アニメや漫画のキャラクターグッズが、はずれなしで当たる「一番くじ」(BANDAI SPIRITS)。コンビニエンスストアで売られているのを見かけた人は多いだろう。本記事では上位賞を当てやすくするコツや、ちまたで流れている裏技の真偽について解き明かす。セブン‐イレブン・ジャパンの元社員で一番くじの販売実態に詳しい、えどぴか氏が解説する。
全国のコンビニで毎週のように発売されている一番くじ。今はやりの「ワンピース」や「鬼滅の刃」といった人気作品のキャラクターグッズが1回税込み700円前後で手に入ることから大人気だ。特にA賞からC賞のハイクオリティーなフィギュアや、最後の残り1つのくじを引くと手に入る「ラストワン賞」が人気の理由となっている。もちろん、はずれがないのも大きな魅力だ。
こうしたことが理由で、私がセブン‐イレブン・ジャパンの正社員だったころから、一番くじは熱狂的なヘビーユーザーが多い。ロット丸ごと購入する人、目当てのキャラクターグッズが当たるまでくじを何十回も引き続ける人。必然的に、一番くじに1万円以上ものお金を使うケースは珍しくなかった。人気の一番くじになると、入荷時刻を確認する問い合わせが店に殺到し、販売開始から1時間で完売したことはざらにある。
一番くじの人気がここまで過熱している理由として、消費者の生活に密着したコンビニが販路の1つになっている点は外せない。今回は、このコンビニで一番くじの上位賞を手に入れやすくするための攻略法を紹介する。
上位賞が当たる確率は?
まずはコンビニでの販売実態について押さえよう。一番くじを引いたことがあるなら、「上位賞はなかなか当たらない……」と感じたはずだ。まさにその通りで、理由は2つある。まず大きいのが「当選確率の問題」だ。最近の一番くじは1ロット80枚が主流になりつつあり、例えば2023年5月発売の「ワンピース エモーショナルストーリーズ」は上位賞が5枚で、当たる確率はわずか6.25パーセント(5枚÷80枚)。つまり、計算上はくじを16回引いてようやく当たる。上位賞は手に入りにくいことがよく分かるだろう。
また、コンビニ店舗側の問題もある。私がコンビニ本部のスーパーバイザーとして約30のフランチャイズ店(以下、FC店)を担当していたとき、何度となく目の当たりにしてきた。詳細は控えるが、例えば、一番くじの景品を店頭に陳列せずにバックヤードで保管するオーナーがいたのだ。これでは上位賞がどれだけ残っているかが客には分からない。実際にはない、もしくは残り少ないのに、それを知らないまま、くじを引いているわけだ。
一番くじを引く店を決める条件
ちなみに、こうした場合、オーナーにはオーナーでいくつかの事情がある。例えば「展示した景品を万引きされて、その景品を当てたお客と大きなトラブルになったことがあるから」など、景品を売り場に出さないことに対して相応の理解はできるケースがある。一方で、とにかくお客にくじを引かせようとして景品を展示しないオーナーがいるのもまた事実だ。
コンビニ本部はどう考えているかというと、FC店に対して景品の店頭陳列を推奨するというスタンス。レジの前の棚に並べると集客効果が大きいためだが、仕入れ代金はオーナー負担なので、強制まではできないというのが実態だ。私がセブン‐イレブン・ジャパンに在籍していたのは2010年代だが、現在に至るまでFC店のオーナーたちとは情報交換を続けており、私が在職時代にFC店で目の当たりにした状況は残念ながら今も変わっていないと聞いている。
では、一番くじをどう攻略するか。これから紹介する「上位賞が当たりやすい店」の傾向をぜひ参考にしてほしい。
- 一番くじの景品をすべて売り場に陳列している
- 「くじ券回収貼付け表」を掲示している
- 店内がきれい
- コンビニ本部の直営店である
- 郊外に店舗を構えている
まず、お分かりの通り、「一番くじの景品をすべて売り場に陳列している店」を選ぶことが重要になる。景品の残数が分かれば、上位賞が何回で当たるかをイメージできるからだ。一番くじの景品は、通常、レジのすぐ近くの棚に陳列してあることが多い。上位賞を低予算で当てたい場合、店内を見渡して一番くじの景品が見当たらない店は避けた方が無難だろう。景品をレジカウンター内やバックヤードに保管している可能性が高い。
「『くじ券回収貼付け表(以下、くじ券表)』を掲示している店」であることも重要だ。くじ券表は、一番くじ各賞の残数状況を確認できるシートのこと。売り場の景品数と照合することで、上位賞の当選確率を高い精度で算出できる。このくじ券表は一番くじの景品が並んでいる棚、もしくはレジカウンター内の壁に掲示されていることが多い。上位賞を手に入れやすくするには、くじ券表の確認も必須だ。見える場所にくじ券表が掲示されていなかったり、店員に聞いても応じてもらえなかったりする場合は、店を変えることを強くお勧めする。
隠れた穴場は「○○店」
