脱炭素化の要請が強まる中、マイカーなどに代わる身近な“足”として期待されるのが、電動キックスケーターや自転車などのシェアリングサービスだ。欧州ではMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)との連携も進み、普及が加速している。その最前線をリポートする。
ガソリン価格の高騰や脱炭素化の潮流を受け、欧州のマイクロモビリティ(注1)市場の躍進が続いている。欧州主要20都市の動向を見ると、2021年4~6月と比較して22年同期の総利用者数は約1.2倍と急成長している(flustuo調べ)。中でも電動キックスケーターの利用者は約1.8倍を記録しており、自転車シェアリングやバイクシェアリングも約1.4倍と人気を博している。
欧州では、マイクロモビリティや公共交通の利用促進が脱炭素化の重要政策として位置付けられている。特にマイクロモビリティは、短距離移動でマイカーを利用することからの転換策として期待されている。新型コロナウイルス禍で停滞していたシェア車両の供給量についても、21年から拡大中だ。
欧州20都市の中では、パリが最もマイクロモビリティの供給量が多く、5万台を超える。続いてベルリンが4万台規模、ミラノやローマが3万台規模と続く。
そのうち電動キックスケーターの供給量では、ベルリンが2万5000台規模と欧州の中では抜き出ており、ローマ、ブリュッセル、パリ、ハンブルクが1万5000台規模、ミュンヘン、ワルシャワ、リスボンで1万台規模となっている。21年夏ごろには2万台規模を有していたオスロでは、過剰な供給量に対して行政による制限が行われ、現在は6000台規模で推移しているようだ。
また、乗降場所が自由なフリーフローティング型のサービスも、近年はバーチャルステーション型に移行している都市が増えつつある。バーチャルステーション型とは、地図上で駐車可能な場所が表示され、そのエリア内しか駐車できないように制御する方法だ。例えば、ブリュッセルやチューリヒ、プラハ、フランクフルト、ドルトムント、デュッセルドルフなどでは、フリーフローティング型からの変更が行われている。
マイカーやバイクの利用が約4割減少
一方、急増する電動キックスケーターに対して、欧州最大の普及台数を誇るベルリンでは、22年9月1日から駐車禁止区域を指定する規制強化が始まる。具体的には、歩道幅員を2.3メートル以上確保したうえで駐車帯を設置することが求められる。また、交差点から10メートル以内の駐車を禁止、さらには人が集積する場所などでは半径100メートル以内への駐車を禁止するものだ。
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