
SNSの広がり、進化するサイネージ、ターゲティングの高精度化……。デジタル化によって広告は以前に比べてはるかに効率的に、消費者に届けられるようになった。ただ一方で、ステマ(ステルスマーケティング)や炎上など、消費者の信頼を損ねる問題も起きている。4マスやSNSから自社アカウントでのPRまで広告が多様化する中、どうすれば「愛される広告」はつくれるのか。4つの条件を紹介する。
「必要なら検索すれば自分で情報を得られ、ただでさえ情報があふれている中、広告で余計な情報を増やされたくないと多くの人が思っている。面白いことをやって注目されたり、すてきなライフスタイルのイメージで欲望を喚起させたりする“20世紀型広告”の手法は通用しづらくなっている」と、広告業界を長年取材している編集者の河尻亨一氏は言う。
では今、共感を呼び、好意的に受け止められる広告とは何か。河尻氏は「これからの広告は本気・本音・本質が問われる。ひと言で言い換えると『正直さ』かもしれない」と分析する。「新型コロナウイルス禍によって多くの人が自分たちの社会に本当に必要なものは何かを考えざるを得ない状況になり、広告を発信する企業が本当に消費者や社会のことを考えて発信しているのかにセンシティブになっている」
例えば、木村石鹸工業(大阪府八尾市)が初めてSNS広告に挑戦した記事「『これは広告です』老舗町工場が正直すぎるSNS広告で売り上げ3倍」が、日経クロストレンドで非常に反響を呼んだ。これは、「商品の良さを伝えたいから広告をやってみます」というクリエイティブで、広告であることを自ら積極的に伝えたもの。この真摯なメッセージが消費者の共感を呼んだ形だ。
「企業の本気・本音・本質が伝わる広告」とはどういうものか。取材を通して浮かび上がってきたのが、以下の4つの条件だ。
(1)パーパスとつながっているか
まず企業やブランドの存在意義である「パーパス」と広告がつながっているかどうかが非常に重要だ。
河尻氏が長年取材を続けている世界最大級の広告賞「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」では、近年「ソーシャルグッド(社会貢献に資する活動)」や「ブランドパーパス」が大きなトレンドになっており、1つの広告が大きなうねりとなって法律を変えた例さえ複数あるそうだ。例えば、ドイツの衛生用品ブランドは女性用生理用品を贅沢品と見なして高い付加価値税が掛けられていることを問題視し、書籍のおまけにすることで、低税率で販売。これをきっかけに法改正の署名運動が盛り上がり、税率を引き下げる法改正が実現した。
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