新潟発の鮮魚スーパー「角上魚類」が人気だ。売り場に並ぶ鮮魚や貝、刺し身・すしは鮮度が高く、それでいて価格は総菜も含めて、一般的な食品スーパーよりも総じて2割程度安い。他店にない強みを持つ角上魚類で、買い物の満足度を一層上げるお得技を紹介する。

角上魚類は開店と同時に多くの来店客でにぎわう。せっかく足を運ぶなら、お得技を使って満足いく買い物を楽しみたい
角上魚類は開店と同時に多くの来店客でにぎわう。せっかく足を運ぶなら、お得技を使って満足いく買い物を楽しみたい

 関東・信越エリアを中心に22店舗を展開する、新潟・寺泊発の鮮魚小売りチェーン店、角上魚類。1974年の創業から約50年間、業績はほぼ右肩上がりを続ける驚異の成長ぶりで、2022年3月期には売上高が400億円を突破。23年3月期も過去最高となる見込みだ。他店にない強みが消費者に支持されている角上魚類で、買い物の満足度を一層上げるお得技を紹介する。

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 角上魚類の店舗を訪れたらまず足を運びたいのが、店舗の奥にある鮮魚対面コーナーだ。角上魚類ホールディングス営業部店舗運営課第2課課長の飛田和幸夫氏は、「鮮魚店である角上魚類にとって花形の売り場。ここでその日、店に届いた魚をぜひ確認してほしい」と力を込める。様々な種類の魚が氷の上にきれいに並ぶ様子は壮観だ。東京・豊洲と新潟の市場から直送された魚の大半は、丸ごと1匹の状態。例えば、シマアジ、カンパチ、ユメカサゴ、キンキ、さらには高級魚として知られるノドグロまで、見るからに新鮮だ。こうした魚を使ったものが刺し身・すしコーナーや総菜コーナーにも多く並ぶ。

 鮮魚対面コーナーの品ぞろえは当然毎日変わるが、実は購入を最優先で検討すべきだとお薦めできる魚がある。「取り扱う魚はどれも自信を持って薦められるが、当日の一押しは、売り場に向かって右から2番目と3番目に並べるようにしている。これは『お客様の目が留まりやすい場所』という創業者から伝えられている教えによるもの。『本日のおすすめ』といったPOPは日によって付けない場合もあるので、ぜひ覚えておいてほしい」(飛田和氏)

鮮魚対面コーナーでは、向かって右から2番目と3番目に並ぶ魚から買うかどうかを検討するのがお勧めだ
鮮魚対面コーナーでは、向かって右から2番目と3番目に並ぶ魚から買うかどうかを検討するのがお勧めだ

 右側から2番目と3番目に置かれる一押しは、角上魚類のバイヤーが市場で見つけた“掘り出しもの”である場合が多い。仕入れる魚の計画は事前に立てるものの、市場では質はいいのに漁獲量が多かったために価格が崩れる魚が出てくる場合がしばしばあり、バイヤーはそこに目を付けて大量に買い付ける。そのため、値ごろ感がかなりある価格で販売できるのだという。23年3月上旬の取材時は右から2番目と3番目に、高知産のマアジ(1尾税込み250円。価格は変わる場合がある。以下同)と静岡産のキンメダイ(1尾税込み1600円)が並べられていた。

本マグロを割安にゲットする

 角上魚類の店内は、土日を中心に大抵の時間帯が多くの人でにぎわう。こうした状況で満足いく買い物を済ませるために、各売り場の人気商品を押さえたい。刺し身・すしコーナーでは、本マグロを使ったものが通年で売れている。マグロの中で格段においしいとされる最高級品の本マグロはこの20年以上にわたって値上がりが続き、手が一層届きにくくなった。一般的な食品スーパーではこれまで以上に売り切るのが難しく、本マグロよりも安価なメバチマグロなどが存在感を強めている状況だ。

