくれている」ことを実感できたんじゃないかと思います。
ここまでのライブ経験は、プレデビュー以降、急ピッチだったと思います。僕自身、その土壌を可能な限り早く作った感覚はありますし、それが間に合っているかいないかは、まだ分かりません。でもがむしゃらにライブの場数を踏めばいいものではない。プレデビュー以降、幸いなことに彼らには世間の注目が集まっている状態でした。そこからどうステージを踏んでいけば、1番いい形で最初のツアーに行けるか。そこを考えています。
――Huluで配信中の『BE:FIRST Gifted Days』では、アウェーでのライブや初のワンマンライブ、全国でのファンミーティング、そして「THE FIRST FINAL」での裏側が見られるが、そこで印象的だったのはBE:FIRSTのメンバーが、ライブやファンミーティングを少しでもいいものにしたいと積極的に自身の考えを口にする姿だった。一方で、「THE FIRST FINAL」の後、SKY-HIはライブそのものへの満足を示しつつ、「今後の課題が明確になった」とも話す。
BE:FIRSTをはじめBMSG所属のすべてのアーティストが、何事にも怖気づくことなく自分の意見を発せられる、その空気感はとても大切なものだと考えています。ただ、これからも踏むべき場数がまだまだたくさんあります。本当に山積みです。そこに対して焦ってはいませんが、急いではいるところですね。
――4月24日には、BE:FIRSTの2nd single 「Bye-Good-Bye」のリリースを記念したライブ(東京ガーデンシアター)を控え、4月30日の「VIVA LA ROCK 2022」、8月21日の「SUMMER SONIC 2022」への出演も決まった。特に初めてのロックフェスへの挑戦は注目。その道のりはGYAO!の『BE:FIRST Road to VIVA LA ROCK』で配信中だ。

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社長・SKY-HIの挑戦をたどれる“ドキュメンタリー本”
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今、音楽業界で最も勢いのあるマネジメント/レーベル「BMSG」。そのCEOであり、アーティストとしても第一線で活躍するSKY-HIの『日経エンタテインメント!』での連載が待望の書籍化!
オーディション「THE FIRST」がムーブメントを起こし、そこから誕生したBE:FIRSTはデビュー1年で紅白歌合戦に出場。2020年9月にたった数人で始まったスタートアップ企業が、なぜここまで急激に成長できたのか。本書は、その時々でSKY-HIが抱える課題や挑戦にフォーカスしたドキュメンタリー的な1冊。「課題解決」「人材育成」「スキルアップ」「コミュニケーション」など、ビジネスのヒントの宝庫ともなっている。
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