2022年2月4日発売の「日経トレンディ 2022年3月号」では、「得する相続」を特集。相続税が将来かかりそうか、節税対策はどの程度必要になりそうかを判断するため、まずは相続税の計算方法や贈与税の仕組みにについて知っておきたい。ここで、実例を交えて解説していく。

※日経トレンディ2022年3月号の記事の一部を掲載。詳しくは本誌を参照

相続税の計算では、相続人の構成と各人の法定相続分が重要な要素に
相続税の計算では、相続人の構成と各人の法定相続分が重要な要素に
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 相続税の対象となる遺産は預貯金や不動産(土地・建物)、有価証券(株式・投資信託など)が代表的で、自動車や美術品なども含まれる。相続税の課税対象となる金額は、それらの遺産の評価額から基礎控除額を差し引いて求める。基礎控除額の計算式は「3000万円+600万円×法定相続人の数」だ。

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 下の実例は、父が亡くなり、母と2人の子が法定相続人となる一般的なケース。基礎控除額は4800万円(3000万円+600万円×3人)だ。父の遺産評価額が8000万円とすると、基礎控除額を引いた課税対象額は3200万円になる。

亡くなった父の遺産8000万円分を、母と2人の子で分割するケース
亡くなった父の遺産8000万円分を、母と2人の子で分割するケース
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 相続税の計算ではまず、この課税対象額を法定相続分通りに分けたと仮定して、相続税の総額を出す。被相続人の配偶者の法定相続分は2分の1(子がいる場合)で、残りの2分の1を子が均等に分ける。実例では母が2分の1、子1と子2が4分の1ずつとなる。もし子が3人いた場合は、それぞれの子が6分の1ずつになる。

 下表が相続税の税率。相続税は累進課税であり、取得金額が多いほど税率が高くなる。お金持ちであるほど節税対策が重要になる理由だ。

■相続税の早見表
■相続税の早見表
注)取得金額は基礎控除の控除後
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 ただし、取得金額全体に同じ税率がかかるわけではない。例えば4000万円なら、1000万円には10%、1000万円超〜3000万円の部分には15%、3000万円超〜4000万円の部分には20%の課税になる。超過累進課税という方式だ。この表を見て、取得金額に該当する税率をかけてから、控除額を引けば簡単に相続税が分かる。

相続税は2つのステップを踏んで計算

 実例では、母は課税対象額3200万円の2分の1である1600万円を取得金額として、相続税を仮計算する。税率15%をかけて控除額50万円を引くと190万円だ。同様に子2人は80万円ずつと計算でき、3人分を足した相続税の総額は350万円となる。

まず法定相続分通りに分けたと仮定して相続税の総額を出し、それを実際の相続割合に応じて案分する
まず法定相続分通りに分けたと仮定して相続税の総額を出し、それを実際の相続割合に応じて案分する
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 そして、この相続税総額を実際の相続割合に応じて案分することで、各相続人が支払う相続税が求められる。実例で仮に法定相続分通りに遺産を分けたとすると、母は350万円の2分の1で175万円、子2人は4分の1で87万5000円ずつとなる。

 ただし母については、配偶者控除が適用されて実際の相続税はゼロになる。被相続人の配偶者には、相続する財産の評価額が1億6000万円か法定相続分相当額のいずれか高い金額までは非課税という優遇制度がある。結果として、実例では子2人が計175万円の相続税を支払うことになる。

 両親の一方だけが亡くなった1次相続では、この配偶者控除を利用することで相続税を抑えやすい。一方、もう1人の親も亡くなって子だけが相続する2次相続では、配偶者控除が使えないため相続税が膨らみがち。節税対策としては1次相続と2次相続をトータルで考えて、1次相続の段階から計画的に配偶者と子の相続割合を決めていくのが肝要だ。

■相続人の構成ごとの相続税額
■相続人の構成ごとの相続税額
注)法定相続分通りに分けた場合の概算額
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 法定相続人の数が多い方が基礎控除額が増え、1人当たりの取得金額が減って税率が下がる可能性もあるため、基本的には相続税額が少なくなる(上表)。この効果を狙い、被相続人が生前に孫などと養子縁組をして、法定相続人を増やすという節税術もある。

贈与税は年間110万円を超える贈与が課税対象に

 節税術の王道である生前贈与(暦年贈与)では、年間110万円の基礎控除額を超えて贈与した部分に贈与税がかかる。やはり超過累進課税で、下表にある税率と控除額を使って計算できる。同じ金額での税率を相続税と比べると、贈与税の方がかなり高い。

■贈与税の税率は、誰からもらうかで変わる
■贈与税の税率は、誰からもらうかで変わる
注)直系尊属とは父母、祖父母、曽祖父母など
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 注意がいるのは、20歳以上の人が直系尊属(父母、祖父母、曽祖父母など)から贈与を受けた場合と、その他の場合とで税率が異なる点だ。前者の方が税率が低く設定されている。

 贈与税の計算方法はシンプル。下にある500万円の贈与を受けた例では、基礎控除後の390万円が課税対象額となる。税率をかけて控除額を引くと、通常の贈与では53万円を、20歳以上の人が直系尊属から受け取った場合は48万5000円を贈与税として支払うことになる。

■贈与税の計算方法
■贈与税の計算方法
父母や祖父母などから財産を受け取った場合は税率が低くなる
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 年間の贈与額が110万円以下なら、もちろん非課税だ。複数人に対して110万円以下の贈与を毎年コツコツ行い、効率的に相続財産を減らして節税するというテクニックはよく使われている。

 こうした相続税と贈与税の基本を理解したうえで、具体的な相続対策に取り掛かりたい。

生前贈与では、これも押さえておこう

●贈与税を支払うのは、財産をもらった人

 贈与税を支払うのは、贈与した人ではなく財産をもらった人。年間110万円の控除は受け取る人ごとの適用となる。例えば、同じ年に2人から110万円ずつ計220万円の贈与を受けると、控除は110万円で残り110万円分は課税される。

●お年玉やお歳暮、仕送りなどは非課税

 お年玉やお中元、お歳暮、誕生日プレゼントなどは、金額が一般常識の範囲内であれば110万円の控除とは関係なく非課税の扱い。また、配偶者や子、孫など扶養義務者の間でその都度負担した生活費や教育費にも贈与税はかからない。

●夫婦間の自宅の贈与には2000万円の控除あり

 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための資金の贈与が行われた場合には、暦年贈与の控除110万円の他に、最高2000万円までの控除が受けられる。通称「おしどり贈与」といわれる。

(イラスト/平松 慶)


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