5月18日、BE:FIRSTが2ndシングル『Bye‐Good‐Bye』をリリースする。オーディション「THE FIRST」からBE:FIRSTのデビュー曲『Gifted.』まで、SKY-HIは楽曲リリースを戦略的に展開してきたが、今回の2ndでは何に重点を置き、何を試すのか。
2022年、BE:FIRSTは2ndシングルに先立って、1月31日に『Brave Generation』を、3月7日に『Bye‐Good‐Bye』をデジタルリリースした。3月16日・23日には『Bye‐Good‐Bye』がBillboard JAPANの総合ソング・チャート「JAPAN HOT 100」で2週連続1位を獲得。4月1日現在ミュージックビデオ(MV)の再生回数は1400万回を突破した。『Brave Generation』もJ-WAVE TOKIO HOT100で3週連続1位を獲得。また、新曲『Betrayal Game』は、4月14日から始まるドラマ『探偵が早すぎる~春のトリック返し祭り~』(日テレ系)の主題歌に決定した。2ndシングルのリリースを前に、話題は尽きない。
1stシングル『Gifted.』の際は結果的に、MV公開とCDリリースを短期間に収めたことがBillboard1位を獲得する一因だったように思えたが、今回、CDリリースとMV公開、デジタルリリースの間には数カ月ある。なぜ、そのようなスケジュールにしたのか。そこにはSKY-HIが2ndシングルで挑戦・実証したことがあった。
2月上旬、まだ新曲が世に出る前に行われたこのインタビュー記事(『日経エンタテインメント!』4月号掲載)は、『Bye‐Good‐Bye』が大ヒットを続ける今読むと、SKY-HIの考えがより明確に理解できるように思われる。
誰が歌っているか分からないものにはしたくない
――いよいよ今春、BE:FIRSTが2ndシングル『Bye‐Good‐Bye』をリリースする。収録曲のうちの『Brave Generation』は1月31日に配信が始まり、iTunes総合ソングランキングなど、各種音楽チャートで20冠を達成。同日公開したリリックビデオのYouTube再生回数は186万回にのぼる(2月20日現在)。プロデューサーKMの歪んだギターリフとシンセ音が印象的なオルタナティブなトラックで、サウンドはロッキッシュで疾走感にあふれる。プレデビュー曲『Shining One』ともデビュー曲『Gifted.』とも違う彼らの新しい一面を見せ、メンバーの歌にまだ見ぬ可能性の奥の深さを感じさせた。
続いて2月8日、リード曲の『Bye‐Good‐Bye』が、情報番組『ZIP!』(日テレ系)の朝ドラマ『サヨウナラのその前に』の主題歌に決定したことを発表。ドラマは3月1日から31日まで全23回にわたって放送され、毎朝約8分のドラマのたびに、彼らの曲が流れることになる。朝のドラマにふさわしい「前向きなさよならソング」で、春らしいパステルの衣装に身を包んだBE:FIRSTの新ビジュアルも公開された。
これまでオーディション「THE FIRST」からBE:FIRSTのデビュー曲『Gifted.』まで、楽曲リリースを戦略的に展開してきたが、今回の2ndでは何に重点を置き、何を試すのか。
BE:FIRSTで何がしたいか、これについては(オーディション中のオリジナル課題曲)『Be Free』『Move On』、(プレデビュー曲の)『Shining One』、(デビュー曲の)『Gifted.』の、頭文字BMSGの4曲が彼らのカラーとして求めたいもの。それを見せるのは『Gifted.』のタイトルにピリオドを付けたように、いったん完成しています。
BE:FIRSTで絶対やらなくてはいけないこととして、誰が歌っているか分からないものにはしたくない。それを避け、さらには楽曲のクオリティーを上げるためにも、これまでも割と「当て書き」で作ってきました。例えば『Gifted.』だったら、歌い出しをRYUHEIにして空気感を出そうとか。それは今回も継続していますし、より戦略的に作っています。
2ndシングルから今後リリースするアルバムまでは、サビで立つメンバーやそこでの目立ち方が毎回違うとか、歌割りにしても特定のメンバーが大胆に目立つようなものを作っていきたいなと考えています。それができると、今後のライブの可能性が大きく広がるんです。例えば、2時間のライブが長く感じるのは、同じような楽曲が続くとき。一方で、3時間の映画でも予想もつかないストーリー展開であれば短く感じるときがあります。後者のような音楽ライブを作りたく、2ndシングルはその準備でもある。だから、楽曲によって目立つメンバーも違っていれば、楽曲のカラーも違う。楽曲ごとに大きく違っているからこそ、ライブでも様々な展開の可能性が広がる。その可能性のストックを、今後は意識的に増やしていきたいと思っています。
チャートアクションへの挑戦
――『Gifted.』のリリースの際は、短期集中的な動きが、Billboardチャート上でのポイントアップに大きく貢献した。11月1日にMV(ミュージックビデオ)を公開し、翌々日の3日に楽曲リリース。MVを直前に公開することで、リスナーのアクションをその週に集中できた。しかし、『Bye‐Good‐Bye』の場合、CDリリースより1カ月以上前にMVが公開される。これまで様々なメディアでCDを“積む”行為によるチャートハックに対して否定的な意見を口にしてきたSKY-HIだが、それにしても前回の『Gifted.』での1位デビューを考えると、かなりの“賭け”に出た印象を持つ。
今回の2ndシングルは、リリースの仕方や情報公開の仕方、チャートアクションを含めて実験的なことを試す機会にもなるかと思います。
3月に『Bye‐Good‐Bye』が世に出るから、CD発売のタイミングではMVもありません。ただ、3月いっぱいはその曲が世に流れ続けます。チャートアクションなどに関係なく、はやっている状況になるのが3月の目標。目標というか、そうなったらいいなと思っています。確かにチャートだけを考えるとあまりポジティブではありませんが、うまくいけば2月(の『Brave Generation』)から4月まで、BE:FIRSTの楽曲がチャートインし続ける状況にはなるのかなと。
今回の実験で検証したいことは、ストレートに言って「曲が良ければ売れるというのは本当か」です。
――とはいえ、すでに小さくない熱狂的なファンダムを持つBE:FIRSTにとって「売れる」ことはさほど難しくないように感じる。また、熱狂的なファンダムは、ともすればクオリティーに対しても盲目的に評価してしまう側面もある。「曲が良ければ〜」の前提は、BE:FIRSTの場合、すでに測りにくい状況にあるのではないかと、率直な疑問を投げかけてみた。
チャート1位を目指すことももちろん大事ですが、そのためにチャートのシステムに則ることのみを正解とするのは危険でもあるので、作品や彼ら自身にとって最もいいタイミングでのリリースを心掛けないといけない。今回は楽曲を分けてリリースするので、そのたびにチャートインのチャンスはあるかもしれない。でも、やっぱりまとまったタイミングで同時に動くほうがチャートアクションには絶対有利に働きますよね。チャート指標を考えたときに、今の時代にそぐわない方法にはなる。そのそぐわない方法をとったときに、どういった社会的影響を起こすのかは見てみたいなと思っています。
曲には絶対的な自信を持っているんです。だからこそ、たとえ順位が良くなくても気にならない。でも、ストリーミングやMVの再生回数は、策を講じずとも伸び続けています。なぜかと言うと、きっと多くの人に気に入ってもらえる、いい曲だから。それこそ先ほど言った「曲が良ければ売れるというのは本当か」ですね。
(後編へ続く)

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