新型コロナウイルス禍が落ち着きを見せ、世界各地でスポーツ観戦×MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の取り組みが始まっている。混雑回避の観点だけではなく、スタジアム周辺の観光情報とMaaSアプリをつなげ、地域経済を活性化させる仕掛けが目立つ。実は、トヨタ自動車もイタリアでスポーツ関連サービスを開始している。
新型コロナの流行が落ち着きを見せ、春の訪れとともに、今年もスポーツリーグのシーズンが始まろうとしている。そんな中、全国各地の開催地で頭を悩ませているのが、交通集中による渋滞や会場への足の確保だ。
大規模なイベントが連日見込まれる大都市のような地域であれば、路線バスなどの定期運行の強化や利用増が見込まれる時間帯の増便など、新たな投資を伴う対策も可能だろう。一方、公共交通の便が必ずしもよくない都市郊外や地方都市においては、開催日が限定的であり、その都度、臨時の交通対策が求められる。
臨時の交通対策では、臨時バスを走らせればいいと考える方も多くいるだろう。ただし、事はそう簡単ではない。
道路の車線当たりでさばける人員は、一般的に自家用車で1時間当たり1000~1400人が精いっぱい。よくある路線バスと自家用車が混在した状況では、現実的に同1000~1900人程度しか輸送できない。路線バスの専用レーンが確保できたとしても、4倍の同4000人までの輸送が限界だ。
競技場の場所によってはアクセスできる道路も方面別に限られており、容量拡大もしづらい。スポーツイベントの場合、開始時刻が決まっているため、時間分散対策はあまり期待できないことも頭を悩ませる要因だ。
一方で従来の発想とは異なる、スポーツとMaaSが連係した新たな挑戦が世界各地で始まっている。本稿ではそのスポーツ観戦の価値を変え得る取り組みをいくつか紹介していきたい。
トヨタとイタリアの名門サッカークラブが強力タッグ
まず、トヨタ自動車が2020年からイタリアで展開しているマルチモーダルな移動支援サービス「KINTO GO(キントゴー)」が、その好例だ。KINTO GOは、鉄道やバスなどの公共交通機関に加えて、カーシェアリングや電動キックスケーターなどを1つのサービスとし、経路案内、予約や決済ができるアプリだ。日本でも「my route(マイルート)」というブランド名で、全国各地に普及が進んでいる。
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