
このところ、屋内外に設置したデジタルサイネージを運営・管理し、広告メディアなどのマーケティング手段として活用しようとする企業が増えている。NTTドコモが51%、電通グループが49%を出資して2019年に設立し、デジタルサイネージを新たなメディアに育てつつあるLIVE BOARD(ライブボード、東京・渋谷)はその1社だ。広告主が注目し、同社の業績が好調に推移している理由をひもといた。
かつての屋外広告や、看板を電子化しただけのデジタルサイネージは、商品やサービス、ブランド名などをできるだけ多くの消費者に訴求したいという広告主を除き、広告メディアとしてそれほど多くの需要が見込めなかった。「誰が見ているのか測定できない」「広告を認知した消費者がどの程度態度を変容させたのか、その効果も測定できない」といった課題を抱えており、多くの広告主がデジタルサイネージへの広告出稿に二の足を踏んでいたからだ。特に、効果を数字で検証できるネット広告が主流になってきた2010年代半ば以降、この傾向に拍車がかかっていた。
これに対し、多くの広告主に広告出稿を検討してもらうため、デジタルサイネージ運営企業が考えたのが、誰がデジタルサイネージを見ているかを何らかの手段で測定することだった。
デジタルサイネージの近くにカメラを設置して撮影した画像から視聴者の数や属性を分析する、デジタルサイネージ近くにビーコン端末を置いて通信規格「Bluetooth(ブルートゥース)」でやり取りできた消費者のスマートフォンの数を測る……。さまざまな手立てが検討され、実際に試みられてきた。
中でも、NTTドコモが提供する「モバイル空間統計」を使って得られた消費者の位置情報などから、デジタルサイネージを視聴している消費者の数(インプレッション)を割り出し、ビジネスを成長させているのが、LIVE BOARDだ。
ドコモの「モバイル空間統計」を利用
モバイル空間統計とは、NTTドコモの基地局ごとに集計した、ある特定のタイミングにおける携帯電話の台数に、ドコモの普及率を掛け合わせて推計するもの。これを使って、デジタルサイネージごとに、サイネージを視認できる範囲内に特定のタイミングで滞在しているユーザーの数を割り出す。
さらに、LIVE BOARDの場合、デジタルサイネージに広告を配信した後、当該サイネージ周辺にいたドコモユーザーのスマホにプッシュ通知でアンケート調査を送信し、実際に広告が視認されたかを調査する(回答したユーザーには一定のdポイントを進呈する)。この調査で得られた視認率を、特定のタイミングでデジタルサイネージ周辺に滞在していたユーザー数に掛け合わせることで、配信した広告を視聴した消費者の数を「インプレッション」として導き出す仕組みだ。
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