日経エンタテインメント!では、本誌とNIKKEI STYLEという2つの媒体でSKY-HIへのインタビューを行ってきた。今月からはNIKKEI STYLEから日経エンタテインメント!特設サイトへWEBメディアを移し、彼の考えや思いを聞いていく。

マネジメント/レーベル「BMSG」を率いるSKY-HI(日高光啓)は「新しいカルチャー」を作ることを目指す
マネジメント/レーベル「BMSG」を率いるSKY-HI(日高光啓)は「新しいカルチャー」を作ることを目指す(写真:上野裕二、ヘアメイク:椎津 恵)

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――今回は、2月21日に電撃リリースされたSKY-HIの配信シングル『JUST BREATHE feat. 3RACHA of Stray Kids』について聞いた。この曲でSKY-HIがコラボレーションしたのは、韓国のボーイズグループ「Stray Kids」のバンチャン、チャンビン、ハンの3人によるプロデューサーユニット「3RACHA」だ。“K-POP第4世代”のトップをひた走る彼らとのコラボは、iTunesソングランキング(すべてのジャンル・ヒップホップ/ラップ)世界29カ国・地域で1位、ワールドワイドソングランキングで3位を獲得という偉業を達成した。このコラボはどう生まれ、作られたのか。

 最初に連絡をもらったのは2021年の5~6月だったと思います。まず1回お互いにリモートで意識のすり合わせをしました。「せっかくやるんだからどこにも何にも媚(こ)びず、思い切ってやっちゃっていいよね!」って。結果的には確かに数字の面でも成果を上げられたし誇らしいんですが、そのためのコラボではないし、たとえ誰にも聴かれない・評価されないものであっても、お互いにとって意味のあるものにしたかった。だからそこを共有したうえで、「じゃあ(音楽プロデューサーの)UTA君のところに行くから、1回作って送るね」って。その後もデータのやりとりをしながら2~3回リモートで会話して完成させました。

 もともとStray Kidsに対しては「カッコいいグループだな」という印象がありました。K-POPは勢いも実力のあるグループがたくさんいて、どんどん新しいグループも出ている群雄割拠の状態。その中で、それぞれがそれぞれのカラーや立ち位置を打ち出しています。ただ、良くも悪くもコンセプトが強いグループが増えていること。ブランディングがすごいなと思う一方で、活動がある種、それに縛られてしまう可能性もある。

 その中でStray Kidsは、彼らにしか出せない強めの空気感を表現しながらも、何か根底に自由度を感じる。それって、彼らの音楽に対するアティチュードなんだろうなと本当に思います。スタッフや各種クリエーターも含むチーム全体で強い世界観を出しても、彼ら自身が発する表現になる。クオリティーとクリエーティビティーに裏打ちされた世界観づくりを感じていました。そこを特に担っているのは、楽曲を制作している3RACHAで、音楽への自意識や意志がものすごく強い。本当に彼らはアーティスティック。だからこそ、グループ以外でのクリエーティブにも興味や期待を持っていました

素直でピュアで、チャーミング

――今回、コラボレーションを行った3RACHAのバンチャン、チャンビン、ハンの3人と実際にやりとりしてどう思ったのか、印象は変わったのか。

 まず3人ともチャーミングだな、という印象が強く、驚いた部分ではありました。自分も含めた“アイドルラッパー”の一つの特徴として、(外からラベリングされる“アイドル”の枠にあらがうべく)スキルにこだわったり、ボースティング(自分の強みを強気で表現する)の言葉が強くなったりしていく傾向にあると思うんです。そういった側面の曲を特に好んで聴いていたから、3RACHAももう少しオラっているというか、怖い子たちなのかなって(笑)。でも、とても素直でピュアで、驚くほどチャーミングでしたね。チャンビンはものすごくいい子だし、ハン君はびっくりするほどかわいいし。バンチャンはこれまでの楽曲からも「常に何かに燃えているんだろうな」という印象はあったけれども、やっぱり何か熱いものを内側に抱えている気がしました。

 おこがましいかもしれませんが、僕からすれば「仲間」のような感覚もありました。音楽に対するアティチュードはもちろんですが、グループ活動をしていることで外からカテゴライズやラベリングされる場所にいながらも、自分たちの音楽性を貫いている。

 もっとも、韓国は目上の人に敬意を払う儒教の思想が根底にある国です。3RACHAは僕のことを「SKY-HIヒョン(兄さん)」と呼んでくれていたから、あまり軽々しく「仲間」と呼ぶと逆に気を使わせてしまうかもしれないですが、自分としては年齢が違っても「仲間」という感覚なんですよね。実は今もDM経由でカッコいい曲を作っているまだ無名の若い子と知り合い、「一緒にやりたい」と言いながらも僕のスケジュールの都合で待たせちゃっていて「マジごめん!」なんですけど、作っているものがカッコよかったり、音楽へのアティチュードが似ていたり、キャリアや実績関係なく「仲間」って思う方っているんですよ。

 3RACHAに関して言えば、そのうえで彼らは世界的なスターでもあるわけですから、今回のコラボはとても光栄だったし、気づきの多い経験でした。

SKY-HI(日高光啓)
1986年12月12日生まれ、千葉県出身。ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーなど、幅広く活動する。2005年AAAのメンバーとしてデビュー。同時期からSKY-HIとしてソロ活動を開始。20年にBMSGを設立し、代表取締役CEOに就任。約3年ぶりのオリジナルアルバム『八面六臂(はちめんろっぴ)』には、「THE FIRST」に参加し、現在BMSGに所属するAile The ShotaやRUI、REIKOらをフィーチャリングした楽曲も収録している
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今、音楽業界で最も勢いのあるマネジメント/レーベル「BMSG」。そのCEOであり、アーティストとしても第一線で活躍するSKY-HIの『日経エンタテインメント!』での連載が待望の書籍化!
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