「駐停車場所を制するものが、自動運転社会を制す」。もはや、そう言っても過言ではない。実際、都市空間における駐停車場所として注目されている路肩(カーブサイド)をめぐって、“自動車大国”の米国では争奪戦が繰り広げられている。Googleも都市の再開発事業などで参戦。デジタル化により、路肩空間はどのように変わるのか。

Googleが米カリフォルニア州サンノゼ市で進める再開発計画でも、路肩の活用アイデアが盛り込まれている(画像/Googleホームページから)
Googleが米カリフォルニア州サンノゼ市で進める再開発計画でも、路肩の活用アイデアが盛り込まれている(画像/Googleホームページから)

 自動運転技術が普及していくことで、長時間、一定のエリアに駐車する必要性は低下する。また、通信環境が良好なエリア、つまり地下や建物内などの駐車場よりも地上部の衛星や通信電波が良好な駐車環境の価値が増していくことは、誰でも容易に想像がつく話だ。

 そこで注目されているのが路肩だ。路肩は車道と歩道の間の空間であり、日本では古くからパーキングメーターやパーキングチケット、バス停留所として活用されてきた。産業政策として自動運転を推進したい地方行政は、道路空間を自らがマネジメントできる次世代駐車政策を推し進め、路肩への期待も高い。

 ところが、だ。欧米の進化はさらに先を行く。例えば、欧米の路上パーキングメーターの多くは、今やスマートフォンでの決済が常識だ。先進国の中で、駐車料金を現金で支払っているのは、日本だけかもしれない。駐停車ビジネスにおける情報技術の進展はめざましく、駐車空間の検索、予約、決済のワンストップサービスや、時間帯によって料金を変える「ダイナミックプライシング」による駐車マネジメントが、日常生活に浸透しつつある。

 路上の限られた空間を、例えば朝夕は公共交通の乗降スペース、早朝や夜間は荷さばき用のスペース、日中は送迎やカフェ、キッチンカー、移動店舗のスペースなど、デジタル技術を活用してダイナミックに運用する。こうして、より魅力的な沿道によみがえらせる取り組みが現実味を帯びてきている。

 さらには、これら路肩の活用が、デジタルの力で都市の価値をアップデートする国家のデジタル戦略と連動し、またGoogleをはじめとして、様々なIT企業が駐車ビジネスに参入することで、まさに路肩のデジタル争奪戦が米国で始まっているのだ。

 再開発を契機にエリア全体をアップデートし、不動産の価値を向上していく事業も始まっている。モーニング、ランチ、ディナーと、まるでレストランのメニューのように沿道の景色が時間や季節ごとに変わり、モビリティと街が一体となった次世代のまちづくりが芽吹いている。本稿ではその一端を紹介していく。

スマートパーキング化で「うろうろ運転」削減

 米ペンシルベニア州の南西部に位置するピッツバーグ市は、米Automotus(オートモータス)と連携し、2022年4月25日からダウンタウンおよび郊外部の路肩20カ所を対象に駐車場空き情報の提供、分単位での自動決済を行うスマートパーキングの実証を始めている。

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