電動キックスケーターや自転車などのシェアリングサービスは、北米でも“日常の足”として市民権を得つつある。MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の重要なピースとして、どのような役割を果たしているのか。北米の最新調査リポートを読み解く。

北米では電動キックスケーターなどのマイクロモビリティの利用が進んでいる(写真/Shutterstock)
北米では電動キックスケーターなどのマイクロモビリティの利用が進んでいる(写真/Shutterstock)

 本連載の前回では、欧州の小さい交通、マイクロモビリティの最前線をお伝えした 第8回:「マイクロモビリティ」普及のカギは? 欧州で先行、MaaSと融合 。今回はもう1つの“マイクロモビリティ先進国”である北米を中心に、北米バイクシェア&スクーターシェア協会(The North American Bikeshare & Scootershare Association、NABSA)のリポートなどから最新動向を読み解いていきたい。本稿で対象とする移動手段は、自転車及び電動キックスケーターのシェアリングサービス、対象国は主に米国、カナダ、メキシコである。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)により、北米では2020年にマイクロモビリティの利用が一旦落ち込んだものの、21年の中ごろから回復傾向が顕著だ。今や北米298の都市にこれらの新しい移動サービスが普及しており、車両数は23万2000台と19年の19万4000台から20%増えている。移動需要は公共交通の利用がいまだに全体の50%前後にとどまる中、マイクロモビリティは21年8月中旬にはコロナ前の水準を超えている。

 21年の1年間でマイクロモビリティは実に1億2800万回の利用があったという。ちなみに、日本国内線の航空需要はコロナ前の水準で年間1億人規模であり、わずか数年でマイクロモビリティの巨大な市場が形成されていることが分かるだろう。マイクロモビリティは、Withコロナにおける新しいライフスタイル、社会政策としても注目されており、北米では事業者の約半数が現在もなお、医療従事者などのエッセンシャルワーカー向けの無料プログラムや割引プログラムを続けている点も特徴的だ。

北米のマイクロモビリティ(黒線)と公共交通(青線)利用の推移(出所/NABSA)
北米のマイクロモビリティ(黒線)と公共交通(青線)利用の推移(出所/NABSA)

マイクロモビリティ利用者の18%が公共交通に乗り換え

 では、どのような人たちがマイクロモビリティを利用しているのだろうか。NABSAによると、年収10万ドルを超える高収入層の利用が多いだけではなく、年収1万5000ドル以下の人たちも多く利用している。年齢層では25~44歳が他の年齢層に比べて多い傾向だ。白人の利用、男性の利用が多い点も特徴的だという。これらの利用傾向は電動キックスケーターだけではなく、自転車シェアリングも含んでおり、地域の属性バランスと比べたときの傾向である。

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