 ところが角上魚類では、本マグロの中トロが入った「にぎり寿司 10貫」や「本鮪中トロスライス 刺身」(どちらも税込み1200円)などがよく売れる。飛田和氏は「例えば、角上魚類で扱う本マグロ入りのすしを他店で売ろうとすると、1.5倍以上の値付けになるのではないか」と推測する。刺し身コーナーでは姿盛りも人気だ。見栄えがいいうえ、魚の頭や尾は味噌汁の具にしたり、唐揚げに調理したりして味わえる。

本マグロの中トロ入りの握りずし。比較的手ごろな価格で購入できる
本マグロの中トロ入りの握りずし。比較的手ごろな価格で購入できる
姿盛りに入った魚の頭や尾は料理に使えるので、ちょっとしたお得感がある
姿盛りに入った魚の頭や尾は料理に使えるので、ちょっとしたお得感がある

 こうした鮮度の良さが来店客を魅了している一方、一手間かけた商品も人気だ。角上魚類が自社で作っている西京漬けは買いの有力候補で、6種類程度をそろえる中、銀ダラ(税込み450円)が不動の人気。銀ダラの脂と西京味噌がよく合うと評判だ。また、18年の発売以降、知名度を広げて売り上げを伸ばしているのが、「角上海幸漬け(かくじょうかいこうづけ)」(大サイズは税込み1200円、小サイズは同680円)。ウニやイクラ、カズノコ、ホタテ、ツブ貝などの海鮮類がふんだんに入っていて、松前漬けの豪華版といった趣だ。白ご飯にのせて丼にするとおいしく、酒のさかなにしてもいい。

豊富な種類の西京漬けコーナー。銀ダラが買いの有力候補になる
豊富な種類の西京漬けコーナー。銀ダラが買いの有力候補になる

総菜売り場ではタコ唐揚とアジフライ

 そして、総菜コーナーだ。角上魚類で買い物した後、家ですぐに食べたいというニーズに応えて、売り場スペースを少しずつ広げてきた。現在は20~30種類の総菜が並ぶ。ここで特に買うべき候補は量り売りの「タコ唐揚」(100グラム当たり税込み450円)や大きな「アジフライ」(税込み300円)で、どちらも生食用を使う。「刺し身として食べられるものを使っているから、味は格別。例えば当店のアジフライは身がふわふわで、冷凍ものと大きく違う」(日野店店長の久保田俊司氏)。ちなみに一般的な食品スーパーは総菜に冷凍ものを多用する傾向にあるという。日々の使用量のコントロールがしやすくて、ロスを防ぎやすいからだ。その点、角上魚類の総菜はどれも人気で、総じて売り切れる。

 一方、弁当コーナーでは「海鮮天丼」(税込み650円)が全店で一番売れている。エビ、アナゴ、イカ、キスなどが入っていて、コストパフォーマンスがとても高い。同程度のものを食品スーパーで売ろうとすると、800円以上に設定しないと利益は出ないという。

総菜コーナーでは、タコ唐揚や海鮮天丼を軸にして買うものを決めたい
総菜コーナーでは、タコ唐揚や海鮮天丼を軸にして買うものを決めたい

 総じてコストパフォーマンスが高い品ぞろえにできるのは、角上魚類での廃棄率が低いから。飛田和氏によれば、「魚の価格は依然として緩やかな上昇傾向にあるが、当社はなかなか値上げしない。ロスをなくす仕組みや工夫により売り切るからで、廃棄率は0.05パーセントだ」。同業他社では5~7パーセントのところが珍しくないことを考えると、驚異の低さと言える。「午前中に鮮魚対面コーナーの売れ行きを見て、動きが鈍い魚は午後に展開を変えるようにしている。刺し身の盛り合わせに入れる、姿盛りに加工する、総菜に使うといった具合だ」(飛田和氏)