「店内がきれいな店」も押さえておきたいポイント。私の経験上、清掃が行き届いた店は商品の陳列や在庫管理も丁寧なので、「上位賞が当たったのに、肝心の景品がない」といった景品トラブルに巻き込まれにくい(先ほど少し触れたが、こうしたトラブルは実はそれなりの頻度で発生する)。
該当する店舗数こそ少ないが、「直営店」も隠れた穴場だ。FC店と違い、直営店はコンビニの本部社員が運営している。お客にくじを引かせるために景品を展示しないという“不正”の心配はまずなく、安心してくじを引くことができる。なお、直営店はコンビニ本部に問い合わせると教えてくれるケースが多い。
「郊外型店」を狙う手もある。郊外型店はその立地上、クルマを使わないと行きにくく、必然的にコアな若者ファンの来店が少ない傾向にあるからだ。「既に上位賞を多く当てられてしまっている」という状況を避けやすい。これが駅前や住宅街にあるコンビニだと、そうはいかない。一番くじは発売直後から大人気で、コアなファンは事前に問い合わせた入荷時刻に合わせて来店する。
しかも上位賞が当たるまで引き続けるので、初日でいきなり上位賞が1つ以上は出てしまうことが頻繁にある。ネットで「発売日に行ったのにA賞やB賞が既に出ていて、納得がいかない」と怪しむ声を見るが、この“買い占め”であるケースがほとんどと思われる。
ラストワン賞にも秘策あり
あえてラストワン賞を狙うなら、いわゆる繁盛店を狙う手もある。私はFC店担当と直営店勤務の経験があり、いずれでも繁盛店とそうでない店があった。総じて言えるのは、客数が少ない店ではくじの売れ残りが目立つ傾向にあったこと。来店客数が少ない店は、必然的に一番くじを引く客も少なくなりがちだ。それでは、一番くじが売れ残りやすく、ラストワン賞までなかなかたどりつけない。駅前や繁華街に構える店のほか、レジが3台以上あったり、いつもレジに客が並んでいたりする店をなるべく狙おう。
なお、客数がそう多くはない店でも、まれに一番くじの売れ行きはいい場合がある。それを正確に判断するためには一番くじが発売するたびに足を運び、くじ券表の景品の減り具合を確認する必要がある。そこまではしないとしても、必ず手に入れたいラストワン賞の景品がある一番くじが始まった場合に備えて、日々、立ち寄るコンビニでくじ券表を確認する癖をつけておくといいかもしれない。
いざ、くじを引く
こうした特徴を踏まえたうえで、一番くじの引き方のコツについて解説していく。多くのお金をかけずに上位賞を手に入れるためにも、次の手順に沿って実践するといいだろう。
- 景品の残数をカウントする
- 「上位賞が当たる確率」を計算する
- 予算を明確に決めておく
- ちまたに流布する“裏技”を信用しない
まずは、一番くじの「景品の残数カウント」だ。狙っている上位賞の景品の残数を一つひとつ目視で確認していこう。また、くじ券表との照合も忘れずに。
次に「上位賞が当たる確率」を計算する。例えばくじの残数が50で上位賞の景品が4個残っているなら、上位賞が当たる確率は8パーセントとなる(4÷50)。理論上は、くじを12.5回引けば上位賞が1回当たる計算になる。
算出した確率を自分が許容できるなら、その店でくじを引こう。許容できないなら別の店へ行き、再度、景品の残数カウントと上位賞が当たる確率を計算する。地道な方法だが、この繰り返しが一番くじ攻略の鍵だ(ちなみに私の場合は10パーセント以上あれば、その店でくじを引く。上位賞が10回に1回以上当たる計算なら、それなりに期待できるから。運がいい日なら当たりそうだ)。
なお、くれぐれも予算を明確に決めておくこと。曖昧にしておくと、上位賞を当てられない状態が続いても、「あと1回」「もう1回」という具合に、負のスパイラルにはまりやすくなる。夢中になり過ぎた挙げ句、上位賞は当たらず、想定外の大金を使ってしまったという事態になりかねない。
ちまたに流布する噂
最後に、ちまたで流れる「一番くじの上位賞を獲得する裏技」について触れておく。例えば、「くじ券を透かすと上位賞が見える」「くじ券の厚みで上位賞が分かる」「発売直後にくじの一番上と一番下を1枚ずつ引くと、上位賞が当たる」といった類のものだ。果たしてこのような裏技は本当に存在するのか。
コンビニ本部の元社員である私が知る範囲でお伝えすると、ずばり「裏技はない」。私は、一番くじの発注・納品、くじ券の切り離しといった一連の作業を何回も経験した。しかし、上位賞の当たり券がどれなのか、見当すらつかなかった。ただの1回もだ。製造元による不正対策は万全と思っていいだろう。
結局のところ、ここまで紹介してきたように、当たりやすい店を選び、当たりやすいタイミングで一番くじを引くことが上位賞を当てる確率を高める最良の手段だ。ぜひ本記事の内容を実践し、目当ての景品を手に入れてほしい。
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