
顧客ごとに細かくターゲティングするメルマガは、やり切る覚悟がなければ労力だけかかり、成果にはつながりにくいと特集第2回で解説した。だが、あえてその覚悟を持ってパーソナライズを徹底するのが、宿泊施設やレストラン、スパの予約サービスを展開する一休だ。10年ほど前までは、売りたい商品をプッシュするメルマガ中心だったというが、どう変革をしたのか。パーソナライズの裏側と課題に迫った。
マーケティングのDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中、購買や検索の履歴から人物像や行動を推定し、最適なタイミングで的確な広告を表示したり、商品のレコメンドをしたりする「パーソナライズ」がトレンドになっている。メールマーケティングも同様だ。
特集第3回で紹介したクラシコム(東京都国立市)が運営するECサイト「北欧、暮らしの道具店」は、一切パーソナライズをせず“コンテンツ一斉配信”で長期的なエンゲージメントを高める戦略を貫いていた。それは、同サービスの世界観に共感し、実際に購入経験のある濃いファンがメルマガに集っており、ある種のターゲットメディアになっていたからだ。
だが、客層が広く、また使い方も多様なサービスにおいては、パーソナライズにより大きな効果が得られる場合はある。10年ほど前にメルマガ戦略を大転換し、徹底したパーソナライズを突き進むのが、宿泊施設やレストラン、スパの予約サービス「一休.com」をオンラインで展開する一休だ。
同社が2020年7月、オンラインサイトを刷新し、パーソナライズを大幅に進化させたことは、過去に記事で紹介した。会員が同社のウェブサイトに訪問すると、「軽井沢×由緒ある老舗」「東京から2時間×離れ・ヴィラが人気」など、場所とシーン(条件)がセットとなった斬新なレコメンドが表示されるようになったのだ。場所×テーマなど、2つの要素を組み合わせた“2軸のレコメンド”によって、コンバージョンも大きく伸びた。
メールマーケティングに関しても、このパーソナライズの思想を導入している。会員がウェブサイトなどでどのような行動をしたのかを収集・分析し、それに応じてリアクションとしてメールを送るのが基本だ。1日に最大200種類程度を出し分けており、1回当たり数十人にしか送らないメールもある。「多品種少量配信」(一休社長の榊淳氏)なのが特徴だ。
「売りたい施設」を載せる営業メルマガとの決別
だが実は10年ほど前までは、パーソナライズを行わず、毎週火曜日と木曜日にメルマガを一斉送信するオーソドックスな形式を採用していた。内容は、「自分たちが売りたい商品をまとめたもの」(一休チーフディレクター兼レストラン事業本部 マーケティング部 部長の土屋美佐子氏)だった。
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