 ここでのポイントは、売り上げや利益を傷めないようにして価格を設定している点。価格を下げるくらいなら売り方を変えず、丸ごとの状態のままで値下げする方が手間はかからない。そうではなく、「家で食べ切るには大きすぎる」と考えている客に違ったかたちで提案することで、受け入れられるようにしている。さらに客にとっては、時間帯によって品ぞろえが変わるので選ぶ楽しさが増す。そして角上魚類は売り切ることでロスを徹底的に防げる。まさにWin-Winだ。

売り切れ必至のレア商品

 鮮魚や刺し身・すしを筆頭に、値ごろ感があり豊富な品ぞろえの売り場に目が向きがちだが、地味ながらまさに穴場と言える売り場が店内の一角にある。それは鮮魚対面コーナーと隣り合わせの小さなスペースに置かれた魚のあらコーナーだ。1匹丸ごとを買い付けて切り身や刺し身・すし、総菜などに使った後に残ったあらも、手ごろな価格で販売しているのだ。「当日の仕入れ状況によって本マグロの目玉まわりやほほ肉、タイの頭、ブリのかまなどを売り場に並べているが、すべての需要に応えられる量を用意するのは残念ながら難しい」(飛田和氏)と言い、かなりのレア商品になる。気になる人は入店後にこのコーナーをまず確認すること。運よく商品が並んでいたら、迷わず買い物かごに入れよう。

魚のあらコーナーは穴場。見落としがちなので注意したい
魚のあらコーナーは穴場。見落としがちなので注意したい

 角上魚類を訪れたなら、手厚い接客サービスも積極的に利用したい。鮮魚対面コーナーでは、店員が柔軟に対応。味や調理法について教えてくれたり、細かな身下ろし方の注文に応えてくれたりする。エラ・ワタ・ウロコ取り、2枚・3枚下ろし、皮引きなどの他、刺し身用としてサクの状態、あるいは鍋料理用や弁当用など、客の希望に無料で応じる。残ったあらも言えば持ち帰れるので、先ほど紹介した姿盛りのあら同様、家で料理に活用しよう。

身下ろし方の注文には柔軟に対応してくれる。調理法も含めて相談しよう
身下ろし方の注文には柔軟に対応してくれる。調理法も含めて相談しよう

 なお、新鮮な状態で買った魚や貝は、そのまま持ち帰ってはもったいない。角上魚類歴10年以上のTAKAさん(ペンネーム)は、しっかり冷やした状態にすることを勧める。鮮度を保てる上、カツオやマグロなど赤身の魚は変色も防げる。また、これから夏にかけては傷みやすい時期なので、その対策にもなる。月に1、2回、日野店や相模原店など5店舗を利用しているTAKAさんは店にクーラーボックスを持参するようにしている。「クーラーボックスは2000円程度からそろえられるので、角上魚類に定期的に行くなら買うのがお勧め」(TAKAさん)

1割引きの日はこの時間帯を狙う

 品ぞろえや接客体制が人気の角上魚類は、土日になると駐車待ちの渋滞が店の前の道路にできることもある。「午前中と午後2時以降が混み合いがちで、その間は緩和される傾向にある」(久保田氏)。ただ、できれば平日の月曜から木曜のどこかで訪れたい。混雑ぶりは土日に対して半分程度なので、落ち着いて買い物しやすい。金曜は他の平日4日間よりは混む。

 1カ月の中では、月に1回の感謝デー「角上の日」が狙い目だ。全店舗で店内の商品が10%引きになる(12月を除く。また対象外の商品も一部ある)。買い得感が高いため来店客が殺到するのが恒例で、1日に訪れる客数は土日の水準にまで増える。しかも、その客の大半が開店から午後1時ごろまでの間に押し寄せるため、店内の混雑ぶりは土日をしのぐという。「早く行かないと売り切れる」というイメージから昼すぎまではとにかく混むが、売り場は商品を都度補充する体制を整えている。「品薄感が出てくるのは夕方からなので、品ぞろえがほぼ変わらない午後早めの方が、ゆっくりと買い物を楽しめる」(飛田和氏)

(写真/尾関祐治)

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