SNS時代の「メルマガ」新常識 第3回

開封率40%以上――。メールマーケティングの巧者として有名なECサイトがある。クラシコム(東京都国立市)が運営する「北欧、暮らしの道具店」だ。同サービスは、メールだけでなく、TwitterやInstagram、LINEなどのSNSに加え、YouTubeや音声メディアまで活用し、まさに全方位で情報を発信している。SNS時代にどうメルマガを位置付けているのか、人気コンテンツをどのように作り出しているのか、裏側に迫った。

週4、5通と非常に高頻度でメルマガを配信し、ファンとつながるECサイト「北欧、暮らしの道具店」。メルマガに込める思いやユーザーとのつながり方を運営するクラシコム代表の青木耕平氏に聞いた
週4、5通と非常に高頻度でメルマガを配信し、ファンとつながるECサイト「北欧、暮らしの道具店」。メルマガに込める思いやユーザーとのつながり方を運営するクラシコム代表の青木耕平氏に聞いた

 「メールをたくさん送ると嫌われる」といったメルマガの“あるある”が、実は思い込みであることを特集第1回ではデータから読み解いた。メガネ・コンタクトレンズの販売店チェーン「メガネスーパー」を展開するビジョナリーホールディングスのCDO(最高デジタル責任者)としてEC事業をけん引し、ECの専門家としても活動する川添隆氏は、「配信頻度を増やすとメール経由の売り上げの総量が上がることは、定量的にも実感としても持っている」と語る。配信解除を気にしすぎて頻度を抑えることこそ、機会を喪失する可能性がある。

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 さらに、昨今は一期一会の購買に期待するのではなく、CRM(顧客関係管理)を通じて継続的なつながりをつくり、消費者のLTV(顧客生涯価値)向上へと結実させることがマーケティングの潮流の一つとなっている。「メルマガなどのメールマーケティングも、CRMを意識した継続的なコンテンツ作りをしていくことが重要になる」と、川添氏は指摘する。

 この思想でメルマガを運営している代表事例として川添氏が挙げるのが、クラシコムが運営するECサイト「北欧、暮らしの道具店」だ。「配信数を増やしたいものの、コンテンツを増やすことに苦労しているという企業が多い中、継続的なつながりを生むコンテンツ作りがとても巧み」(川添氏)という。そこで今回は、メルマガ巧者といわれる同社のメールマーケティング戦略を追った。

多様なチャネルの中でも、メールは最も濃いつながりに

 北欧、暮らしの道具店のメルマガは、現在では週に4、5回ほど配信。パーソナライズは一切行っておらず、登録者に一斉配信している。内容は、商品の紹介がベース。だが、ECショップのメルマガでよくある、多数の商品を羅列し、商品情報へのリンクがずらっと並ぶチラシのようなものではない。1商品を大きな写真でしっかり見せ、単なるスペックの紹介ではなく、スタッフの言葉で丁寧に魅力を伝える。リンクも最小限だ。

「北欧、暮らしの道具店」のメルマガの配信例
「北欧、暮らしの道具店」のメルマガの配信例
以前はコラムなども配信していたが、現在は商品情報を中心に構成をしている
以前はコラムなども配信していたが、現在は商品情報を中心に構成をしている

 驚愕(きょうがく)なのが、メールの開封率が40%を超えるということ。一般的に15~20%程度あれば及第点ともいわれる中では、圧巻の数字だ。

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