
マーケティングツール導入は、ビジネスに向かい風が吹く中で突破口を切り開くための手段にもなる。日本たばこ産業(JT)は2021年12月、顧客データを蓄積・分析する仕組みを改めた。喫煙者減が続く中、顧客のLTV(顧客生涯価値)向上を目指す策の1つ。指標算出の工数が削減するなどの手応えも見えてきた。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、習慣的に喫煙している人の割合は2019年で16.7%。その10年前の結果と比べて6.7ポイントの減少となっている。健康志向の高まりに加え、年々たばこの価格が上がっていく一方で、喫煙者の人数は減っている。「いかに1人の顧客に自社商品を買い続けていただけるかが、戦い方の大きなポイントになっている」と話すのは、JT日本マーケットマーケティング&セールス企画部次長の平谷朋也氏だ。
海外では広告規制が進み、小売店でも店頭に商品を陳列することが禁じられるなど、より厳しい状況となっている。日本はその規制レベルには至っていないものの、「顧客接点がなくなるリスクを抱えている業態だ」と平谷氏は危機感を募らせる。
点在していた顧客データを一カ所に集約、顧客理解を深める
こうした中、JTがビジネス上で重視するのは「既存顧客をいかに維持していくか」。新規顧客の開拓が難しくなる中で、LTV(顧客生涯価値)が重要な経営指標になっている。主軸となるのは、成人認証を取得した顧客向けの会員プログラムに参加する「JT ID」を保有する会員との関係強化だ。
同IDを使うと、オンラインでのたばこの購入などが可能になる。登録数は数百万人。単に成人の証明書として利用するだけでなく、会員向けサービス「CLUB JT」で賞品と交換できるポイントプログラムなどを提供している。例えば、たばこのパッケージに記載されているQRコードを読み取ったり、サービスを利用したりすることでポイントをためられ、たまったポイントはキャンペーンへの応募やアイテムへの交換に用いることができる。
こうした顧客ごとの会員情報や、「CLUB JT」のアクセスデータ、各種アンケートデータなど顧客にまつわる様々なデータを保有している。顧客との関係強化には、こうしたデータ分析により、顧客である会員について深く知りコミュニケーションに生かす必要がある。
以前はそれらのデータが社内に点在していた。データごとに管轄している委託先が異なっていることも多く、包括的に分析し、スピーディーなマーケティング施策を実行しにくい状況だった。
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